第9話 少し変わった二階層
「ほい終わり」
グサァッ!!
最後のスライムをナイフで突き刺す。
出現モンスターに変化はないが、一度に現れる数が増えてきた。
大体二~三体が一緒になって襲いかかってくる。
この辺が一階層との大きな違いだろうな。
今のところ問題なく倒せているが。
ピコン!
『レベルアップしました』
ようやくレベルが上がった……あれ、今回は何もなし?
スキル画面を見たけど、新しいスキルも既存スキルの変化も特にない。
基礎ステータスは上がっているとはいえ残念だ。
次に期待しよう。
「ん?」
進んでいると、ドアのついた小部屋を発見した。
誰かが作ったのか? それとも罠?
少なくとも人の気配はないし、罠の可能性が高い。
けど中が気になる。
確かめる方法は……
「ギキィ……」
「お」
偶然、一体のゴブリンが近くを通り過ぎた。
ちょうどいい。アイツを利用しよう。
「ギキィ!?」
一瞬で距離を詰めた後、腹部にナイフを突き刺す。
“武器強化”は使っていない。まだ殺すつもりはないから。
そして動きが鈍くなったゴブリンを抱え上げ、そのまま勢いよく――
「そーれっ」
ドアの方へと放り投げた。
バキィ!! と木材が折れる音と共に、ゴブリンが中へと吸い込まれていく。
ズモモモモモモ!!
「グキィイイイイイ!!」
と、壁面からスライムたちが一斉に出現し、ゴブリンの身体へとまとわりつく。
そして跡形もなく溶かしてしまった。
スライムは全部で四~五体いた。やっぱり罠だったか。
「ん?」
ドア越しに奥を見ると、宝箱のようなものが見えた。
罠というよりは試練に近いのか?
敵は多いけど、頑張って突破したらご褒美が貰えるということ?
(中身が気になるな……)
かといってリスクも高い。
“武器強化”の効果時間内で倒せるのは、頑張っても三体が限界だ。
“ファイアボール”はスライムの中心のコアに届かないからか、あまり効果がない。
全員倒すのは難しいか……
パーティなら、もう少し楽なんだろうが。
愚痴っても仕方ないけど。
どうにかひとまとめにする方法は……
「あ」
この方法なら倒せる?
俺は少し離れた位置まで移動し、シャベルを取り出した。採掘に使えるとWikiに書いてあったから買ったのだ。軽くて使いやすい。
そして周りにモンスターがいない事を確認すると、せっせと地面を掘り始める。
地面はそれなりに固いが、“武器強化”を使えば簡単に掘れる。シャベルも武器判定らしい。
軍では最強の白兵戦武器として扱われるらしいが……そういう豆知識がスキルに反応したのか?
「これくらいでいいだろ」
ある程度深く掘れた所で地上へ戻る。
俺の身長よりも深い穴だ。なのにあっさりよじ登れるのもレベルアップの恩恵か。
掘った穴の上に予備の衣類などを被せておく。
そしてスライムたちがいた小部屋へと戻り、すぅっと深く息を吸い込んだ。
「おーい!!」
声を張り上げると、小部屋の中にいたスライムたちが反応する。
全員が俺の方へ跳ねながら襲い掛かってきた。
いいぞ、そのまま俺についてくるんだ。
スライムは数こそ多いがスピードは大したことない。
一定の距離を保ちながら、スライムと追いかけっこを続ける。
そして例の穴付近へと戻ってきた。
(引っかかれよ……)
軽く祈りながら穴の上をジャンプ。
スライムたちは警戒もせず、ただ俺の方へ軟体の身体をまとわせようとするが――
「よしっ」
布で覆われた場所に乗っかった瞬間、地面が崩れ落ちてスライムたちが穴の中へと落ちていく。
成功してよかった。避けられたらそのまま逃げようと思ったが……その必要はないな。
俺は穴の中に“ファイアボール”を投げ込んだ後、小部屋の方へと再び戻った。
「さてと……」
宝箱の中身はなんだ?
周りに警戒しつつ宝箱へと近づき、ゆっくり開けていく。
「……ナイフ?」
柄に緑の宝石が埋め込まれたナイフ。
いかにもファンタジー作品に出てきそうな見た目だ。
あれ、意外と軽い。
俺が使ってるサバイバルナイフよりも軽いぞ。
グリップも握りやすくて悪くない。
で? 肝心の性能は?
パァアアア……
「えっ」
ナイフが光った。光は小部屋を埋め尽くし、眩しすぎて目が開けられないほどだ。
何が起きてる? まさかナイフ自体がトラップだったとか?
わけがわからないまま目をつぶること五秒。
徐々に光は収まっていく。
『登録完了。使用者のアップデートを行いました』
同時に頭の中へアナウンス音声が流れた。
使用者? 俺のことか?
何が何だか……
ピコン!
★★★★
【ワープナイフ】
魔力が込められた不思議なナイフ。
登録された使用者の手元へいつでも戻って来る。
★★★★
なんか表示された。名前とかあるんだ。
スキルみたいに特別な武器は効果がわかるのか?
で、肝心の能力。
登録された使用者の手元に戻るって何だ?
とりあえず試してみよう……
「……これでいいのか?」
少し離れた地面にワープナイフを置く。
そして手元に戻るよう、頭の中で意識を集中させると……
「おおっ」
地面に落ちていたワープナイフが消えたかと思えば、いつの間にか俺の手元に握られていた。
名前の通りワープしている。
すげぇ便利だな。
その辺に投げてもすぐ手元に戻せる。
“武器強化”によるナイフ投げを多用する俺の戦法と相性がいいぞ。
「これを売ったら……」
一瞬、頭に浮かんだけどすぐ引っ込めた。
ここまで俺と相性がいいんだし、道具として使い込んだ方がいい気がする。
破産寸前になったら売るかもしれんが。大事に扱おう。
「まだ二時間……もう少し探索するか」
もう少し奥が気になる。
あと、ワープナイフで戦ってみたい。
実際に使わないとわからない事も多いから。
しかし順調だなぁ。どこかで手痛いしっぺ返しが来そうで怖い。
……いきなりボスとか来ないよな?




