シークレット・ステラ
______とある森の奥深くの洞穴にて
「.........頑張れ!」
あれから数日。私は卵に魔力を込めまくった。一回目眩がして、魔力切れっぽかったがセーフだ。
そして........卵の殻が割れ始めた。
パキパキ、ピキピキと音がして、足が覗く。
必死に殻を破っているのがよく分かった。
「よしよし、あとちょっと!」
そしてついに.......
「生まれたーっ!」
出て来たのは、とんでもなく神々しいドラゴンだった。
頬のあたりに銀色で星の模様が入っており、全体は金色に包まれている。
よく見ると、少し水色っぽい所もあった。瞳も私と同じ色だ。私が魔力を流した影響かもしれない。
「んー......名前どうしよう.......」
やっぱ星に由縁のある名前に......
「よぉし、今日から君の名は『ステラ』だっ!」
........いや、そのまんまだな。星って意味なんだよ。由縁どころじゃないわ。
まあ、いいか。
それよりも.......
「かわいーっ!」
可愛すぎる。やばい。なにこの破壊力。目がつるつるうるうるしてて最高すぎる。ステラちゃん最高!
語彙が消えるんだが......
「ギャー!」
ステラが可愛く鳴いて、金色のブレスを吐いた。触ると、とても心地よい。癒される。
「あ~~~~!」
なにこれぇ!可愛いうえに賢いし強いって何なのこの生き物!
「家.......持ち帰りたくないな。」
家出するか。よし。
「いや、確か今年で『王立学園エンブレム』に入学......そうしたら寮生活だから......」
そう、皆11歳の時に平民も貴族も魔力検査を受け、適性があればエンブレム学園に入学する。
そしてその魔力検査は........もうあと2日後に迫っている!
「これなら何とか.......出来そうだ!」
竜は成長速度が速いため、2日程度で成体になる場合もある。
そしてその体を縮められるかわからないため.......ここで生活してもらうことになるかなぁ....
「ステラ」
ステラに言い聞かせる。
「あなたの存在が知られたら大変なことになるの。で、その為に暫くここで生活してほしいんだけど....」
すると、どこからか声が響く。
『そう言う奴の記憶全部消せばいいんじゃあない?』
「は?」
驚愕の声を隠すことなんて、出来るはずもなかった.......
*
「あなた喋れたのね。」
少し落ち着いてから尋ねると、ステラはさも当然といったように、
『そりゃあね。竜は大体人語喋れるよ。でも、話すと人がわーきゃーわーきゃーうっさいから、皆隠してるってわけ。』
「へ、へ~.....」
『でも、僕はキルティーが特別な人間でー、僕が話せることについても黙ってくれるって思ったから....特別に、ね?』
「な、なるほど......」
『ってキルティー、大丈夫?さっきから話が一ミリもわかってないって感じだけど。』
何故理解していないのかわからないという表情でステラが問いかけてくる。いや、あんたねえ.....
「そりゃ、今まで話さないと思っていた竜がいきなり話し始めたら話の内容なんて一ミリも頭に入ってこないわよ。」
『そんなもんなのかー........あ、さっき言われた通り、ここで暮らすよ。僕が幼体の時の2日間だけここに来て、魔力供給してくれればいいから。あ、僕は名前を呼ばれればすぐ行くよ。』
「え、え、え.....」
ちょっと訳の分からない話で頭がパンクしそう.....まず契約してないでしょ......
この世界には契約魔獣と言うシステムがあって、契約すると魔獣を使役できるのだ。呼べばすぐ来たり、代わりに戦ってくれたり。契約内容は様々で、また、代償も様々だ。
『ああ、契約してなかったね。じゃ、今からやろうか。』
さっき生まれて来たとは到底思えないほど勝手知ったる様子で契約を始めたんだが.....
『契約内容.......そうだな......僕がキルティーのために何でもしてあげることかな!』
「うえっ?!」
『代償は.......定期的に僕に魔力を供給すること~』
「んん?!」
『よーし、契約終わりー☆』
「はあっ?!」
私が困惑している間に契約が終わってしまった。右手の中指付け根に金色の線がぐるっと指を一周するようについている。
「うわあ........ほんとに契約されてるよ.......」
『よーし、じゃ、キルティーとの契約も結べたことだし、散歩に行ってこようかなぁ....』
「う、うん、行ってらっしゃーい.....」
『キルティーももう帰った方がいいと思うよ?これ以上遅くなると両親が探しそうだし。』
言われてみると、もう日が沈みかけていた。
「やっば!教えてくれてありがと、ステラ!じゃ、また明日っ!」
バタバタと彼女は洞穴を出て行った。
『........いい母親......もう母じゃないな。......いい主に出会えたよ、ほんと。』
静かな呟きは、誰の耳に届くこともなく反響して消えた。