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フリーター生活がしんどいので、副業ダンジョンで日常をちょっと豪華にしようと思う  作者: 早乙女らいか


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第20話 ミミックとの戦い

「「「「クショォオオオオオ!!」」」」


 奇声を発しながら、ミミックたちが一斉に襲いかかってくる。

 宝箱の蓋のような口をあんぐりと開け、鋭い牙がギラリと光る。

 噛まれたら肉まで持っていかれそうだ……そんな恐ろしさがあった。


「っと!!」


 だが攻撃は一直線。回避は簡単だ。

 足に力を込め、俺は後方へ飛び込み、ミミックたちの突撃を避けた。


(試しに使ってみるか)


 一番手前にいるミミックに手を向け、スキルを念じて発動する。

 新たに覚えたスキル”酸液”。

 モンスター相手にどれくらい効果を発揮するのか。


「クショオオオオッ!?」

「……わぉ」


 発射された”酸液”がミミックの身体に命中すると、ギラついた装飾や箱が少しずつ溶けていく。かなり痛いのか、ミミックは悲鳴のような声をあげる。

 どうやらミミックの耐久力よりも”酸液”の威力が上回ったらしい。


 地面に試し撃ちした時もなかなかの光景だったが、モンスター相手だとエグさと迫力がさらに増している。


(こいつを主軸に……とはいかないか)


 ”酸液”のクールダウンは20秒。

 クールダウンが終わるまで、この大群から逃げ切るのはほぼ不可能だ。

 そうこう考えているうちに、ミミックたちが再び襲いかかってくる。


「”ファイアボール”!!」


 代わりにファイアボールを先頭のミミックへ放つ。業火と爆発が広がり、一撃で倒したと確信したのだが……


「クショオオオオ……」


 倒せていない。傷も負わせ、ノックバックもさせた。だが消滅は免れたらしい。

 ”ファイアボール”だけじゃ倒せないのか?

 けど今の俺はもう一発撃てる。流石に二回も喰らったら倒せるだろ。


「「「「ショオオオオオオ!!」」」」


 と、ファイアボールの準備をしていた時。

 ミミックたちが大きく口を開いたかと思えば、不快な音波を発し始めた。


 聞いているだけで耳が痛くなりそうだ。

 胸の奥がムカムカしてくる。


 思わず目と耳を塞ぎ、再び目を開くと――


「っ!?」


 ミミックが倍に増えていた。

 残っていたのが六体。なのに十二体も?

 ゾンビと同じように、こいつらも別の場所からスポーンするのか?


「いや……これは……?」


 唐突に足元がふらつく。

 視界がぼやけて二重に映り、手が不自然に震え続ける。おまけに呼吸まで荒くなってきた。


 大した怪我も負ってないのにおかしい。

 まさかミミックたちの仕業か?


「クショオオオオオッ!!」

「がっ!?」


 背中に強い衝撃。身体が宙を舞い、やがて固い壁へと強く打ち付けられる。

 後ろには誰もいなかったはずだ。というか、気配すら感じなかった。


「このっ……!?」


 必死に抵抗しようとワープナイフを目の前のミミックに投げたのだが……なぜかすり抜けた。


(まさか幻か?)


 偽物ばかりの四階層。

 騙すという意味では共通している。

 それにゲームやラノベでミミックは不思議な術を使うことが多い。


 これは……厄介だな。

 単純に耐久が高いとか素早いだけなら、対策を立てるのも難しくない。


 だが、幻術のような催眠系スキルへの対抗手段は、今の俺にはない。せめて回復系のスキルがあれば楽なのだろうが……覚えたいスキルが多すぎる。


「「「「クショオオオオッ!!」」」」


 声は聞こえる。だが足がうまく動かない。

 ギリッと歯を食いしばり、なけなしの力で横へ転がるように回避したが……


「ぐあっ!!」


 察知できなかったミミックが俺の正面にいた。

 激しい痛みとともに、牙が鋭く腕に食い込んでいく。


「このっ!!」

「クショオオオオッ!!」


 なんとか振り払うものの、痛みは治まらず血も激しく流れ続ける。

 こんな大怪我を負ったのは小学生以来だな……確か逆上がりに失敗して骨折したっけ。


 痛みのせいか、思考がわずかにクリアになってきた。

 だが戦況は未だ不利なまま。

 壁際に追い込まれた俺をミミックたちがジリジリと距離を詰めてくる。


(こいつらの気配さえ掴めば……)


 最悪、見えなくてもいい。

 ミミック本体の位置を見抜き、攻撃さえ当てられれば倒せる。火力に関しても”武器強化”と”ファイアボール”の重ねがけで十分足りるはず。


 問題はミミックを見抜く方法なんだが……気配ならあのスキルで察知できるんじゃないか?


(”気配察知”)


 余計な情報を入れないため目を閉じる。

 思考の中に一定範囲のフィールドが表示され、その中にはミミックたちのいる現在地点の情報も含まれていた。


 同時にワープナイフをギュッと握りしめ、”武器強化”と”ファイアボール”を付与していく。


(気配が……動いた……)


 赤いモヤモヤが移動する。

 俺を囲うように広がっているのか。

 だが、俺の後ろは壁だ。ヤツらが展開できる範囲も狭い。


 そして”気配察知”がミミックたちの位置を教えてくれる。

 右斜め方向から一つの赤いモヤモヤが急接近する。


「そこだ」

「クショオッ!?」


 タイミングを合わせるようにナイフを突き出した。

 確かな手応え、そして断末魔。

 幻術に惑わされても、”気配察知”がすべての答えを教えてくれる。


 残り五体。


「「クショオオオオッ!!」」


 今度は……上と左から。

 感じ取った方向へスライドするようにナイフを振るうと、二回ほど何かを斬り裂いた感覚があった。


 残り二体。


「……うまいな」


 と、再び上方向から気配。

 どうやら後ろに隠れて奇襲しようとしたらしい。

 だが気配さえ感じ取ってしまえば……無意味だ。


「クショッ……」


 突き出したナイフがミミックに刺さる。

 残り一体。ミミックの数が減ったからか、幻術の効果が薄れ始めた。


 多少頭痛がするが、これなら目も使える。


「クショォオオオオ……」


 再び目を開くと、一体のミミックが威嚇しながらジリジリと後方へ下がっていく。

 逃げようとしてる? いや、それにしては慎重すぎる。


 これは攻める隙をうかがっているんだ。

 なら俺から仕掛けたいところだが……腕の傷と多少残っている幻術の影響。それらが身体を重くしている。


 うかつに動けば隙を晒し、返り討ちに遭うだけ。

 ここは慎重に……


 フッ……


「しまった……」


 睨み合いを続けていたら、ナイフに宿っていた光が消えてしまった。

 スキルの効果時間切れ。

 そこまで頭が回っていなかった。


「クショオオオオオオッ!!」


 それをチャンスとばかりにミミックが瞬時に飛び込んでくる。大口を開けて狙うは俺の頭。

 丸ごとガブリといくつもりだ。


(まずい!!)


 一瞬だけ時間が遅くなったような気がした。

 同時に今まで以上に思考がグルグル回っていく。


 どうすれば避けられる? どうすれば倒せる?

 たらればの回答を高速で出し続けるが、俺の頭はピンと来ていない。

 最適解はないか……


「……あ」


 その時、右下のアイコンがグレーから点滅したのが見えた。


「クショオッ!?」

「はぁ……はぁ……」


 大きな口がドロドロに溶けていく。そしてミミックの全身が光の粒子となって宙へ舞う。

 ”酸液”……クールダウン終わってよかった。


「流石に死ぬかと思った……いててっ」


 俺はポーチから塗り薬と包帯を取り出して腕の傷を塞いでいく。

 ネットで見ただけの応急処置だが、やらないよりはマシだ。


 薬が傷に染みてめっちゃ痛い。

 明日はバイト休みかなぁ……


 ピコン!


『レベルアップしました。”酸液”のクールダウンが【18秒】になりました。”武器強化”が”武身強化”に進化しました』


「え?」


 進化って何? そんなのあるの?

 どんどん強くなるなぁ。

 かなり気になるけど後回しにしよう……今は傷の治療が最優先だ。


 ゴゴゴゴ……


「ん?」


 ダンジョン内が揺れ、地面の一部分がシャッターのように開く。

 そして下から宝箱がせり上がるように姿を現した。


「……だから情報量が多いって」


 包帯も巻き終わった。

 さて、まずは宝箱から調べ……罠の可能性があるから全部のクールダウンが完了してから。

 その間に”武身強化”のスキル説明文でも見るとしよう。

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