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13 王都

 イリオスから駅馬車に乗って2日、北郷達一行は王都ミレトスへと到着した。


 王都は貿易都市であるイリオスと違い、稜堡式の城壁に囲まれた城郭都市だ。

 例えるなら17世紀頃のウィーンに似てて、周囲を空堀や半月堡、稜堡で囲うという、大砲を意識した近代的な城郭都市だ。




 王都への正門には入場審査のための行列が並んでいて、複数の馬車を引き連れた商隊やリュックのような荷物を背負っただけの農民など、様々だ。


「次っ!」


 城門の兵士の声で、列が進む。

 呼ばれた者達は人数によって通行税が徴収され、そして次に危険物を持ち込んでいないか軽く荷物をチェックし、長剣や弓矢、銃器類など武器を預け、ようやく王都への入場が許可される。

 他の街とは違い、王都では治安維持のために武器の持ち込みは厳しく制限されるため、精々が護身用の短剣ぐらいしか所持を許可されない。そのため、長剣や槍は勿論、弓矢や銃器類は正門にて預かり、王都から出る際に返却する決まりとなっているのだ。




「次っ!」


 前の人の審査が終了し、ようやく北郷達の順番が訪れた。

 城門は木製ながら鉄で補強されていて見るからに重厚で、王都の正門だからか所々金や銀で美しく装飾されている部分も見受けられる。

 今は昼間だからか門は両方とも開いていて、門の前には近世のイギリス軍のような赤い軍服を纏い、マスケット銃を持った兵士達が幾人も立っている。


「…これはこれは魔術師殿。どうもお待たせ致しました」


 相手が魔術師だと知り、兵士は愛想笑いを浮かべながら労いの言葉をかける。

 知っての通り魔術師は選民思想を持っている者が多く、現にギルド証によって無条件の通行を許されている事から自分達を特別だと思い、「何時まで待たせるのだ!」と兵士に怒鳴り散らす事が多々ある。それどころか、時折列を無視していきなり先頭に来て「どうせ無条件で通れるのだからさっさと通せ」と無茶を言ってくる魔術師すらいるのだ。

 魔術師は国家にとって重要な存在であり、それが中位以上魔術師ならば無碍にする事も出来ない。下手に暴力を振るったり侮辱すれば魔術師達はストライキを起こし、国家にとって重大な損失をもたらす可能性もあるのだ。

 そのため、兵士達は長らく待たされただろう魔術師のご機嫌を伺うために、ムカつくが愛想を振りまく。


「いえ、問題ありません。ご苦労様です」


 別に急いでいる訳でも無いのと、兵士達に悪印象を持たせてもデメリットにしかならないので、北郷は軽く手を振って問題無い事を示し、労いの言葉をかける。


「………………」


 一方、怒鳴り散らさない所か労いの言葉をかけてくる魔術師何て始めて見たため、北郷に声をかけた兵士は勿論、周りの兵士達も信じられないモノを見たかのように固まる。

 別に魔術師全員が選民思想を持つ高慢ちきでは無いのだが、多かれ少なかれ魔法が使える事に誇りを持っているため、無意識的に魔術師以外を下に見がちなのだ。


「……あの?」


 誰も復旧する兆しを見せないため、仕方なく北郷は軽く声をかける。


「…はっ! 失礼しました。

 …では、ギルド証はお持ちですか?」


 北郷の声に固まっていた兵士達は復旧し、何時も通りギルド証の有無を尋ねる。


「はい、どうぞ」

「失礼します」


 北郷が手渡したギルド証を、兵士は偽造ではないかチェックする。

 とは言っても、図書館などのようにどうしても本物の魔術師かを見極める必要は無いため、10秒程度の軽いチェックで終わる。


「エリック様ですね?」

「はい」

「同行者は4名だけですか?」


 北郷の後方に控える護衛達を見ながら兵士は聞く。5名以上の場合は魔術師であっても通行税が発生するからだ。


「そうです」

「…分かりました。どうぞ、通っても構いません」


 護衛達の武装である長剣を確認したが、兵士は何も言わない。

 普通ならば王都への武器の持ち込みは制限され、長剣も持ち込みを禁止されているのだから預けないといけないのだが、魔術師の護衛なら免除される。流石に何十人もの武装した人間を入れる事は出来ないが、原則として5名以内なら武装は認められている。

 しかしあくまで常識の範囲内であり、護身用として説明がつく長剣やピストルぐらいならまだしも、マスケット銃や大砲の類いは流石に禁じられている。

 ちなみに、もし王都内で同行者(護衛)が何か問題を起こした場合、魔術師の責任となる。










 門を抜けて中に入って見ると、イリオスと同様に活気に溢れた街並みが広がっていた。

 建物はイリオス同様に石造りの2階や3階建てが多いが、王都だからか芸術性が高い建物が多く、街中が世界遺産かのような厳かな雰囲気をかもし出している。


 入口近くには観光客を狙っているのか、王都の名前が彫られた工芸品など、実用性が皆無な土産物を売っている露店が並んでいる。

 いかにも田舎から出てきたばかりという格好をした者達は、そんな土産物を物珍しそうに眺めたり、中には旅先のテンションに任せて購入している向こう見ずな者もいた。




 そんな人達を尻目に、北郷達はただ通り過ぎていく。

 パンゲア世界の常識からして見れば20万もの人口を誇る王都は大都市であり、その街並みも荘厳で素晴らしいモノなのだが……超大国である日本帝国からして見ればあまりにショボ過ぎる。

 人口20万では日本帝国では地方都市レベルでしかないし、街並みにしても日本帝国の都市と比べて規模や利便性などにあまりにも差があり、属国であるブルキナファソの首都以下でしかない。

 ブルキナファソは様々な都合により文明を産業革命以前に抑えた属国で、技術レベル的にはパンゲア世界とさほど変わりは無いのだが、首都は宗主国の力を見せつけるために無限の予算と物資を注ぎ込んだため、王都など比較にならない程の豪華さや規模を誇る。最も、首都以外はそこまで手をかけなかったので他の都市はイリオスと同程度で、地方の街や村に到っては江戸時代のレベルでしかない。


 そんな都合もあり、パンゲア世界の住民なら圧倒される王都の街並みをガン無視し、北郷達は目的地に向かって無言で歩く。










 途中、通行人に聞きながらも無事目的地であった図書館へと到着した。

 外観は白の石材を使った歴史を感じさせる荘厳な佇まいで、様々な細かい彫刻が施されていてまるで神殿かと思わせる雰囲気を放っている。


 しかし、それはあくまでパンゲア世界での話であり、日本帝国の基準で言えば精々が県立図書館レベルの規模でしかなく、大きさや彫刻などの美しさも属国であるブルキナファソにある図書館にすら劣る。

 リディア王国やパンゲア世界の人間がこの図書館を初めて見たなら、あまりの大きさや豪華さに感嘆の声を上げるだろうが、いかんせん日本帝国には国会図書館並の図書館が幾つもあるためどうしてもショボく見えてしまう。

 製紙技術が未熟なパンゲア世界において、本は量産するには活版印刷か写本するしかないので非常に時間がかかり、極めて貴重な物。なので必然的に図書館に収められる蔵書の数も少なくなるため、図書館の大きさもさほど必要としない。


 そもそも、図書館などパンゲア世界には滅多に無いため、図書館であるという事だけでパンゲア世界の住民にとっては感嘆物なのだ。







 図書館内部は吹き抜けの構造になっており、1階から2階の様子が見えるようになっている。

 図書館という名に相応しく、大きな体育館程広い建物の壁にはズラリと本棚が並び、中にも本がキッチリと詰まっている。

 そしてその本棚の前には長机が並び、それぞれの席に富裕層や商人、魔術師などが座り、本を読んだりメモに書き写すなどをしている。


 入口の隣には受付カウンターのような物があり、そこには魔術師ギルドの制服に似た服を着た何人かの司書が作業をしていた。


「図書館をご利用ですか?」


 北郷に気付いた司書が話しかける。


「そうです」

「では図書館の利用料として1人1ソル、更に預託金として1エクシードになります。尚、預託金は本を汚したり破損しなければお帰りの際に返却致します」


 マニュアル通りに告げる司書に、北郷は全員分の5エクシード5ソルを支払った。北郷と違って護衛達はこの世界の字が読めないので図書館に入る意味は無いのだが、一応自分の護衛なので支払っておいた。

 金を受け取った司書は硬貨や枚数を確認する。


「……はい、ありがとうございます。ではお入り下さい」


 それだけ言って、司書は北郷達が来る前から書いていた書類の記入を再開する。何とも役所的な対応だが、司書達は国に雇われている役人なので仕方ない。










 1階は一般図書のエリアだからか様々な職種の人達がいて、普通に本を読むかメモを取っているぐらいなので和やかなムードが漂っているが、2階は真逆だった。

 イリオスの図書館同様、魔術書のエリアである2階には魔術師しか進入を許されないので魔術師しかいないのは当たり前だが、全員が長机に座り受験生の如く血走った目で魔術書を貪り読む様は、ハッキリ言って恐い。イリオスでも同じような光景は繰り広げられていたが、図書館の規模が大きいからか魔術師の数も多く、その重苦しい雰囲気も倍増していた。


 この光景は最早図書館にとって恒例の行事であり、この光景を無視して本を読むことが出来れば一人前という、変な風潮さえ流れていた。







 2階の禍々しいオーラに一瞬怯むも、北郷は真っ直ぐ2階を目指した。

 1階からコピーしても良かったのだが、蔵書数的に考えて2階の方が少なく、必然的に早く終わるので魔術書を先にしたのだ。


 2階へと続く階段には入口同様にカウンターが隣にあり、司書が待機していた。


「2階に御用ですか?」

「はい」

「では魔術師ギルドのギルド証の提示をお願いします」


 北郷は言われた通り、ギルド証を司書に渡した。

 ギルド証を受け取った司書は、本物かどうかを細かくチェックする。正門でのチェックはあくまでギルド証を持っているかだったので簡単に済んだが、この先は国家にとって重要な機密である魔術書のエリアであるため、万が一にでもギルドメンバー以外を通す訳にはいかない。

 そのため、司書は様々な角度からギルド証の紋章を眺めたり、軽く叩くなどして真偽を見極めている。


 数分後、本物だと確信した司書はギルド証に書いてあるエリック(北郷)のデータを閲覧者記録に書き残し、ギルド証を返却する。


「大変お待たせ致しました。本物と確認しましたのでどうぞお通り下さい。

 尚、ここから先はギルド員以外は入れませんのでご了承下さい」


 北郷の後方に控える護衛達を見ながら、司書は言う。


「分かりました。お前達は待機していろ」

「畏まりました」


 北郷は言われた通り、護衛達を1階で待たせておく。イリオスの時も同じだったので、護衛達も特に動揺する事なく頷く。勿論内心は苦々しく思っているが、文句を言った所で何かが変わる訳でも無いので黙るしかない。




 護衛達を残して2階へと上がると、流石に王都の図書館だからかイリオスの図書室に比べて蔵書数は多いが、図書館の規模に比べるとどうしても足りなく、至るところに絵画や彫刻、植物などを置いて空きスペースを誤魔化している。


 そして1階から見たように魔術師達が長机に座り、イリオスの図書室同様にテスト直前の学生の如く魔術書にかぶり付いている。

 この図書館でも魔術書の書き写しは禁止であり、見張りのための司書も何人もいるので魔術師達は必死に暗記している。オマケに図書館だから音読する事も出来なく、ただひたすら黙読して記憶するという、非常に効率の悪い覚え方しか出来ないのだ。




 そんな先輩達を尻目に、北郷は棚に残っている魔術書をコピーしていく。

 先輩魔術師達がクソ長い呪文を脳に焼き付けようと必死に黙読している横で、北郷は軽く背表紙に触れながら棚の中の魔術書を全てコピーし、隣の棚に移る。


 下位魔法でも呪文の詠唱には最低でも30秒はかかり、中位なら1分、上位なら5分以上は軽くかかるので、普通なら1つの呪文を覚えるだけで長い長い時間を必要とする。

 …しかし、北郷なら一瞬でコピー出来る。まるで他の魔術師達の血のにじむような努力を嘲笑うかのように、意図も容易く。普通の魔術師なら1つの棚の魔術書を全て覚えるには最低でも数年はかかるだろうが、北郷はたった数分で全てを覚え、更には覚えた魔術書を無限にコピーする事が出来る。




 棚の魔術書のコピーが終了した北郷は、現在閲覧中の魔術書のコピーを開始した。


 今まさに先輩達が必死に覚えようとしている呪文を、これまた北郷は後ろからチラ見しただけで全てコピーする。

 先輩達は今見ている呪文を覚えるためにほぼ毎日図書館に通い詰めているというのに、北郷はフラりと来て、全ての魔術書をコピーし、用は済んだとばかりに帰っていく。


 魔術書にかぶり付いている先輩達は何も読まずに帰っていった北郷の存在に気付いてはいたが、新人があまりの魔術書の蔵書数に圧倒されたか、目的の魔術書が閲覧中だったから帰るんだろうぐらいにしか思っていなかった。それはそうだろう、このパンゲア世界において有数の蔵書数を誇る王都の図書館の魔術書を、僅か十数分足らずで全てをコピーし終えたなど誰が思おうか。


 階段を降りていく新人の事など直ぐに忘れ、魔術師達は目の前の魔術書に集中する。何しろ、図書館はタダでは無い。日本帝国のように無料で利用出来るのなら毎日来る事も可能だが、この図書館では利用料として1ソルを支払わなければならない。

 平民に比べたら遥かに高所得なので払えない訳では無いが、幾ら魔術師でも毎日支払い続ければ無視出来ない金額に膨れ上がる。それに、利用料の他にも生活費など生きていくには金がかかるので、1日中図書館にいる訳にもいかない。

 そのため、1回1回を無駄には出来ないのだ。







 そんな先輩魔術師達の苦労など一切無視して、北郷は1階の一般図書のコピーを開始する。

 ちなみに、2階へ上る際にはギルド証のチェックを必ず受けるが、降りる際は基本ノーチェックだ。もし魔術書を盗んでいれば、2階から降りた時点でけたたましい警報が鳴り響き、まず逃げる事は不可能だからだ。










 多少時間はかかったが、無事一般図書のコピーも終了したので北郷達は図書館を出た。

 既にイリオスの書店や図書室でこの世界についてのある程度の情報は得られていたが、規模が大きい王都の図書館の本をコピー出来たおかげで、より詳細な情報を得られた。

 特に大きかったのが、宗教についての情報だ。




 この世界で最大派閥の宗教は、メロス教と言う。


 メロス教とは人類を創造した神メロスを信仰する宗教で、簡単に言えば人類至上主義である。

 エルフやドワーフなど亜人の絶滅を至上命題とし、かつては中世のキリスト教のごとく強大な権力を有し、メロス教国という強大な国家を建国した。

 ……しかし、数百年前にその至上命題である亜人の絶滅に成功してしまい、更には銃や大砲と言った兵器技術の発展によって昔程モンスターを恐れる必要が無くなってしまったため、影響力は下降の一途を辿った。

 一応まだ信者数的には最大派閥を維持はしているが、それは他に信仰する宗教が特に無かったからであり、かつてのような熱心な信仰は無い。


 総本山であるメロス教国の地位も徐々に下がっていき、今では単なる列強国の1つになっていた。

 オマケにメロス教国は広大な領土や肥沃な大地、豊富な資源に恵まれていたために、同じアトランティカ大陸の列強国であるヘラス王国と度々領土争いをしていた。

 現代世界で言えばバチカンに攻め込む事に値し、最初こそ天罰が下るのではないかとヘラス王国の人々は怯えたが、逆にメロス教国側がヘラス王国に攻め込み、この世界の戦争では極一般的な略奪や強姦、虐殺などを多数行なったため、今では誰も天罰の事など気にしなくなっていた。




 このように、未だ文明が産業革命以前にも関わらずパンゲア世界では宗教の地位が低い。

 流石に現代日本程では無いが、少なくとも神が絶対的という考える者はほとんどいなく、メロス教国の国民でさえ熱狂的な信仰心は持たない。


 しかし、そのおかげで宗教的な縛りはほぼ無いため、仮に飛行機などが登場したとしても地球世界程問題は起きないだろう。

 ある意味では、先進的な世界である。










 図書館を出た北郷達が次に向かった先は、魔術師ギルド。つまり、リディア王国にある魔術師ギルドの本部だ。

 目的はポーションや魔法付与された武器、魔石などマジックアイテムで、リディア王国で貴重なマジックアイテムは王都に集まるとイリオスで聞いていたので、北郷は期待していた。

 何しろ王都での調査が終われば北郷は本国へと帰還し、しばらくはパンゲア世界に渡る事は無いからだ。より詳細な情報を獲るためにはリディア王国以外は勿論、他の大陸にも渡るべきなのだが、神である北郷が長期間日本帝国を留守にする訳にはいかず、それに北郷自身も色々と気を使うこの旅を長期間行いたくは無いので、出来れば今すぐ帰りたいのだ。

 これが気楽な1人旅だったらまだしも、常に無言で気まずい護衛達との旅では常に緊張状態を強いられ、北郷でなくても嫌だろう。何しろ神という立場なので護衛達と軽口を言い合う事も出来ず、命令する以外はひたすら無言が続くのだから。







 図書館のように通行人に聞きながら魔術師ギルドを目指していると、長い長い壁にぶち当たった。

 その壁はレンガの上にモルタルを塗った物で、高さ5m以上はある。勿論ただの大きな壁ではなく、道路と魔術師ギルドを遮るための塀だ。 塀の内側には幾つもの建物の屋根が見え、中には教会のような尖塔の大きな建物もある。未だ北郷達には長い塀しか見えないが、その長い塀だけでも王都の魔術師ギルドの規模はイリオスのとは桁違いなのだと、北郷達は改めて理解した。




 しばらく塀伝いに進んでいると、長い長い塀がようやく切れ、魔術師ギルドの門に到達した。


 魔術師ギルドの門は王都の城門程ではないが、大型馬車1台は余裕で通れそうなくらいの大きさを誇る。城門同様に装飾が施された木で出来た両開きの重厚な扉で、門の前には黒い軍服を纏い、長剣を腰に下げ、着剣状態のマスケット銃を両手で持つ2人の兵士が立っている。

 この兵士達は魔術師ギルドの私兵のような立場であるため、リディア王国軍の証である赤い軍服ではなく黒い軍服を纏っている。その軍服のデザインは非常に華美なもので、いかに魔術師ギルドが儲かっているかを如実に現している。

 装備も一級品で、本来なら近衛歩兵連隊しか持つ事を許されていないマーカム銃を持ち、長剣には魔法が付与されている。見た目には豪華な装飾剣だが、『鋭さ強化』などの魔法がかけられているので名刀の如く切れ味が良い。


 イリオスにはいなかった武装した門番を見て、もしかして魔術師以外は入れないのではと北郷は思ったが、門番達は目の前を通る魔術師の一団を一瞥するだけで無視する。

 イリオスの魔術師ギルド同様に、王都の魔術師ギルドも魔術師以外の人間が頻繁に出入りするので、基本的に止められる事は無い。では何故門番を置いているのかと言うと、ほとんど見栄のためだ。一応名目上は「不審者の侵入を防止するため」としているが、実際には豪華な装備を纏った門番を配置する事でいかに魔術師ギルドが儲かっているかや、本来なら近衛連隊にしか持つ事を許されないマーカム銃を持っているという、権威を見せつけたいだけなのだ。

 傍目には無駄でしかないのだが、選民思想が強い魔術師にとっては大いに自尊心を刺激されるので、ギルド員からは好評なのだ。







 イリオスの魔術師ギルドは大きな建物が1つ建っていただけだったが、王都の魔術師ギルドの場合は総合大学のような広大な敷地内に、複数の大きな建物が点在している。

 道路は石畳で舗装してあり、舗装された道以外はよく手入れがされた芝生が広がり、人やドラゴンなど様々な彫刻が置かれている。


 魔術師ギルドらしく、道を歩いているのは様々な色のローブを纏っている魔術師ばかり。1人で歩く魔術師もいれば、北郷のように護衛を付けている魔術師など様々で、北郷が今では見た中では最も魔術師の数が多かった。


(流石は王都の魔術師ギルド。多分、リディア王国中の魔術師が集まってるんだろうな)


 そう思いながら北郷は辺りを見回していると、木で出来た案内板を発見した。

 王都の魔術師ギルドの敷地はあまりにも広すぎるため、始めて訪れる者は大抵が迷ってしまうのでこの世界には珍しく、所々に案内板が立っている。何故案内板が珍しいのかと言うと、人口の大部分を占める平民が字が読めないので、案内板を設置する意味が無いからだ。


 案内板には魔術師ギルド、魔道具屋、研究施設など様々な案内があったが、北郷が選んだ先は魔道具屋だった。

 王都の魔術師ギルドにも興味はあったが、ギルド登録は既にイリオスで済ましてあるし、依頼を受けるつもりも無いので行く意味が無い。もしも北郷1人の旅だったなら観光気分で立ち寄っただろうが、護衛達を引き連れての旅なのでそうフラフラも出来ない。

 何より、幾ら千年以上を生きる北郷にとっても無言旅はそろそろ限界なので、さっさと終わらせたいのだ。










 魔道具屋はレンガ造りの三階建ての建物で、外観は赤レンガなので明治の街並みにありそうな様相だ。窓ガラスはどれも透明度は高く、完全に透明ではないが十分向こう側が見える。

 建物の前にはどの階に何が売っているのかの看板がぶら下がっていて、1階は魔法薬、2階は魔法武器、3階は魔法道具としか書いてない。何とも大雑把だが、前記したようにこの世界ではこのような案内板自体が少ないので、これでも十分親切なのだ。







 魔道具屋に入った北郷達は、先ずは魔法薬のフロアに入った。


 全商品をワンフロアで扱っていたイリオスと違い、階層毎に違う商品を扱っている王都は品揃えが桁違いで、スペースの都合上、イリオスは商品を一纏めにしていたので目的の商品がどこにあるのかが分かりにくかったが、王都の場合は右側に薬草や薬関係、左側にポーションや魔法ポーションと分かりやすく分類されている。更に、イリオス同様に消臭の魔法を使っているのか薬屋独特の嫌な匂いが一切しないという完璧さ。

 未だ1階しか見ていないが、やはり王都は規模が違うんだと改めて北郷は痛感し、もしかしたらイリオスには無かった上位ポーションが売っているのではないかと、期待していた。




 魔法薬屋には北郷達の他に数人の先客がいて、客達にはそれぞれ店員が付いて接客をしていた。

 そんな中、陳列を直していた店員が本郷達に気付き、近付いてくる。店員が着ている制服はそれぞれ違うのか、イリオスの店員より少し豪華な装いだ。


「いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか?」


 メガネをかけている以外にはこれといった特徴の無い店員は、慣れた営業スマイルをしながら本郷達に聞く。


「上位のポーションと魔法ポーションを見たいのですが」

「畏まりました。こちらへどうぞ」


 イリオスでは滅多に入荷しないと言われた上位のポーションと魔法ポーションを、店員は何でも無いかのように頷き、北郷達を誘導する。

 図書館などで得た知識でも上位のポーション類はかなり貴重な物とあったので、無い事を北郷は覚悟していたが、その覚悟は良い意味で裏切られた。


 店員が案内した先には、試験管や丸底フラスコのようなガラスビンが並んでいるポーションコーナーだ。

 主にはイリオスでも見たような青や黄色が多いが、中には他のポーション類より少し高い台に展示されている、赤いポーションと魔法ポーションがあった。


「こちらが上位のポーションと魔法ポーションになります」


 いかにも高いですと言わんばかりに展示されていて、心なしかガラスビンの透明度も高い。


「ほぉ…流石は王都ですね。イリオスなど他の街ではどこも売っていなかったのに」

「それはそうです。リディア王国内で上位のポーション類など貴重な品のほとんどは、王都に最優先に卸されますから」


 北郷の言葉に店員は我が事かのように笑顔で自慢する。事実、店員にとっても王都の店舗に配属されるというのはエリートの称号であり、大変誇らしいのだ。

 そのため王都に勤めている店員は、他の街に勤めている店員を下に見る事がある。


「成る程…それで、上位のポーションと魔法ポーションは幾らするんですか?」

「上位ポーションは100エクシード、上位の魔法ポーションは200エクシードになります」


 最早平民どころか、貴族や富裕層ですらなかなか買えない値段だ。

 ちなみに、上位のポーション類は貴重なので魔術師ギルドのギルド証を持っていようが値引きはしない。


「…やはりそれなりにしますね」

「えぇ…やはり原価や人件費がそれなりにかかりますから、どうしても高値になってしまいます。

 しかし需要は常にありますから売り切れになる場合がほとんどです」


 医療技術が未発達なパンゲア世界では、治療魔法を使える魔術師が医者であり、ポーションが薬なのだ。

 オマケにポーションは位階にもよるがほぼ何にでも効く万能薬なので、貴族や富裕層は調子が悪くなればとりあえずはポーションを飲んでおく。そうすれば大抵の病気や怪我は治るからだ。そのため、パンゲア世界では文明レベルの割には王族や貴族、富裕層の平均寿命は日本帝国並みに高く、痴呆になる事も少ない。


 現代世界より高い医療レベルを誇る日本帝国でさえ治療不可能な病気でも、上位の治療魔法と上位ポーションを併用すれば容易く治るという、ファンタジー世界にありがちな理不尽だ。

 ……最も、あまりにもポーションが万能すぎて文明レベルに比べて医療技術が明らかに低いという、洒落にならない弊害も起きているが。




 その後も店員は北郷に様々な売り込みをかけたが、北郷は軽く流し、何も買わずに2階へと去った。

 コピー能力を持つ北郷にとっては見るだけでコピー出来るので、わざわざ買う必要は無い。金も無限にコピー出来るので上位のポーション類を買い漁る事も可能だが、そんな事をすれば必ず目立ち、金目当ての強盗なり情報目当ての監視が付く可能性が高い。

 あくまで北郷達の目的は情報収集をした後に無事帰還する事なので、目立つ事はリスクにしかならない。










 2階の魔法武器屋については省略する。

 普通の服のように軽い鎧や、鉄さえ簡単に切れる長剣など、常識では考えられない性能を持つ武器は沢山あったが、魔法の効果が切れればばただの古い武器に過ぎない。

 上位魔術師がかけた強化魔法なら1年程度は保つが、それではとてもではないが大量生産は不可能。オマケに魔法を付与したばかりの武器をコピーしたとしても、毎年魔法をかけ直さないといけないのではあまりにも使い勝手が悪すぎる。


 そのため、魔法武器屋とは言っているものの、商品の大半が普通の武器だ。装飾剣など、貴族が買いそうな観賞用の武器には箔付けのために魔法が付与された物が多いものの、実用性を重視した武器のほとんどは魔法が付与されていない。

 元々は魔法が付与されていたが、銃や大砲の時代に長剣や鎧は役に立たないので売れ残り、その内魔法が切れてしまった。かと言ってそのまま処分するのはあまりにも勿体無いし費用もかかるので、そのまま販売し、希望があればその都度魔法を付与するという方式が一般的だ。


 かつてモンスターがそこら中にいた時代なら一般庶民も武装していたが、北の未開拓地や山間部に追いやる事に成功した現在では武装する必要が無く、更には近世の時代に突入して長剣や鎧が活躍する機会がほぼ無くなってしまったため、魔法武器屋は勿論、武器屋全般は存在意義を失いつつある。


 ちなみに現在の売上の大半は、軍の士官が着る軍服や胸甲、軍刀などの強化が主で、中には龍騎士が使う大槍も含まれる。

 一時期、弾丸や砲弾に強化魔法をかけて威力を上げるという考えもあったが、1回の戦闘に何百何千と使う弾丸や砲弾1つ1つに強化魔法をかけていてはコストがかかり過ぎ、戦争中に国が破綻しかねないので却下された。










 3階の魔法道具屋も、基本的には2階の魔法武器と同様に魔法が切れればただの道具に過ぎないが、魔法武器屋と違って活気がある。

 何故なら、魔法道具は欠かせない存在だからだ。


 例えば『水を生み出す壷』だ。


 どの世界でも、長旅には大量の水が必要になる。

 人間は1日最低2リットルの水を摂取しなければ3日程度しか保たないため、長旅をするには荷物の大半は水が占める。途中に水場があるならそこまで持ち歩く必要は無いが、もしその水場が干上がっていた場合には生命の危機に瀕するので、常に安全マージンを確保するために大量に持ち運ばなくてはならない。


 しかし、『水を生み出す壷』を所有していれば必要無くなる。

 その名の通り水を生み出す壷で、大きさにもよるが大体毎日2、30リットルもの水を生み出せるので、大量の水を運ぶ必要が無い。魔法が切れればただの壷になってしまうが、普通に使っていれば軽く2、3ヶ月は保つので、コスト的にも悪くない。


 他にも『入れた物を冷やすガラスケース』や『水に入れても消えない火種』、魔術師ギルドにもあった『灯火』や『自在光』などなど、維持費にとんでもない値段がかかるので魔法道具は王候貴族や富裕層にしか使えないが、一度使えばあまりの便利さに手放す事など出来なくなるため、この業界は非常に安定している。







 しかし、北郷の目的は魔法道具では無い。

 勿論魔法道具に興味が無い訳では無いが、所詮は魔法武器と同じで魔力が切れればガラクタに過ぎない。幾ら便利であろうが、大量生産が出来ないのでは価値は薄い。


 では何が目的なのかと言うと……魔石だ。


 新たな技術である魔法技術を利用するためには魔術師を大量に量産しなければならないが、魔法を使うには絶対に必要な魔石が日本帝国では産出しない。元々、日本帝国(アメリカ大陸)は魔法が存在しない世界から飛ばされたのだから、魔石鉱など存在する筈が無いのだ。

 魔石が無いと魔法が絶対に使えないという訳では無いが、魔石の補正や補助が無ければ魔法の成功確率や威力は激減し、上位魔術師でさえ下位の魔法を使うのが精一杯となる。そのため、魔術師の量産には大量の魔石が必要不可欠なのだが、肝心の魔石は欠片すら採れない。

 自国で魔石が産出しないなら産出する国から輸入するという方法もあるが、足元を見られて割高な価格を提示される可能性が高い。

 ならば産出する国に侵略して魔石の鉱山を奪うという手もあるが、それでは魔法に全くの無防備な状態でパンゲア世界に関わる事になり、更には日本帝国に対抗してパンゲア世界の国々が連合を組むという、非常に面倒な展開にもなりかねない。


 少量ならまだしも、大量に仕入れなければならないので普通の国なら多少足元を見られても輸入に頼るしかないが……日本帝国は違う。

 コピー能力を持つ北郷が魔石を見れば、例え超希少な1等級の魔石だろうと無限にコピー出来る。パンゲア世界の魔術師の大半は3等級以下の魔石を使い、宮廷魔術師でさえ1等級や2等級の魔石を持つ者は少ないが、日本帝国ならば全ての魔術師に1等級の魔石を支給する事が可能なのだ。


 そんな、パンゲア世界において神話の軍隊に匹敵する程理不尽なモノを作るために、北郷は階段を上がって魔法道具屋の階に足を踏み入れた。







 魔法道具屋は雑貨屋のような店内をしていて、様々な物が棚に陳列されている。

 壁際の棚には大小様々な壷が並び、中央の棚には様々な色や大きなをした魔石や、その魔石が埋め込まれた杖が置いてある。


「魔法道具屋へようこそ。何をお探しでしょうか?」


 苦労をしているのか髪が薄く、更にメガネをかけているという、まるで日本の中間管理職といった雰囲気を出している店員が話しかけて来た。

 未熟な者ならその冴えない風貌に侮るかも知れないが、メガネの奥の目は鋭く、やり手の商人を思わせる。


「魔石を見たいんですが」

「魔石ですか…ではこちらへどうぞ」


 笑顔で北郷達を案内しながら、店員は考えていた。

 目の前の魔術師は杖を出しておらず、ローブは刺繍など装飾は一切されていない。護衛の装備も長剣のみで、鎧など防具の類いは一切身に付けさせていない。

 常識的に考えれば見るからに新人魔術師で、金回りが良いとはとても思えないのだが……長年の経験から、店員はこの魔術師は相当な金持ちだと判断した。


 何故そう判断したのかと言うと、一見すれば魔術師の着ているローブは絹など高級な生地ではなく、装飾も施されていない安物に見えるが、よ~く見ればとても細やかで丁寧に作られた良い品だ。間違っても安物のローブの作りでは無い。

 護衛達が持っている長剣にしても、鞘や柄に何の装飾も施していない安物の長剣だが、これまたよく見れば安物にありがちな荒々しさは一切無く、熟練職人によって丁寧に作られたように優美なラインを浮かべている。

 非常に分かりづらいのだが、見る人が見れば一行の身に付けている物はどれも高級品だと分かる。


 何故金持ちである事を隠しているのかは分からないが、それを聞く気は無い。長年の経験から隠すという事はそれなりの意味があり、下手にそれを指摘すると面倒な事になる事を理解しているので、その事を一切触れるつもりは無い。

 大事な事は目の前の魔術師はかなりの金持ちであり、上手くいけば上客になってくれるかも知れない事だ。別に販売ノルマがある訳では無いが、高額商品を売る事が出来れば給料や評価は上がり、昇進の可能性も上がる。

 表情こそ一切変えないが、内心大興奮しながら北郷達を案内したのだった。




 棚には様々な大きさの魔石が並んでおり、小指より小さく傷だらけな魔石は木の箱に雑多に入れられているが、北郷が持つ2等級の魔石など大きな魔石は、まるで野球のサインボールかのように大事に三脚の上に置かれている。


「こちらが魔石のコーナーになっています」


 笑顔で言う店員の内心に気付いてはいたが、北郷は無視する。普通に買い物に来ていたなら考慮する必要があるが、見に(コピーしに)来ただけなので考慮する必要も無い。

 どうせ二度と来る事は無いのだから。


 棚の上にはイリオスでも見た3~6等級の魔石の他にも、前記したようにサインボールのように三脚の上に置かれていたり、豪華なケースに飾られた2等級や1等級の魔石も鎮座している。


「こちらの1等級の魔石などはいかがでしょうか?」


 北郷が金持ちであると見抜いた店員は、新人は勿論、普通の魔術師には絶対買う事など出来ない1等級の魔石を勧める。


「大きさ、質ともに最高級品で、当ギルドでもなかなか入荷しない逸品です」


 店員が勧める魔石は、北郷が持つ2等級の魔石よりかなり大きなサイズだが、未加工の原石なのかゴツゴツとしていて、透明度もかなり低い。


「ご存知の通り今はまだ原石の状態ですので透明度は低いですが、熟練の職人が加工すれば宝石にも負けない輝きと、透き通るような高い透明度を持つようになります」


 宝石とは違い、魔石の場合は原石のまま売る事が多い。6等級など低い品質の魔石ならあらかじめ加工されている事が多いが、3等級以上の高品質な魔石なら原石のまま購入し、自分や杖に合わせてオーダーメイドにするのが一般的だ。

 魔術師にとって杖(魔石)は命の次に大事な物であり、どんなにケチな魔術師でも杖には拘る。なので高い等級の魔石で杖を作る場合は、杖の材質や形、長さなどは勿論、魔石のカッティングなどを細かく決め、自分だけの杖を作るのが普通なのだ。




 その後も店員は何とか北郷に1等級の魔石を買わせるべく、懸命にセールストークを続けるが……肝心の北郷にとっては既にどうでも良い。北郷の目的は1等級の魔石を見る事であるので、店員の説明を聞く前に目的は果たしていたのだ。

 なのでもう北郷としては帰っても良いのだが、あまりにも店員が熱心に勧めてくるので質問をした。


「…成る程、それ程までに素晴らしいのですか。

 …して、値段は幾らなのでしょうか?」


 いかにも今までの話を全部聞いていたかのように言った後に、値段を聞く。


「魔石のみの価格なら1100エクシード、加工費を含めれば1300エクシード程にもなりますが……今回ご購入なら特別に加工費は無料とさせて頂きます」


 200エクシードもの値引きという、とんでもない値下げだが……店員は自信満々に言い放つ。

 何故なら最初に1300エクシードと言った時に、目の前の魔術師は少し驚いた顔をしたものの、それはあまりにも高価さに驚愕した訳ではなく、思ったより高いな程度の余裕がある驚きだった。


 これなら大幅値下げをすれば買ってくれるのではと、店員は猛プッシュする。


「1等級の魔石は大変希少ですので入荷数自体が少なく、次に入荷する予定も未定ですので、今が正に絶好の機会です」


 これは本当だ。3等級までの魔石なら比較的産出するので手に入れやすいが、2等級からは産出数がガクッと下がり、1等級に到っては幻と言って言い程に数が少ない。

 なので幾ら金を積んでも1等級の魔石を手に入れる事は難しく、例え入荷したとしても直ぐに売れるケースが多い。この魔石にしても、明日には売れている可能性が大なのだ。






 しかし店員の必死の売り込みも虚しく、北郷達は何も買わずに魔法道具屋を去った。


 金は無限にコピー出来るので1等級の魔石を購入し、新たに1等級の杖を作って貰う事も北郷は考えたが、1100エクシードもの大金を払って購入すれば必ず噂になり、面倒な事が起きかねない。それに、杖を作るには最低でも一月はかかると言われたので、仕方なく断念した。

 面倒な噂はともかく、1ヶ月もの長期間王都に足止めを食らうなどあり得なかった。




 その後、王都にある書店を巡って本をコピーした後に、宿で一泊。

 リディア王国での調査任務が終了したので、駅馬車に乗ってイリオスへと向かったのだった。

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