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フリーター生活がしんどいので、副業ダンジョンで日常をちょっと豪華にしようと思う  作者: 早乙女らいか


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第1話 クビ宣告、だけどスキルに目覚めた

新連載です、よろしくお願いします

『パッシブスキル:クールダウンを獲得しました』

「ん?」


 冷蔵コーナーのうどんを手に取った時、謎のアナウンス音声が耳に響く。

 パッシブスキル? クールダウン?

 なんだこれ。疲れすぎて幻聴でも聞こえた?


「誰か話しかけましたかー?」


 スーパーの店内で声を出す。

 数秒、俺の方を見るやつが何人かいたが、すぐに商品へと視線を戻す。


 誰かが話しかけたわけでもない。やっぱり幻聴だった?

 でも、妙にはっきり聞こえたんだよな……


「……帰るか」


 考えても仕方ない。

 家に帰って落ち着くのが一番だ。


 今日は嫌なことがあったし、それが原因かも。

 ……俺としては、今日の出来事が幻覚であってほしいのだが。


 ◇◇◇


「君、明日から来なくていいから」

「えっ」


 遡ること数時間前。

 都内のカラオケ店にて突然のクビ宣告。

 掃除を終わらせて、ぼーっと帰ろうとしていた俺の目を覚まさせるには十分すぎた。


「えっと、理由はなんですか?」

「二か月後に閉店するんだけど、同時に人もいらなくなってねー……ほら、忙しいからさっさと帰って」


 そんなの初めて聞いた。

 ここ潰れるんだ……というか俺、そんなすぐに辞めさせられるの?

 午後だけの勤務とはいえ、遅刻せずに二年も勤めた俺に対してあんまりな仕打ちでは?


(コンビニバイト、週四になったばかりなのに……)


 Wワークのメインであるコンビニでも最近、変化があった。

 人が増えてシフトが過剰気味だから、週の出勤日数を減らしてくれと。


 減らすのはすごく嫌だった。

 ちょっとだけ抵抗もした。

 店長の説得で週四勤務を渋々受け入れたけど。


 だけど状況が変わった。

 コンビニバイトは午前だけだぞ?

 これでどうやって生活しろって言うんだ。


「はぁ……」


 肩を落としながら人混みを避け、裏口の駐輪場へと向かう。

 路地裏の暗さが、今の気分に妙にしっくりきた。

 そういえば今の貯金ってどれくらいだっけ……


「貯金百万……少ないなぁ」


 Wワークしてもこの額。

 無駄遣いした記憶はあんまりない。


 アパートの家賃とか、

 諸々の税金とか、

 食費とか電気水道ガス代……


 いろんな必要経費を差し引けば、手元に残るお金なんてわずかだ。

 趣味に使うお金も、二~三か月に一回買うゲームくらい。しかも中古かセールで。


(最近また税金が上がったんだよなぁ……消費税二十%はやりすぎだって)


 ため息を吐きながら、俺は夜の街を自転車で進む。

 消費税はまだしも、年金と保険料も一律引き上げってヤバすぎだろ。

 低所得者への補填は一切ないし……“ダンジョン界隈”は盛り上がってるのに、世知辛いなぁ。


 キコキコ漕ぎながら、俺はスーパーの駐輪場に自転車を止める。


「いらっしゃいませー」


 今日の弁当は何があるかなぁ……というか、少し早く来すぎたかも。

 人は多いし店内も活気がある。


 弁当コーナーも多分……

 あぁ、やっぱり。半額シールすら貼られてない。


(……というか値段上がってね?)


 カツ丼で七百円?

 こだわりの肉とかそういう売り文句は一切ない。

 純粋な値上げだ。


 前まで六百四十円だったのに……

 支払うお金がどんどん増えていく。


 この中で一番マシなのは……うどんか。

 トッピングが安っぽい天ぷら一個しかない。

 五百円で麺がそこそこあるならまぁ……


 昨日も食べたんだけどなぁと思いながら、俺は冷たいうどんを手に取る。

 そこで謎のアナウンス音声を耳にして今に至るわけだ。


 ◇◇◇


「……あれ幻聴じゃないの?」


 帰宅後。

 うどんをすすりながらスマホで謎のアナウンスについて調べていた。

 要約すると、俺はスキルに目覚めたらしい。


 ある日突然スキルに関するアナウンスが頭に流れる。

 きっかけは人それぞれ。

 種類も様々で、それがダンジョンに入るために必要な適性だという。


「ダンジョンか……実感が湧かないな」


 この世界にダンジョンが現れて約二十年。

 世界中に謎の異空間が現れ、その中には未知の生物、モンスターが住んでいた。

 不思議な力を使うモンスターに人間側は太刀打ちできない……と思いきや、スキルという謎の能力に目覚める人が続出。

 また、ダンジョン内には未知の素材が存在することで中に潜る人が増えて……そんな経緯だった気がする。


 稼げる人はとにかく稼げるらしい。

 ダンジョン内の素材って、未だに高額で取引される上に供給が追い付いていないとか。


 夢のある世界だよなぁ。


(スキルに目覚めたってことは、ダンジョンに潜れるってことだよな……?)


 ダンジョンに潜るための最低条件。それがスキルに目覚めたかどうかだ。

 誰でもホイホイ入れたら大惨事になるからね。


 スキルに目覚めるかどうかはランダムだけど、それ以外の条件は特にない。

 運が良ければ簡単に達成できてしまう。

 逆を言えば、運が悪ければ入れないってことだけど。


「俺でも稼げるのか? ダンジョンに関する知識があるわけじゃないし……」


 誰でも稼げる、なんて甘い仕事じゃないのはわかる。

 モンスターを相手にするなんて危険だし、何より俺はどれくらい戦えるんだ?

 ネットの広告だと【未経験大歓迎!!※スキルに目覚めた人限定】って書いてあるけど。


 未経験でも行けるの? こんなフリーターでもお金が稼げるのか?

 不安だ……何もかも知らないことばかりだから、余計尻込みしてしまう。


「ん?」


 ネットニュースを漁っていた時、一つの記事を見つける。


 “ダンジョンによる副業の増加、企業はどのように対応するべきか”


 主婦が週一でダンジョンへ、

 高校生が遊び感覚で潜り、

 定年退職した人が第二の人生として挑戦する?


 へー、ダンジョンを副業にしてる人もいるんだ。

 みんな、バイタリティがすごい。


 ダンジョンって大変そうだし毎日潜るものかと思ってたけど、副業感覚なら俺でもできそう。

 というかバイトクビになったばっかだ。

 コンビニバイトが終わった午後に潜るとか全然ありだな。


「……やってみるか」


 これは最後のチャンスかもしれない。

 一年で会社を辞めて、社会というレールから外れた俺にもたらされた光。


 目標は1日5~6千円。

 それより稼げたら……ちょっと豪華なご褒美でも買おうか。


 いいね。そうしよう。

 楽しめるものを用意するのは大事だ。


 まずはどうしたらいいんだろう?

 検索検索っと……


 ◇◇◇


「ここがダンジョン協会……」


 翌日。バイトが休みだったので、俺は朝から行動していた。

 着いたのはダンジョン協会という施設。見た目は至って普通の役所だ。


 ここで講習を受けることでダンジョンに出入りできるライセンスが発行されるらしい。


 講習自体は定期的に開催されており、今日はたまたま開催日だった……というわけ。

 ラッキーだった。開催日を見て、慌ててネットで申し込んだ。


「うわ、広いなぁ……」


 中は広く、窓口もいろいろあった。

 聞き慣れない課ばかり。市役所みたいな雰囲気なのは、国営事業だからだろうか。


 えーと、講習を受けるのはどこだ……入口の案内板に書いてある。

 総合窓口か。正面の一番目立つ所。

 行ってみよう。


「すみませーん。ダンジョン講習を受けに来たんですけど……」

「講習ですか? 身分証明書はお持ちでしょうか?」

「あ、はい」


 マイナンバーカードを手渡す。

 パソコンの情報を見比べてもらった後、受付のお姉さんからカードと書類を受け取り、ここに記載するよう言われた。


 何やら規約が色々書かれている。控えもあるので後でゆっくり目を通すとしよう……

 下の方に名前を書いてハンコを押した後、書類を受付のお姉さんに渡した。

 その後、お姉さんは奥へと行ってしまった。


 ……アレか。

 昨日、軽く調べた時に知った、講習を受けるための最低条件というやつ。


「お待たせしました~。スキルの発現確認を行うため、こちらの球体に触れてください」


 水晶玉のような物体を持ってくる。中は透明で結構綺麗。

 これに触れることで、その人がスキルに目覚めたかどうかがわかるらしい。

 水晶が光ればスキル持ち。反応しなければスキルなし。


 ダンジョンに潜るにはスキルが必要なため、このような検査が行われているのだとか。


(大丈夫だよな……)


 あれは幻聴じゃない。俺はスキルに目覚めたんだ。

 自分に強く言い聞かせながら、恐る恐る水晶に触れる。


 一秒、二秒、三秒……


 すぐ反応しないのか?

 もしや本当に幻聴だった?


 やめてくれよ。俺の決心はどうなるんだ。

 帰ってバイト先を探すのもだる……


 パァアアアアア……


「スキルの反応を確認しました。ライセンスを発行しますので少々お待ちください」


 よかったー、スキルに目覚めてた。

 これで俺も探索者か。


 安心した気持ちで五分ほど待っていると、受付の人がライセンスと共に名札を差し出してきた。

 これを持って三階にあがり、講習を受けるのだとか。


「スキルの詳細はこの後行われる研修でご確認ください」

「その水晶は?」

「これはスキルがあるかないかの反応しかわからないんですよ」

「なるほど……」


 あの水晶では詳細なスキルがわからないのか。

 安心した。ネットで見た時に“パッシブスキルは珍しい”なんて書かれ方をしていたから。


 悪目立ちはごめんだ。

 俺はちょっと稼げればいいんだ。

 できれば揉め事も避けたい……


「ふぅ……」


 いろんな願望を抱きながら、俺は階段まで足を進める。

 そういえば講習ってどんな内容なんだろう。

 詳しく調べてないや。体力測定とかはやめてほしいけど。

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― 新着の感想 ―
初めまして!とても面白かったです!ありがとうございます!
「誰か話しかけましたかー?」 何か声が聞こえたら、思わず「何ですか」or「なにー」くらいで「誰か話しかけましたかー?」はないと思うな。また、周りに人がいないとわかっていたなら周りを見回すくらいでしょ…
マイナンバーの更新に今日行ってきたけど名前住所誕生日書いてきたよ。
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