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何故か殿下がそこにいます。




遂にやってきた魔力検査の日。今はステラと言う存在があるのでできれば入学したいが......いや、ステラには洞穴で暮らすよう言ってあるし、入学しなければ攻略対象たちとそもそも出会わない。


でも不正もできない。手を触れるだけなのだから。魔力が微量ながらあれば学園行きは確定。


あんなに魔法を使っておいて、魔力がないとは思えないよなぁ.......

いっそのこと、魔力切れ寸前レベルにすればよかったか。そしたら魔道具で感知されにくくなるかもしれない。


教会に着くと見えるのは、私と同じ境遇________つまり平民の子供たちがずらり。

皆自分に魔力はないかと目を輝かせている。


「はあ.......」

これから来る運命にうんざりしながら、列に並んだ。



全員が集まると、魔力検査が始まった。


この水晶のような魔道具が検査に使われるものだ。

手を触れた対象に魔力があれば光を放ち、そうでなければ光らない。


光った場合、光の強さで魔力の多さを表し、色で得意属性を表す。


といった感じなのだが、今のところ魔道具は光る気配すら見せていない。


「本当に光るのだろうかね?」

後ろに並んでいた少年が問いかけてきた。背が頭一つ分ぐらい大きい。

フードを目深にかぶっているので、表情などは分からないが、声からこの状況を楽しんでいるのだろうと拝察できる。


「恐らく光るでしょうね。宮廷魔導士の創ったものですから。」

この辺りでは見ない顔なので、一応敬語で答えておく。

「........っくく.......そうだね。」

なぜか少年はクックと笑っている。その余裕綽々な声音と仕草から、ある可能性が浮かんできた。


「貴方はもしかして______」


言いかけた時、丁度出番が来た。

少々苛つきながら魔道具に手を重ねると......


「うおあっ」

可憐な少女の見た目にそぐわぬ声が出た。まあまばゆい光を魔道具が放っているので致し方なかろう。


キルティーは最強で、裏ルートでこの検査の様子も見ていたことから、大丈夫だと思ったのだが.....



「.........ふふ.......こりゃあ面白いっ!」

後ろにいた少年が大声で笑い始めた。弾みでフードが取れると、そこにいたのは......


「.........やはり貴方でしたか、ザイル殿下。」

他でもない、ここアルツハイン王国の第三王子、ザイル・アルツハインだった。



「僕を見破るなんて、なかなかだね、君?」

笑いをこらえながらザイルが言う。まあ、貴方の声は前世で何回も聞きましたし。


「.......一つ、貴方だけ、健康状態が明らかに良かった。二つ、ローブなんて言う高い衣服を着ていた。我々平民は、見ることすらかなわない代物だ。三つ、仕草に品があり、平民は到底やらないものだった。四つ、誰もが緊張している場面で、自分がどうなるか分かっているように余裕で寛いでいた。五つ、他の子どもたちが目を輝かせているのに対し、貴方だけ冷めたものを感じた。まるですべてが分かっているかのように、退屈なものだった。........以上が、貴方をザイル殿下だと判断した概ねの理由です。」


ザイル殿下は、一瞬目を丸くした後、

「ふふふ!........君はとんでもない観察力と洞察力があるようだねぇ!」

笑ってそう言った。更に、

「是非とも、学園に通ってもらいたい!父上から推薦状を出せないか頼んでみるよ!」


「.........................は、い........」


ああ、結局はこうなってしまう運命なのか........

入学回避ができなかったことに対し、後悔の念と「こうしておけばよかった」の案たちが次々と浮かんでくるのだった........




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