1.王都、エルタで冒険者になる元魔王。
ちまちま更新。
さくさく進行。
「あー、いまの王都ってこんな感じなのか」
ボクは人間側で最大の都市、王都エルタに足を運んでそう呟いた。以前ここへやってきたのは、魔王に就任した三百年前だから、ずいぶんと雰囲気も変わっている。あの頃よりも建物も多くなり、街の中心にある大通りは人でごった返していた。
そんな人々を相手にして、露店なども展開されている。
活気に満ちた彼らの顔を見ると思うのは、魔族の領域との差だった。
「やっぱり、作物なんかはこっちの方が豊富だし。人間たちと友好的に接していた方が、どう考えても得だったんだよなぁ……」
ボクたちの住んでいる場所は、魔力の源となる魔素こそ多いが、その代わり食材などの調達が難しい。自分の就任前は、それこそ力を持ってして人間側から奪っていたのだけど、それでは結局のところジリ貧というやつだ。いくら豊富な魔力があっても、持久戦に持ち込まれたら勝ち目がない。
それに、不要な死者もでてしまう。
だからボクは、血が流れないように改革を行ったのだが……。
「……まぁ、血の気の多いみんなには理解されなかったわけで」
人間の血が微かに流れている、というのも差かもしれないが。
何はともあれ、ボクはボクなりに考えて行動をしたが、支持を得られなかったわけだ。いまさらそれに固執するつもりはないし、後悔もしていない。むしろ大切なのは、三百年の時を経て起きた変化を知ることだった。
「んー、そうだなぁ……」
とはいっても、素性を明かして行動するわけにはいかない。
そう考えたボクは、一つ案を思いついた。
「そうだ。あの場所なら、色々な情報が転がってるかも」
そして、さっと進路を変更して。
ある建物を探し、見つけた。
「……冒険者ギルド。世界各地から、様々な人間の集まる場所!」
そこは、ある意味で世界の縮図とも呼べる場所だ。
国も違えば考え方も異なる人々が、身一つで自由に過ごしている。ここならきっと、いまの人間側に何があるのか知ることができると思った。下手に動いて目立つのも避けられるし、ボクが身を潜めるならとかく都合がいい。
そんなわけで、ボクはさっそく冒険者登録を済ませた。
そして、しばし考えてから――。
「そういえば、ダンジョンはいまどうなっているんだろう?」
王都近辺のダンジョンの情報を得ようと思い、足を運ぶのだった。
◆
「ふーん、ずいぶんと整備されているんだな……」
ひとまずダンジョンの最奥まで到達。
ボクはそこで、周囲の様子を確認してからそう呟いた。やはり三百年前とは、状況が大きく変化しているらしい。最奥はまだ手付かずの箇所も多いが、ここに至るまでの道はある程度整備されていた。つまり以前より、人の出入りがある、ということ。
「魔素の濃さは、それなり。……決して魔物が弱くなったわけじゃないね」
ボクはそう考えながら、思考停止で躍りかかってくるデーモンなどを魔法で屠る。魔族とは異なり、こいつらには思考力というものが欠けているのだ。
捕食対象を発見すれば、相手が誰であろうと飛び掛かってくるのだから。
「ひとまず、状況は分かったかな。戻るかー……!」
収穫らしきものはなかったが、状況を知れたのは良かっただろう。
そう思って、ボクはそそくさと踵を返すのだった。
――が、どうやらそんな自分を見ていた一団があったらしく。
「……デーモンをあれほどまでに容易く? 凄い奴がいるものだな」
そう噂されているのをボクは、まだ知らなかった。
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