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第11章 建国祝賀祭の夜

「ミオ、まだ衣装借りてないの?」


食事休憩中、向かいに座ったマリアさんが、呆れたように言った。


「え、はい。

ほとんど休憩も取れてないですし……様子だけ見て回ろうかなって」


「もう。若いんだから、踊りくらい出なさい」


背中をぱしぱし叩かれる。

痛い。普通に痛い。


「はは……でも、衣装借りるのもお金かかりますし。

それに、踊る相手もいませんから」


建国祝賀祭は、朝から晩までお城の外の広場や城下町で踊りが続く。


たいまつの周りで、男女が輪になって踊る――

この国では、交際のきっかけになることも多い。


でも私には、まったくご縁のない話だった。


「だったら、ダイスでも誘えば?」


その名前を聞いた瞬間、嫌な予感がした。


案の定。


「聞いてくれるか、ミオ」


ため息混じりの声とともに、

食事を持ったダイスさんが隣に座る。


マリアさんは、

何も言わずに、さっと姿を消していた。


……逃げ足早すぎる。


結局、

私はダイスさんの失恋話に延々と付き合うことになった。


その日は、文字通り目が回るほど忙しかった。


建国祝賀祭の二日間、

厨房はほぼ休みなく稼働し続ける。


翌日の仕込み、今日の片付け。

食事は広場で振る舞われ、

「足りなくなる」は許されない。


深夜に近い時間になっても、

私は皿を洗い続けていた。


何度目かのため息をついたところで、


「ミオ、休憩入っていいぞ」


チーフの声がかかる。


「はい。ありがとうございます」


用意してもらった食事を持って、

食堂の端の席に腰を下ろす。


夜勤の騎士たちも、何人か食事をとっていた。


「ミオ」


背後から、聞き慣れた声。


振り返ると、

そこにいたのはレイスだった。


「こんばんは」


「こんばんは。ここ、いいですか」


返事をするのとほぼ同時に、

彼は私の向かいに腰を下ろした。


……正直、今はあまり話したくなかった。


疲れ切った顔。

汗の匂い。

絶対、ひどい状態だ。


それでも。


「二日間、勤務ですか」


話題を振る。


「ああ。ミオも、似たようなものですよね」


「私は、明日の昼から結構休めますから。

レイスさんほどじゃないです」


騎士たちは、この期間ほぼ四十八時間体制だ。

短い休憩を挟みながら、城の警備にあたる。


レイスは、

その合間の食事休憩なのだろう。


会話を続けながら、

手早く食事を口に運んでいる。


……相変わらず何をしてても、絵になる。


そんなことを考えていると、

胸が少しだけざわついた。

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