表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

プロローグ 魔王、失墜。

新作です。

よろしくです。









「貴方は魔王に相応しくない!!」

「……はぁ…………?」




 ボクにそう言ったのは、右腕として重宝していた臣下だった。

 場所は玉座輝く謁見の間であり、ちょうど他の幹部たちも集合している時の出来事。いわゆる四天王と名高い彼らは、その魔族――ガイスの言葉に最初、困惑していた。もちろん言うまでもなく、ボクだって同じ。あまりに突飛なそれに、間の抜けた声を発してしまった。



「ガイス……どうしたの、いきなり」

「『いきなり』ではありません! 私は常々、魔王様に進言しておりました!!」



 だから思わず、そんな感じで訊ねる。

 するとガイスは目の色を変えて、唾を飛ばしながら叫ぶのだった。




「どうして下等な人間たちと、我々魔族が対等に接しなければならないのですか!? 奴らは弱い。それならば、いっそのこと蹂躙して何もかも奪えばいい!!」

「……えー…………?」




 その内容というのも、彼から幾度となく指摘されていたもの。

 やれ魔王様は優しすぎるだ、とか。やれ人間なんて取るに足らない下劣な存在だ、とか。どれも生産性の欠片もない意見だったから聞き流していたが、ついに不満が爆発したらしい。ガイスは鼻息荒くこちらに詰め寄ると、我慢ならないといった表情で訴えてきた。




「それができない臆病者なら、貴方は魔王に相応しくないのです!!」――と。




 まるでボクの統治が、落第点であるかのように。

 いいや、彼にとってはそうなのだろう。そして同じく、そう考える者は一人ではなかったらしい。四天王の一人はガイスに呼応するように立ち上がり、少しの沈黙を置いてからこう言った。



「そ、そうだ! リュード様は優しすぎる!! 不適応だ!!」

「…………そ、そうよ! なぜ私たちが、人間に配慮しなければならないの!?」

「リュード様は臆病者の意気地なしだ! 魔王を辞するべきだ!!」



 すると、あっという間に。

 四天王以外の魔族たちもまた、異口同音にボクを批判し始めた。やがてそれは大きな波となって、辞めろ、という大合唱になる。

 その様子を見て、ボクはしばし黙った後にため息をついた。

 どうやら、そろそろ潮時らしい。




「分かった。分かったよ。……辞めるよ、魔王」




 いい加減、ボクも限界だったのだ。

 いっそ清々するし、これを機に自由になっても良いのかもしれない。そう考えてボクが宣言すると、ついには拍手喝采が沸き上がった。まるで圧政者を追いやったかのように。彼らの血の気に満ちた表情を見て、ボクは改めてこう思うのだった。




「……あーあ、どうなっても知らないからね」――と。











 ――かくして、ボクは一介の魔族に戻ったわけである。

 今まで数々のしがらみに囚われていた心は解放され、深呼吸をすると胸がとにかく気持ちよく感じられた。やっぱり、自由って素晴らしい。

 そう思いながらも、ボクはこれからについて考える。




「さて、これで自由の身になったわけだけど……」




 果たして、いったい何をしようか。

 いくつか考えはあるが、いま一番したいこと、といったら……。




「人間側のこと、もう少し知りたいかな……」




 今さら、自分を見限った魔族の地にいる必要もないだろう。

 そう考えてボクは、魔族特有の赤い瞳の色を偽装し、歩き始めるのだった。




 


面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!




もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。

創作の励みとなります!


応援よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ