告白
「ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください」
日ざしが照りつく夏の日、俺は目の前の人物にそう言った。突然の告白に彼女は驚いた顔をして戸惑っている。
無理もない。俺が告白するなんて彼女は思ってもいなかったのだろう。
俺と彼女は俗に幼馴染というやつだ。子供のころから一緒にいて、高校生になった今でも離れることなく同じ高校、同じクラスに所属している。
創作では長い時間を共有したせいで異性であっても恋愛対象に見ることはなく、どちらかと言うと家族に近い存在と書かれることが多い。しかし、そういうのに限って女の方が男に好意をもっている。一種のお約束であり、王道とも言える関係。
もちろんそれは創作でのことであって、現実には同姓の幼馴染や、本当に異性として恋愛感情を持っていない関係もあるだろう。
でも俺と彼女の場合、その王道とも言える幼馴染の定義に半分は当てはまって、半分は外れていた。
半分と言うのは、相手に対して抱いている感情が男女逆と言うことだ。
いつも異性として意識しているの俺のほうで彼女はそんな俺のことなんていざ知ら、ずまるで男兄弟に接するようにしてくる。
だからこそ、その関係を変えるために今日、高校生最初の夏休み前に自分から動いてみたのだが──
「え、ほ、ほんとに私のことが好きなの……? 」
とまあ、相手がこれだ。今の付かず離れずの関係が壊すのにはどうやらもっときちんと言葉にする必要がありそうだ。
「そうだよ。子どもの頃からずっとずっと君の事異性としてみてたし、惚れてた。君が俺を異性として見てないなんてわかっているし、今の関係を壊さないためにこの気持ちを明かさないようにしようかとも思った。けれど……」
彼女の目を見る。真剣に、嘘じゃないとしっかりとわかってもらうために。自分の想いをきちんと言葉にする。何も言わずに、相手が察してくれるような状況を期待したりはしない。そんな自意識過剰の思い上がりだけは、絶対にごめんだ。
「やっぱり、今の関係よりもう一歩先に進みたいから気持ちを伝えるよ。」
顔が熱い。傍から見たらきっと茹蛸みたいに真っ赤になっているだろう。鼓動の音がうるさい。目の前にいる彼女に聞こえてしまうんじゃないかと思ってしまう。でも言葉は止めない。絶対に。
「君のことが大好きだ。俺と付き合ってください 」
他人が聞いても恥ずかしくなりそうなくさい告白。あとから思い出したら絶対に悶絶必須の黒歴史。でも後悔はない。あとは目の前の彼女次第だ。
「──はい」
告白した俺と同じぐらい顔を赤らめて消え入りそうな声で彼女はそう言った。