02話! 担任にドン引き!
オレたちは校舎に入り、エレベーターへ向かう。
「――説明会のときは六十階建てって聞いてすごい! と思ったけど毎日通うとなると、めんどくさいわね」
カレンは不満そうに言った。
「そうだな」
当初は五階建ての校舎だった。
だが、初代校長のラーゼンが日本一高い校舎にしたいとゴネたそうだ。
――オレたちがエレベーターの前につくと、そこには軽い行列ができていた。
「ねえねえ、あそこにいる子って新入生代表で挨拶してた人じゃない?」
「たしか、推薦入試で一番だったんでしょう?」
「学力テストも一番だったって聞いたぞ?」
まずいな…… 非常に目立っている。
「レン有名なのね、チヤホヤされていい気になってるんじゃないんでしょうね?」
この学校のことを分かっていない、カレンがそんな呑気なことを言う。
これが普通の学校だったらオレも目立つのは嫌ではない。
「遠目だったからわからなかったけど、近くでみたらイケメン!」とか「イケメンなのに勉強もできるなんて素敵!」とか「彼女はいるのかな?」とか言われるはずなんだ。
普通なら……
だがこの学校は――
「はぁ? 主席? 偉そうにしやがって!」、「よかったの!たまたま、魔力耐性が高くて!」、「早く、異世界で行方不明とかなんないかなぁ」、「親に感謝しろよー!」、「夜道に気をつけろよ……」、「異世界転生したら真っ先に殺りに行くからな!」
――こんな具合である。
こいつらとエレベーターなんて乗ったら、集団リンチだろうな。
「――カレン、おまえ先に教室いってろ! オレ、用事思い出したわ」
「え? う、うん」
オレは仕方ないので、階段に向かった。
異世界科、一年の教室は三十九階にある。
もちろん、そこまで普通に歩いて登るつもりはない。
そんなことをしていたら、朝礼に間に合わない。
――オレは周りに誰もいないことを確認すると、|気を集中させる。
全身に気がめぐるのを感じると、オレは一気に階段を駆け上がった!
|気――異世界で剣術を使うときに用いる、体内の魔力のことだ。
入学試験で測られた、魔法耐性とは体外で魔力を使う才能。
剣士耐性とは体内で魔力を使う才能のことだ。
オレは両方の才能があり、小さいころからどっちの能力も訓練してきた。
ちなみに、なぜゲートの外で魔力を使えるかというと――
足にしているブレスレットのおかげだ!
本来は手首にするのだが、見られると色々と面倒なので足首にしている。
このブレスレットはオレの父親が向こうの科学者に無理やり作らせたもので、資格のないものでもゲートの外で魔法が使えるようになる。
オレが十歳になったときに、誕生日プレゼントでくれたものだ。
――オレが父親にもらったもので唯一、大切にしているものでもある。
もちろん、これの存在がバレたら極刑である。《《父が》》。
おそらくエレベーターよりも速く三十九階についただろう。
――オレはカレンに怪しまれないように、チャイムと共に教室に入る。
どうやら、オレの席は一番後ろの窓際のようだ。そこしか空いてない。
「遅いじゃない、わたし言い訳、色々と考えちゃったんだけど?」
前の席はカレンだった。
「なんで、おまえがオレの言い訳を考えるんだよ?」
「な、な、なんでって、幼馴染だから、しかたなくに決まってるじゃない! 同じ中学なんだし、わたしの印象も悪くなるかもしれないし……」
そんな会話をしていると、教室のドアが開かれ先生が入ってくる。
黒髪のロング、身長は165くらいだろうか、若い女性の先生だった。
オレは一番後ろに座っているから分かった、男子全員の視線が先生の胸に向かっていることが……
「――今日から、君たちの担任になる鷹宮ゆなだ。よろしく!」
ゆな先生は続ける。
「この学校の売りは自由な校風だ、授業内容も先生に一任されている。今日は初日だからな、自己紹介と係決めが終了し次第、解散とする」
中々、話の分かる先生だ。今ので生徒からの好感度はかなり上がっただろう。
「まずは私からだな。さっきも言った通り、名前は鷹宮ゆなだ。鳥の鷹に宮殿の宮で鷹宮、そして平仮名でゆなだ」
名前の説明カッコいいな。オレもなんか考えるか。
「去年まで、向こうの、つまり異世界の学校で教師をやっていたが、今年からこの学校で教師をすることになった。君たちと同じ一年生というわけだ、よろしく! 何か質問は?」
「はい! 先生は何でこっちの学校で働こうと思ったんですか?」
オレの隣にいるやつが質問した。バカそうなやつだ、よくこの学校に入れたな。
「いやぁ、向こうの学校で軽く問題起こしちゃってな、追い出されてしまったんだ」
問題? 体罰とかだろうか、たしかにカッコいい系だが……
「えっと、君たちには関係ないことなんだが、生徒と、その―― そういう関係になってしまってな。それで追い出されてしまったんだ」
関係、めっちゃあるじゃん……
男子ソワソワしちゃってるよ―― 女子の目は死んでるな、おそらく。
「あ、別に法律違反とかじゃないぞ? 向こうに未成年と交際してはいけないという法律はないからな?」
全然フォローになってねぇ。
「法律はないんだが、人数がちょっと多すぎて、ほら私、女の子もいけるから! 剣術を教えていたんだが、授業どころではなくなってしまってな。それで問題になってしまったんだ」
女子の目がさらに冷たくなるのを感じる――
「あ、でも、もう反省して懲りている。今は薄い本で我慢しているから大丈夫だ!」
全然、反省してなかった。
オレの隣のやつが再び質問する、
「剣術を教えていたのに、何で魔法クラスの担任なんですか?」
他に聞くことがもっとあるだろ!!
「――それは、一身上の都合だ」
ゆな先生は顔を赤らめながら言った。
絶対、この中の誰か狙ってるじゃん……
異世界科Aクラスの初授業は、先生の好感度が男女で真逆になるところから始まった。