03話! 自己紹介の時間
火曜と木曜に上げる予定だった3話と4話を投稿します。
更新が遅れ申し訳ありませんでした。
「――それでは、みんなにも自己紹介をしてもらおう! そうだな、君から頼む」
ゆな先生はそういうと、最前列の一番、右の子を指名した。
「やはり……わたくしからですか。わたくしの名前は天城ユイ。第7の月が赤く染まるとき、封じられし因果律が目覚める。あなたたちは、ただ証人であればよいのですわ!」
――オレは分かっていた、この教室に入ったときから。いや、昨日の入学式から。
このクラスの半数以上が心に病を抱えたまま、高校生になってしまったことを……
「天城ユイさんね、じゃあ次、隣の子」
流石は変人変態教師まったく動じていない。
彼女もかつては、そうだったのだろう。今の方が終わっているが。
「え、えっと…… 石川タクヤです。あ、えーと趣味?は読書でミステリーをよく読みます。よろしくお願いします」
前の二人が頭おかしかったから、自分の自己紹介に自信持てなくなってるな。
でも、普通の人間もいるようだ、一安心。
――すると、隣の子がスッと立ち上がり、腕を組む。
嫌な予感がするな……
「東中出身、小野寺アスカ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさいっ!以上!」
――でちゃった、伝説の名自己紹介。ちゃんと、言い終わった後、辺りを見回すところも再現している。
でも、このクラスならいそうだぞ。そういう設定のやつ。
隣の石川くんの顔が何とも言えない。きっと、この学校に入ったことを後悔しているんだろうな。可哀想に。
「えっと……涼宮じゃなくて、小野寺アスカさんね。よろしく! じゃあ、次は君よろしく」
――その後も自己紹介は続き、このクラスだけで全てのパターンがそろっていることが判明し、カレンの番が回ってきた。
ちなみに、伝説の自己紹介をしたやつはもう一人いた。
AI生命体、サイボーグ、ナノマシン使い、次元航行者だったが……
おそらく、先にやられてしまったから自分の番まで必死に考えたんだろう。
「有栖カレンです。趣味は音楽聞いたり、カフェ巡りしたり、あとは最近、読書もしています。早くみんなと仲良くなりたいので、たくさん話しかけてくれると嬉しいです! これから三年間、よろしくお願いします!」
おぉ!! パチパチパチッ!!
男子から拍手喝采が起こった。
この教室にいるすべての男子が自分の設定≪キャラ≫を忘れた瞬間だった。
――たしかに、中二病は中二病にひかれ合う。これは事実だ。
だがしかし、それは同性に限っての話だ。
中二病が恋をするのは普通の常識人ってゆうのがお約束だ。
よって、カレンのような存在がこのクラスに存在するということは男子たちにとって救いなのだ。
これが、拍手喝采の理由である。
――自己紹介は一人ひとりが長かったので辛かったが、係決めはすんなり決まった。
カレンが学級委員長になったからだろう。逆らったり、不満を言ったりするやつはいなかった。
これからの三年間が不安でしかないが、初日はなんとか終了した。
ちなみに、オレもカレンほどではないが、そこそこの拍手を全員からいただいた。
係は異世界係。
異世界に行ったことがあるからだろう。先生の推薦により半強制的に決定した。
なにはともあれ、今日の授業は昼前に終わった。
そうだ、異世界へ行こう。
――オレは一か月ぶりにゲートの前にいた。
カレンの昼飯の誘いを断ったら夕飯と言われてしまったので、夜までには帰らないといけない。
――ゲートに入ると、白い部屋にでる。
ここは王城の地下で、学校とつながっている。
だだっ広い白い部屋に、ホテルにあるようなハイカウンターがぽつんと置かれている。
そこでは騎士団の見習いが交代制で、受付のようなことをやっている。
滞在目的、滞在期間、身分証明などの簡単な質問と審査がある。
オレは小さいころから来ているから、魔力測定だけで、後は顔パスで通過できる。
魔力の性質だけは、どんな魔法でもまねできないので、本来ならこの魔力測定だけで十分なのだが。
「――レン様お久しぶりです! もう学校生活にはなれましたか?」
こいつは暇なとき剣術を教えていたクロノという少年だ。
そう、オレにも師匠面したい時期があったのだ……
「おー、クロノ! 元気にしてたか? 慣れましたかって今日始まったばかりだぞ?」
「そうだったんですか、ごめんなさい。強そうな人はいましたか?」
「内緒だぞ? 昨日、試験結果を盗んでみたけどな、今年の生徒はかなり粒ぞろいだぞ。特にB組な、クラスの平均値が例年に比べて高い。お前の上司になるやつもいるだろうな」
オレはどうしても気になったので、魔法を使って職員室から試験結果を盗み出していた。
「レン様よりも強いんですか?」
「んーどうだろうな、オレは小さい頃から訓練してるからなぁ。でも、才能だけなら俺以上のやつはたくさんいたぞ」
オレって謙虚だなぁ。
「――じゃあ、そろそろ行くわ。爺さんどこいる?」
「朝から書斎にこもっています。 あ、あの! また剣を教えてください!」
「おう、そのうちな」
オレはそう言い残し、書斎に向かう――




