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22 条約締結

 宴の翌日、王城の1室にて、リディア王国と日本帝国による通商条約の交渉がスタートした。


 リディア王国側の出席者は、前日の対策会議の時と同様に国王ロベール3世やシルヴィア王女、そして主要な閣僚達だ。

 日本帝国側の出席者は、特命全権大使の黒崎と補佐官のみ。


 人数においては日本帝国側が圧倒的に不利なのだが、国としての格は圧倒的に上なので特に気負う様子は無く、むしろリディア王国側の方が遥かに緊張している。

 何しろこの交渉の如何によっては、戦争に発展し、国が滅びるかも知れないのだから。










「…それでは、通商条約締結に向けての交渉を開始します」


 交渉を持ち掛けた日本帝国側が開会宣言を行ない、リディア王国側の代表である国王が軽く頷いて交渉がスタートした。


「では、我が国からの要求内容を伝えます」


 大使は黒いブリーフケースの中から革製のバインダーを取り出し、開いて内容を読み上げる。




「1、日本帝国とリディア王国の双方は、互いを独立国として尊重し、友好関係を維持する事を努力する」


 この条項は大した意味は無く、ただ表向きは仲良くしましょうという様式美だ。

 リディア王国側も理解しているので、先程同様に軽く頷くだけ。


「2、双方の関税は両国の協議によって定める」


 一見すると互いに協議するのだから平等のように感じるが、力関係が不均衡である両国では平等などあり得ない。

 それに、本来なら自国の関税は自分達で好きに設定出来るというのに、相手の了解を得られないと関税を定められないという理不尽さ。


 関税自主権の喪失。


 勿論、この意図はリディア王国側にも伝わり、眉間にシワを寄せたり歯を食い縛るなどの反応を見せるが、特に反論はしない。

 前日の会議である程度の予想はしていたので、屈辱的ではあるが驚きは無かった。


「3、リディア王国内にてリディア王国人に対し犯罪を犯した日本人は、日本帝国の法によって裁かれる。日本帝国内にて日本人に対し犯罪を犯したリディア王国人は、リディア王国の法によって裁かれる」


 これまた一見すると平等な条項に見えるが、その実はリディア王国側は自国内で犯罪を犯した日本人を、自国の法律で裁く事が出来ない。

 逆に、日本帝国側も自国内で犯罪を犯したリディア王国人を自国の法律で裁けないように見えるが、自由にリディア王国と自国を行き来出来る日本側と違い、リディア王国側は外海を越えて日本帝国に行く事が出来ない。そのため、リディア王国側の条項は死文も同然。


 領事裁判権。


 これまたリディア王国側は顔をしかめたり、手を強く握るなどの反応を見せるが、何も口には出さない。

 先程同様に、前日に予想していた内容の1つなので驚きは無い。


「4、もしリディア王国が他国との条約で有利な条件を他国に与えた場合、日本帝国にも同一の条件を認める」


 つまり、日本帝国と交わした条件よりも良い条件を他国と交わした場合、日本帝国も同じ条件で扱わなくてはならない。


 片務的最恵国待遇。


 他国との条約内容についてまで触れる事は流石に予想していなかったので、何人かは「なっ…」と驚きの声を隠せなかったが、国王やシルヴィアは表面的には動揺は見せない。

 内心では腸が煮えくり返る程激怒していたが、戦争に発展させる程我慢出来ない内容ではないので、まだ耐えていた。


「5、リディア王国は日本帝国に対し、ロードス地方を100年間租借する事を認める」


 租借という、聞き慣れない単語を聞いて、今まで沈黙を守っていた国王が質問した。


「…待て……租借とは、一体どういう意味なのだ?」


 元々聞かれるだろうと予測していたので、大使は淀み無く微笑みを浮かべたまま答えた。


「租借とは簡単に言いますと、相手国の土地を一定期間借り受ける事です」

「……土地を…借りる?」

「はい、割譲と違い、借りているだけなので一定期間が過ぎれば返還されますし、借りている間は相手国に対し租借料、つまり借り賃を支払う必要があります」


 何でも無いかのように大使は言うが、つまりはリディア王国が日本帝国に対して土地を一定期間貸す事を認め、その期間中はその土地を日本帝国が統治するという事だ。

 確かに完全に取り上げる割譲よりかはマシに思えるが、一定期間とは言え自国の領土が他国の統治下に入るなど、屈辱以外の何物でも無い。




「そんな!」

「戦争に負けた訳でもないのに…」

「あまりにも理不尽過ぎる!」


 などなど、リディア王国側からの不満が噴出する。

 かつての清国(中国)のように戦争に負けたために領土を割譲なり租借されるのなら理解も出来るが、戦争どころか通商条約を結ぶだけで領土の租借を要求されるなど、あまりにふざけた話だった。


「「…………」」


 しかし、肝心の国王やシルヴィアは未だに沈黙を保っていた。

 勿論、内心では「こんなふざけた要求はあり得ない」とハッキリ突っぱねてやりたいのだが、それをすれば戦争に発展しかねない。

 これが割譲などだったなら戦争覚悟でも反発しただろうが、日本帝国側の要求は租借。本当かどうかは分からないが、期限が過ぎれば返還し、その間は租借料を支払うと言っているので、条件次第では考える余地があった。


「……その、租借とやらの詳細を聞こう…」

「陛下!?」


 まさかの交渉続行の言葉に閣僚達は驚愕の目を向けるが、国王は大使に視線は向けたまま。ならば代わりにとシルヴィア王女の方に視線を送るも、彼女も同様に大使を真っ直ぐ見ていて、疑念の声を上げる閣僚達を完全に無視していた。


 一方、2人から熱い視線を浴びせられている大使は計画通りに事が進んでいる事に微笑みを浮かべながら、質問に答えた。


「まず租借の対象としては、海岸線を含めたロードス地方全域です。尚、地元住民は必要ありませんので速やかな退去をお願いします」

「「「なっ…!?」」」


 まさかの全住民の強制退去要求に、またもやリディア王国側が沸騰しかけたが、素早く国王が制したおかげで事なきを得た。


「次に、租借料として我が国は毎年千エクシードをリディア王国に支払います」

「「「……え?」」」


 先程までとは違い、今度は疑問の声が上がる。




 ロードス地方は海に面した地域で、面積は大体東京23区と同程度。

 しかしこれと言った産業は無く、小さな漁村や農村が点在しているぐらいのド田舎だ。

 街道は勿論、橋すらロクに無いので交通の便はとてつもなく悪い。




 なので戦略的な価値は乏しく、とてもでは無いが年千エクシードも支払ってまで欲する意味が分からない。


 しかし、日本帝国側はそんなリディア王国側の疑問を完全に無視して、話を続ける。


「退去させる地元住民につきましても、賠償金として1人につき5エクシードを支払います」

「「「なっ!?」」」


 今度は国王やシルヴィアも同様に驚愕の声を上げた。

 何しろ幾らド田舎とは言え、少なくとも千人程度の人間が住んでいるのだ。その全員に5エクシードずつ配れば5千エクシードにもなる。

 そもそも、平民にそんな大金を支払うなどパンゲア世界ではあり得ない。通常なら1レイスも支払う事なく、ただ追い出すだけだ。


「1人につき5エクシード…ですか?」


 今まで黙っていたシルヴィアが尋ねた。


「えぇ、先祖代々からの家や土地を失う事になるのですから、このぐらいは当然かと」

「…ロードス地方には千人程の住民が住んでいるのですが…」

「はい、それが何か? それとも金額が少なかったですか?」

「い、いえいえ、そんな事はありません…」


 5エクシードと言葉にするだけなら大した金額では無いように思えるが、平民の平均年収に換算すれば5年分に相当する。

 5千エクシードなら小国の国家予算に届くかと言う程の金額だ。


 そんな大金を平民への立ち退き料に支払うという事も驚きだが、何より驚くべき事はそれほどの大金をポンッと出し、更には簡単に増額させようとした事だ。

 列強国であるリディア王国でもそんな大金を捻出するには年単位での調整が不可欠だというのに、日本帝国はまるでそこらの市場で野菜を買うかのようにポンッと出した。


(日本帝国の国力は一体どうなっているのだ!?)


 シルヴィアは表面上は必死に取り繕いながら、心の中ではあまりの異常さに叫んでいた。

 彼女だけではない。国王を含めたリディア王国側の出席者全員が驚愕しながら、日本帝国との国力差に恐怖していた。




 ここまで至れり尽くせりでは、逆に断る方が難しい。

 一時的とは言え領土を奪われる事は耐え難い屈辱だが、その代償にロクに税収も無い土地が年間千エクシードもの大金を生み出し、住民の立ち退き料として5千エクシードもの大金が支払われる。

 1人につき5エクシードも支給すれば、土地を追い出されても住民達はしばらくは生活に困る事は無いし、新たに家を建てる事すら可能だ。

 何より、リディア王国側が負う負担がほぼ無い。唯一の不満は戦争に負けた訳でもないのに土地を奪われるという、プライドぐらいだ。


 現に、先程までは熱烈に反対していた閣僚達でさえ、今では逆に「租借させた方が良いのでは?」と議論する程だ。







 最早部屋の空気は租借賛成で決まっていて、後は大使が問題無いか尋ねて国王が了承するだけだったのだが……日本帝国側の提示はこれだけでは無かった。


「更に、今条約が無事成立した暁には、我が国からリディア王国への贈り物があります」


 これだけの好条件に加え、贈り物とはあまりに都合が良すぎると警戒するも、贈り物と聞いて興味が尽きないので国王は尋ねた。


「…ほぅ、贈り物とな?」

「はい、しかしその前に……先に献上品した我が国の九九式小銃と三式拳銃の性能はいかがだったでしょうか?」

「ふむ、あれか……我が国には無い斬新な発想に富む、素晴らしい銃だった…」


 国王自らが「全体的に我が国の銃よりも遥かに優れていた」とはメンツ的に言えないので、遠回しに褒め称える。

 勿論大使もその言葉の真意を理解しているので、笑顔で礼を言う。


「気に入って頂けたようで幸いです。

 さて、贈り物とは……その九九式小銃と三式拳銃の事です。今条約が成立した暁には、九九式小銃を30万丁、三式拳銃を10万丁、そして弾薬を100発ずつで、計4千万発。

 以上をリディア王国へと供与します」

「「「…………」」」


 租借料や住民達への賠償金以上に、リディア王国側は呆然とした。


 九九式小銃とリディア王国最高の銃であるマーカム銃とでは比較する事すら愚かしい程の差があり、例えマーカム銃の10倍以上値が付いたとしてもリディア王国は勿論、パンゲア世界中の国々が欲する。

 何しろ従来のマスケット銃の倍以上の射程と装填速度を誇るのだ、もし独占出来れば陸戦においてほぼ無敵になり、パンゲア世界では敵無しになるだろう。




 そんな文字通り喉から手が出る程に欲しい銃を、ほぼ無償で大量に手に入ると言われれば、いかに優れた者でも呆然となるだろう。


「…そ、それは……誠なのか…?」


 王という自覚からか、最も早く正気に戻った国王が尋ねた。

 最も、未だに動揺は隠せていないが。


「はい、既に九九式小銃や三式拳銃の生産は完了していて、後は貴国へと引き渡すだけです」


 動揺を隠せないリディア王国側とは対照的に、大使は平然と言う。

 ちなみに九九式小銃に比べて三式拳銃が少ない理由は、パンゲア世界では拳銃を持つのは騎士など士官のみなので、小銃に比べて需要が少ないからだ。


「そ、そうか……」


 国王や閣僚達は苦笑するだけで、特に驚かなかった。

 あまりにも驚き過ぎて慣れて来たのと、日本帝国にパンゲア世界の常識は通じないと諦めて思考するのを止めたからだ。







 そんな中、シルヴィアだけは唯一思考を止めていなかった。


(何故こんなにも我が国有利な条件ばかりを付けるのだ? 確かに租借以外なら完全に日本帝国有利な条件だったが、今ではむしろ我が国の方が圧倒的に有利だ。

 …何故わざわざ自分達が不利な条約を結ぼうとする…?)


 他の者達が思考停止させて苦笑を浮かべている中、シルヴィアだけは必死に考えていた。

 大艦隊を率いての威圧、技術力の差を見せ付けるための献上品、財力を誇示するための豪華な馬車などなど、あからさま過ぎる程に砲艦外交を仕掛けて来た国が、自国が不利になる逆不平等条約を自ら持ち掛けて来るなど常識的に考えてあり得ない。

 幾らリディア王国に比べてとてつもない国力を有しているとは言え、これでは日本帝国の方が格下に見えかねないからだ。


(…何だ? 何かとてつもない重大な事を見逃していないか?)


 不安に駆られたシルヴィアが必死に考え込むが、無情にも交渉は続く。


「以上が我が国からの条件です。何か問題はありますか?」


 考え込むシルヴィアを見て、もしかしたらこちらの思惑に気付くかもと察した大使は、締結を急ぐ。


「うむ…」


 国王は前半こそ屈辱的な条件だったが、後半ではむしろ自国の利益になる事だかりだったので乗り気だった。

 場の空気も賛成の流れで、一応閣僚達の顔を見てみるが、予想通り反対の表情を浮かべる者はいない。




 しかしそんな中、娘のシルヴィアだけが眉間にシワを寄せながら、考え込んでいた。


「…シルヴィア」


 小声で話しかけて見るも、娘は気が付かない。


「シルヴィア」


 先程よりも大きめに声をかけると、ようやく気付いたのかシルヴィアは顔を上げた。


「は、はい。何でしょう?」

「この条約を結ぶにあたって、何か問題はあるか?」


 父である国王に尋ねられて、反射的に反対の意を唱えようとしたが、反対する理由が無い。

 何しろ表面的に見れば関税や裁判権、租借など不満な点もあれど、年間千エクシードという租借料や多額の賠償金、それに自国のより遥かに優れた銃が大量にも手に入るのだ。

 これでは文句を言う方が難しい。


「…い、いえ、ありません…」


 未だ疑問は残れど、明確に反対する理由が無いので賛成するしかない。


「…決まりましたか?」


 少しでも早く話を進めるために、大使は絶妙なタイミングで声をかけた。


「…うむ、我が国は貴国の要求を全面的に受け入れよう」


 娘の態度に不審を抱くも、初めから要求を断れる立場ではないので受け入れるしかない。

 あまりにも理不尽な内容だったなら戦争覚悟で拒否する可能性もあったが、幸いにも日本帝国側が提示してきた要求は許容範囲内であり、むしろリディア王国側が得する箇所もある。


 出来るなら関税など幾つかについて更なる交渉に持ちたかったが、立場的に難しいので折れるしかない。










 こうして、日リ通商条約が正式に調印された。

 日本帝国側が用意した条約文書に、リディア王国国王と日本帝国特命全権大使が互いに署名した。


「これで我が国と貴国は友好国となりました。

 これから末永く(・・・)よろしくお願いします」

「うむ、こちらこそよろしく頼むぞ」


 友好の証として国王と大使が笑顔で握手し、室内は拍手の音に包まれる。


「……っ!」


 すると、大使の末永くという言葉にシルヴィアがようやく気付く。いや、気付いてしまったと言った方が良いだろう。

 租借料として年間千エクシード、そして強制退去させる住民達への賠償金の他に、何故大量の銃や弾薬まで付けるのか。


(我が国の銃の生命線を握るためかっ!!)


 通商条約を結んだ事で、リディア王国は大量の九九式小銃や三式拳銃を手に入れた。

 現在リディア王国が採用しているへーゲル銃やマーカム銃より遥かに優れた銃が大量に手に入れば、当然ながらそっちを採用する。

 九九式小銃が30万丁、三式拳銃が10万丁もあれば、全将兵に行き渡るどころか、大量の予備さえ出来る。


 一度使って見れば、今までのマスケット式よりもボルトアクション式やリボルバー式の方が断然使いやすいと分かる。

 人間は一度楽を知ってしまうと中々昔には戻れない生き物なので、九九式小銃や三式拳銃に慣れてしまえば、もう二度とマスケット銃には戻れない。




 しかし、リディア王国の技術力では九九式小銃や三式拳銃を製造する事は不可能なので、必然的に日本帝国から購入するしかない。

 メンテナンスや簡単な改修程度ならリディア王国でも可能かも知れないが、下手にイジれば性能が落ちたり、最悪壊れてしまう可能性もあるので、日本帝国の店に持っていくしかない。


 弾薬も同様に、リディア王国には無煙火薬や薬莢などを大量に生産する方法など無いので、その都度日本帝国から購入するしかない。

 今は大量に供与された弾薬があるので問題は無いが、マスケット式と違い、ボルトアクション式やリボルバー式は比較にならない程に大量に弾薬を消費するので、直ぐに弾薬が不足する事は目に見えている。




 つまり、日本帝国はリディア王国の銃の供給弁を握っていて、好きな時にその弁を閉めたり緩めたりする事が出来るのだ。

 そのため、それに気付いたシルヴィアは激怒したのだ。


(既に調印は済まされたから今更銃を断る事は出来ない。それに、貰った銃を使わずに倉庫に保管しておくのも危険だ。間違いなく横流しをしようとする輩が出るだろうし、だからと言って売りさばけば一時的とは言え周辺諸国の戦力が増し、我が国へと侵攻されかねない。

 くっ……万事休す…か…)


 最早銃を受け取って採用するしかない選択肢に、シルヴィアは密かに歯噛みした。

 一度使えばその便利さから、二度と従来のマスケット式には戻れない事はシルヴィアも理解しているので、一度採用さえしてしまえばそのまま継続して使う他無い。


 これこそが日本帝国の目的であり、前半の条件などオマケ程度でしかなかったのだ。










 ちなみに日本帝国は更なる手として、銃や弾薬を格安で販売する予定だ。


 本来ならその性能から言って、リディア王国で最も高級なマーカム銃の20~30倍もの高値で売っていても不思議は無いのだが、リディア王国に対しては友好国価格として2~3倍程度に留める。

 何故10分の1にまで値下げするのかと言うと、あまりにも高値で売るとコスト高からリディア王国が九九式小銃や三式拳銃の採用を見合わせる可能性があるのと、コピー銃を作る機会を削ぐためだ。


 20~30倍もの超高値では、幾ら性能が素晴らしくとも大量に仕入れる事は極めて困難なので、コストを下げるためにコピー銃の開発に躍起になる。

 リディア王国と日本帝国の技術レベルは200年以上の差があるので、そう簡単にはコピー出来ないだろうが、開発を続けていけばリディア王国の技術レベルも上がり、いずれは九九式小銃と同等の銃の製造も可能となるだろう。


 そんな技術発展の熱を下げるために、敢えて少し高い程度に値段を抑えるのだ。

 2~3倍程度の値段ならリディア王国の財政を圧迫する物ではなく、コピー銃の開発にかかる莫大な費用を払うよりかは安く済む。




 もしもシルヴィアが国王だったなら、将来を見据えて銃の自国生産に拘り、莫大な予算を計上してもコピー銃開発に邁進しただろう。

 しかし、現リディア国王は政治に優れているが軍事には疎く、兵器の自国生産の重要さをイマイチ理解していないため、「手軽に他国の優れた銃が手に入るのなら、わざわざ莫大な予算をかけてまで自国生産に拘る必要は無い」と判断すると読み、リディア王国への武器販売価格を大幅に下げたのだ。


 後日、シルヴィアがこの事実を知り、怒り心頭に発したのは言うまでもない。

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