45 回避不可能
深夜、緊急の飛龍便にてとんでもない知らせがリディア王国の王城に届いた。
日本帝国とリディア王国との国境間にて、リディア王国の国境警備隊が日本帝国の国境警備隊に向けて発砲。日本帝国側の国境警備隊に負傷者が発生し、即座に日本帝国側は反撃。リディア王国側の国境警備隊を壊滅させた。
現在は戦闘を停止しているが、未だに睨み合っている状態で、何時戦争になってもおかしくなかった。
その知らせを聞いたリディア王国国王、クロードは思わず現実逃避をしてしまった。
国内の問題だけでも手一杯だというのに、日本帝国との戦争になるかも知れないと聞かされれば、現実逃避をしたとしても不思議は無い。
(……夢だ…これは夢だ……そうだ、私はまだ眠っているのだ……こんな悪夢が現実にあって良い筈が……)
「…ぃか! 陛下!! お気を確かに!!」
あまりにも酷い現実から無意識的に逃げようとしていたが、臣下の必死な声に国王は現実に戻った。
「…! あ、あぁ…すまない…」
「…いえ…私も最初に聞いた時は、あまりの絶望さに気を失いかけました…」
日本帝国との戦争=リディア王国の滅亡であり、自分達(王族や貴族)の死でもあるので、彼が気絶しかけるのも無理は無い。
臣下の言葉で何とか正気を取り戻した国王は、事態を把握するために眠っていた脳を覚醒させ、国王としての顔つきで尋ねた。
「…一体、何が起きたのだ?」
「はっ、本日未明、我が国の国境警備の兵士数名が日本帝国側の国境警備隊に向けて発砲。発砲された日本帝国の国境警備隊は1名が負傷し、報復として我が国の国境警備の兵士達を攻撃。
それにより、発砲した兵士は全員死亡。更には巻き添えとして他の兵士達も攻撃を受け、実に7割近くが死亡したとの事です」
「…………」
危うく再び正気を失い かけたが、何とか踏みとどまった。
リディア王国側の死傷者の数は膨大ながら、日本帝国側に死者が出なかった事に国王はとりあえず安堵した。もしも死人が出たならば日本帝国側も簡単には引かないだろうが、かろうじて死人が出ていないのならまだ希望もある。
凶行に及んだ下手人達は既に始末済みなため、後は適当な落とし所さえ掴めれば、戦争は回避出来るからだ。
自国民の死には全く触れず、それどころか、その死を利用しようというのは一般的には褒められた事ではないが、国政においては既に死んだ者達より、今生きている者達が重要なのだ。
更に、絶対王制のリディア王国では平民の死には何の意味も無く、遺族の事など考える必要も無いのだ。
「……何故このような事が起きたのだ? 万が一にもこのような惨事が起きないようにと、国境警備の兵士は余の領内から出した筈だ」
リディア王国中に国粋主義や反日感情が高まり、特に中央から離れた地方の貴族達が国粋主義に傾倒しかけていたため、万が一を回避するために王国直轄地から兵士を派遣していたのだ。
「…それが……兵士の中に日本製品によって両親が失業したり、実家の商店が廃業に追い込まれた者達がいたらしく、その者達が凶行に及んだとの事です」
これが日本帝国ならば国境警備の任に就かせる前に、事前に調査をして危険性が無いのかを調べただろうが、絶対王制であるリディア王国はわざわざ平民の都合など考慮しないので、ただ適当に選ばれたのだ。
「何と…! 事前に兵士達の出自を調べておくべきだったか…!」
今更ながら国王は悔恨するものの、既に起きてしまったのだからこれからを考えなくてはならない。ここで手を誤れば、このまま日本帝国との戦争に突入し、リディア王国は滅ぶ事になってしまうからだ。
パンゲア世界で唯一、日本製の小銃や拳銃を全軍で採用しているだけあって、パンゲアの国々の中では最も近代化が進んでいるものの、相手はその銃や弾薬の元締めなので敵う筈が無い。
一応有事に備えてある程度の銃や弾薬を備蓄はしているものの、無限に生産出来る日本帝国に敵う筈は無く、そもそも日本帝国とリディア王国では技術レベルや国力に隔絶とした差があるので、どう贔屓目に見てもリディア王国に勝機は無い。
翌日、駐リ日本大使が事の説明を聞くため、早朝に王城に訪れた。
リディア王国側も事前に予想していたので、早朝にも関わらず直ぐに会談は行われた。
「……という訳で、今回の事変は我々が意図したモノでは無く、一部の兵士による凶行なのだ」
国王が今回の事についての説明を行った。
万が一にもリディア王国側に宣戦布告の意図があったなどと思われてはいけないので、国境警備を地方貴族から国王直轄に変えた事や、犯人達が犯行へと及んだ経緯など、今回の事変に関係がありそうな事を全て伝えた。
「…成る程…しかし、陛下の直轄地から出した兵士が凶行に及んだという事は……全く無関係だったとも思えないのですが?」
「い、いや…今回の事は全く想定すらしていなかった事であり、貴国に発砲せよなどという命令は一切出していない!」
「…………」
国王は必死に自分の無罪を主張するも、大使は疑わし気な目で見つめる。
その視線はまるで獲物を見るかのような眼差しで、酷く冷たく、その視線を少しでも反らすために国王は謝罪をするべきかと思ったが、何とか堪えた。
(いや、ここで謝れば付けこまれるだけだ。そうなれば以後の交渉でどんな要求をしてくるか分からん。
ここは何としてでも押し通すのだ!)
決意を固めて、国王は大使の目を見る。その目を見るだけで背筋がゾクゾクとし、寒気さえ感じるのだが、国王は一切目を反らさない。
部屋の中は誰も口を開こうとせず、無言が支配するが、国王と大使は互いの目を見つめる。そこには友好の空気など欠片も無く、まるで斬り合いをしているかのような緊迫感すら感じるが、互いに瞬きすらせずに見つめ合う。
暫し見つめ合った後、大使が瞬きをした後に言う。
「…成る程、ではそのように本国に伝えておきましょう」
「……うむ、よろしく頼む」
大使の言葉に、国王は表向きには出さなかったが内心では安堵のため息をついた。
大使がどう受け取ったのかは分からないが、とりあえず謝罪を引っ込める事は出来たのだ。それだけでも成果だった。
「では続きまして、今回の事変についての賠償に移ります」
「……む? 今日…これからか?」
事変の翌日という事もあり、今回の会談は「何故撃ってきた」かの確認だとリディア王国側は考えていたので、まさか賠償内容にまで触れるとは思っていなかった。
「はい、事変の発生直後から本国では協議が行われ、要求内容も決定しました」
「…………」
あまりの早さに国王やリディア王国側は呆然とする。もし日本帝国の本国がアバロニア大陸にあるのなら、ここまで早く情報を得て、賠償内容を決定した事も頷けよう。
しかし、日本帝国の本国は遥か外海の先にある(と聞いている)大陸であり、パンゲア世界の常識で考えれば僅か1日で情報を得る所か、賠償内容を決定して再び帰って来るなど到底不可能。片道だけでも一月以上はかかるのは確実で、往復で1日で帰るなど飛龍を乗り継いでも不可能だ。
最も、真実としては日本帝国がアバロニア大陸の支配地(旧メディア王国)やロードス島に海底ケーブルを引いているだけなのだが、電話すら無いパンゲア世界にとっては想像も出来ない。
「では先ず、賠償金として10万エクシードを要求します」
「「「「なっ!!?」」」」
あり得ない連絡速度に驚愕している途中に、とんでもない賠償金額を提示された。
10万エクシードとは、後進国の国家予算にも匹敵する程の大金である。列強国であるリディア王国にとっては払えなくはない金額だが、それでも大金である事には違いない。
「そんな…あまりにも高過ぎる!」
「死人が出たならばともかく、そちらは誰も死んでないではないか!?」
あまりにも法外な金額にリディア王国側から非難が続出するが、大使は聞こえてないとばかりに要求内容を続ける。
「次に、現在の我が国と貴国との国境線を、全体的に東に100エル(200km)下げます」
「「「「っっ!!??」」」」
東に下げるという事は、その分リディア王国の領土が減るという事だ。広大な領土を持つリディア王国全体からして見れば、100エル(200km)など大した事は無いとも思えるが、例え1cmでも領土を奪われるというのは大変な屈辱だ。
特に、その100エル(200km)内に領土を持つ貴族にとっては、到底受け入れる事は出来ない。
「そんなふざけた話があるかっ!?」
「たかだか国境間紛争で100エル(200km)などあり得ん!! 前代未聞だ!!」
「…………」
勿論リディア王国側は誰もが反対し、叫ぶ。
1エル(2km)程度なら分からなくもないが、まさかその100倍という非常識さ。紛争規模に出てくる単位ではない。
一方、国王は静かだった。ただ、落ち着いていた訳では無く、日本帝国のあまりにも理不尽さに絶句していた。
最初の10万エクシードなら何とかなった。確かに大金だが、それで日本帝国との戦争=リディア王国の滅亡が回避出来るのなら、払えなくはない。
しかし、次の100エル(200km)もの国境の移動は流石に不可能だ。そもそも、この要求によって領土の大半や、全てを失う事になる貴族達が到底納得する筈が無い。こんな要求を呑めばまず間違いなく貴族達は反乱を起こし、リディア王国中で内戦が始まる。
更に言えば、平民達も納得しない。ただでさえ国粋主義や反日感情が高まっているというのに、王国がこんなふざけた要求を呑んだという事を知れば、革命が起きるだろう。それが民主主義革命にまで発展するのかは定かでは無いが、まず間違いなく現国王や王族は処刑されるだろう。
しかし、国王はこの発想には行き着いていなかった。些か平民が煩くなって来たとは言え、国王や貴族からして見れば平民などどうとでもなる存在でしかないので、まさか平民が自分達を処刑するなど、考える事すら出来なかった。
「そして最後に、イリオスの譲渡を要求します」
「「「「…………」」」」
最早誰も言葉を発しない。
イリオスはリディア王国で最大の貿易港であり、海軍の拠点にもなっている程の重要港だ。自国の産業が衰退して外国に輸出する商品は無くなったが、代わりに日本製品の中継貿易で栄えていた。
代々王族が総督を務めて来た事から、いかにリディア王国にとってイリオスが重要なのかが分かるだろう。
「要求内容を纏めると、
1、リディア王国は賠償金として日本帝国に10万エクシードを支払う。
2、国境線を100エル(200km)リディア王国側に移す。
3、イリオスを日本帝国へ譲渡する。
以上の3つです」
「「「「…………」」」」
淡々と大使は告げるが、リディア王国側は誰も口を開かない。あまりにも理不尽な要求に、言葉さえ出ないのだ。
「…………」
「「「「…………」」」」
話は終わったと大使は黙り、リディア王国側も変わらず黙りこくる。互いに沈黙するという意味なら同じだが、その表情は正反対だ。
日本帝国側は余裕綽々で、微笑みさえ浮かべている。一方、リディア王国側は絶望で真っ青な顔色をしているか、殺意を隠そうともしないで睨み付けているか、諦めたように顔を伏せているかなど、正に対照的だった。
「……もし、その要求を呑まなければ……どうなるのだ?」
沈黙が続く中、意を決して国王は質問する。
「その場合は誠に残念ながら、制裁として貴国に宣戦布告します」
大使は何て事の無いかのように、軽く告げる。
リディア王国側は「制裁」という言葉を聞いて怒りに震えるモノもいれば、絶望したように天を仰ぐモノもいた。
普通に考えれば、これからの交渉次第で何とか要求内容を軽減させられるだろうが、日本帝国との交渉においてはその可能性は限りなく低い。
何しろ交渉というのは、相手側も戦争を避けたいから行うのだ。戦争になれば必然的に莫大な予算や甚大な被害が及ぶ事になるので、普通の国なら多少目減りしても、戦争をせずに賠償金や領土が手に入るのなら、交渉もする。
しかし、日本帝国の場合は交渉をする必要が無い。無限の予算や物資を持つ日本帝国にとっては戦争になろうがどうでも良く、技術力や国力の差から勝利は確定しているので、わざわざ譲歩をする必要が無い。
むしろ、戦争になった方がより多くを取れるので、避ける意味が無いのだ。
「…………」
国王もそれを理解しているので、交渉は行わない。今までの経験から、日本帝国側が引く事はあり得ないと確信しているからだ。
「……貴国の要求は受け取った。しかし、内容が内容なだけにじっくりと話し合う必要があるので、今しばらく返事は待って欲しい」
せめてもの足掻きとして、国王は引き延ばしにかかる。
「…分かりました。では、今日は引き上げます。
しかし、なるべく早い返事を期待しています」
流石に今日返事を貰えるとは大使も期待していなかったので、アッサリと引く。しかし、一言は残しておく。
「うむ、出来うる限り努力しよう」
国王はハイともイイエとも取れる、曖昧な返事を返した。出来る限り引き延ばしたい国王にとっては、これが精一杯だった。
駐リ日本大使が帰った後、王城では緊急会議が開かれた。
「…日本帝国からの要求を…どうされるおつもりですか?」
閣僚の1人が心配そうに国王に尋ねた。
日本帝国の要求を受け入れれば内戦が勃発し、要求を拒めば日本帝国との戦争になる。リディア王国にとってはどっちを選ぼうが地獄だ。
「……要求を呑む訳にはいかん。呑めば間違いなく地方貴族達が反乱を犯し、国中が内戦になる…」
「…では、要求を拒否しますか…?」
「……やむを得ん。あの要求を呑めば、リディア王国は名実共に日本帝国の属国になる。最早どこの国もリディア王国を列強国とは認めないであろう…」
たかだか国境間紛争で莫大な賠償金どろか、小さくない領土に加え、国一番の貿易港すら譲渡するのだ。これでは敗戦国も同然だ。
更には、内戦にもなれば鎮圧のために日本帝国が軍を派遣して来る可能性が高い。国内問題に他国の手を借りたくはないが、その相手が宗主国に等しい国ならば派遣を断るのは難しい。
日本帝国が参戦してくれれば勝利は確定しているが、他国の力が無ければ内乱すら収められない国では、とてもではないが列強国とは言えない。良くて中小国で、最悪、後進国扱いされて属国から見限られるだろう。
「…では…日本帝国と戦争をするのですか…?」
閣僚の1人が顔色を真っ青にさせて尋ねた。
彼は先の旧メディア王国との戦争において、日本帝国軍に観戦武官として派遣された1人なので、日本帝国軍の強さを間近で見ていた。
「…仕方あるまい。そもそも、日本帝国が戦争を望んでいるのだ。どうやっても避けられん…」
幾ら原因がリディア王国側にあるとは言え、先に提示された賠償内容はあまりにも理不尽過ぎる。どう考えてもリディア王国側が呑める条件ではない事は、子供にでも分かる。
本当にただ賠償を欲しているだけならば、せめて賠償金ぐらいで収めただろう。しかし、日本帝国は広大な領土に加え、リディア王国にとって最も重要な貿易港を寄越せとまで言ってきたのだ。
これは最早宣戦布告に等しい。
「恐らくカラハソ大陸の支配が完成した事で、遂に我が国に狙いを定めたのだろう。
…むしろ、これまで攻めて来なかったのが疑問だった…」
リディア王国は先のカラハソ戦争の原因が蒸気機関の開発などとは知らないので、常々不思議に思っていた。
常識的に考えれば海を越えた先にあるカラハソ大陸よりも、陸続きである自国を攻めるとばかり思っていたので、10年前はかなり緊迫していた。しかし、予想を大きく裏切って日本帝国はカラハソ大陸を攻めたので、何故かは分からないが安堵していた矢先に、事変が起きたのだ。
「…しかし、あまりにも事変が起きるタイミングが良すぎる。もしや、日本帝国の自作自演か?」
国王が疑うのも無理は無い。日本帝国がカラハソ大陸の支配体制を構築させた矢先に、突然事変が起きたのだ。
幾らある程度予兆があったとは言え、あまりにもタイミングが良すぎた。
「…いえ、調査した限りでは、今回の事変に日本帝国は関与していません。
確かに犯行に及んだ原因は日本帝国にありますが、今回の事変はあくまで突発的な犯行で、犯人達に日本帝国が接触した形跡はありませんでした」
「…そうか。単なる偶然だったのか…」
否定の言葉に国王は残念がる。例え日本帝国の自作自演だったとしても、日本帝国が犯行を認める筈は無いのだが、気持ち的に楽にはなる。
日本帝国が悪いのなら正々堂々と非難する事も出来るし、更には他国も同情的になってくれるだろう。参戦はしてくれないだろうが、リディア王国人を受け入れてくれるかも知れない。
「…では、戦争準備として直ちに徴兵をかけますか?」
閣僚からの質問に、国王は考え込む。
徴兵を行うという事は、最早宣戦布告をしたも同然だ。現代と違い、兵士を集めるだけでも莫大な費用がかかるため、単なる脅しでは徴兵はかけない。そんな頻繁に徴兵を行っていては費用は勿論の事、国内の生産能力が低下して税収に響くため、国が破綻してしまう。
そのため、徴兵を行うという事は戦争は避けられないという事だ。
それに、列車も無いリディア王国では徴兵をかけても直ぐには集まらないため、戦争準備をしている事は一目瞭然だ。勿論、日本帝国も直ぐに知る事になるだろうから、日本帝国も直ぐ戦争準備を始めるだろう。
そうなってからでは、開戦を回避する事は不可能だ。
「…………うむ、直ちに徴兵をかけるのだ」
しばらく考えた後に、国王は徴兵を命じた。どうせ最早避けられないのだから、少しでも早い方が良いと国王は判断した。
「はっ、直ちに徴兵を行います!」
「うむ、出来る限り数を揃えるのだ。何しろこの戦争に負ければ……リディア王国は無くなるのだからな…」
「「「「…………」」」」
国王の言葉に緊張感が走る。
日本帝国に負けた国は必ず滅び、王族や貴族などは全員処刑される。その事実を改めて認識した事で、日本帝国との戦争を実感したのだ。
こうして、リディア王国は日本帝国との開戦を決意。
未だに賠償請求についてはのらりくらりと躱しているが、あくまで時間稼ぎをしているだけだった。
大規模な徴兵をかけ、武器製造など軍事関係の職人以外の成人男性は全て徴兵の対象となった。
今までならば選抜徴兵として生産関係者なら徴兵から外されるものの、国家存亡の危機なので最早形振り構っていられず、武器製造に関係無いのなら職人も根こそぎ徴兵した。
そして、友好国価格が通用する間にロードスにて九九式小銃や三式拳銃、そして各種弾薬を買い漁った。戦争が始まれば手に入らなくなるので、今の内に少しでも多く備蓄するつもりなのだ。
しかし、国家予算を惜し気もなく投入したためか瞬く間に在庫切れになり、とてもではないが全軍に配備出来る数は揃わない。何しろ大規模な徴兵をかけ、軍事系職人以外の成人男性を根こそぎ徴兵したので、兵士に支給する九九式小銃の数が全く足りなかった。
そのため、やむ無く様々な国から大量に余っている旧式のマスケット銃を買い漁り、足りない分を支給した。
リディア王国の銃器職人は九九式小銃や三式拳銃によって絶滅状態なため、再びマスケット銃を生産するにはどうしても時間がかかるので、旧式化しつつある他国のマスケット銃を大量に買い漁ったのだ。
しかし、既に商人の間にはリディア王国と日本帝国が戦争をする事が広まっていたためか、足元を見られて割高な価格を提示された。それでもリディア王国は1丁でも多くの銃が欲しいので、やむ無く高い価格でも大量に購入したのだった。
その他にも、軍服や糧食、ポーションなどなど、足りない物は幾らでもあったが、それでも何とか戦争準備を完了し、リディア王国の戦争準備は整った。
皮肉にも国粋主義や反日感情が高まっていたせいで、対日戦に向けて貴族や平民が互いに積極的に協力し合い、リディア王国全体が一致団結したのだった。




