【番外編】~マリーナの自分語り~
私の名前はマリーナ。
私の家はルフト王国の王都で食器やカトラリーなどのテーブルウェアを扱うお店を営んでいるの。
庶民街にありながら、貴族の方が買いに来たこともある人気店なんだから!
母は私を産んで間もなく亡くなってしまって、それからずっと父と2人で暮らしているわ。
父は本当に私に甘く、おねだりすればなんでも買ってくれた。
マリーナは本当に可愛いね、お姫様みたいだよって、いつも沢山褒めてくれたの。
私も、恋愛をテーマにした大衆小説が好きだったから、
そこに出てくるお姫様達のように、
いつかは王子様が必ず迎えにくるんだって信じて疑わなかったわ。
それにそうなれば、お父様にも楽をさせてあげられるし・・・ってちがうわよ!今のは聞かなかったことにしてちょうだい!!
まぁとにかく、
私だけの王子様に迎えに来てもらいたいと思っているの。
だけどそれには2つだけ、問題があったの。
1つは、王子様と出会う方法がないってこと。
そう、例え多少人気があると言っても、
所詮うちの店は庶民街にある庶民のお店。
お城の舞踏会に呼ばれて見初めてもらうなんてことはありえない。
じゃあ王子様があちらから来てくれるかといえば、それもまた絶対にありえない。
前に1度だけ貴族の方がお店に来たことがあるって、ひいおじいちゃんが言ってたけど、いったいそれって何十年前の話よ。
そもそも普通王族や高位貴族の方々はそれぞれお抱えのデザイナーや工房を持っているものだから、
どこかのお抱えになれるほどの腕前でもない限り、
我が家がお貴族様と接点を得ることは間違いなくないと言えるの。
そして2つ目の問題は、
私は人と話すのがちょーっと苦手だということ。
違うのよ?相手を傷つけようとか、不快にさせようなんて全く思ってないのよ?
いくら親に可愛い可愛いって育てられたとはいえ、多少の分別は弁えてるつもりなの。
でもどうも人と話すとなると、ものすごく緊張してしまって・・・
なんか言おうと思ってることが謎の方向に、キツイ響きを持って口から出てしまうの!!
「お友達になりませんか」が
「仕方ありませんからお友達になって差しあげてもよろしくてよ!?」
みたいな感じで。
先日もお仕事が上手くいかなくて悩んでいるご近所さんに、
「そんなに悩まなくても大丈夫。貴方のこれまでの努力は知っているもの!きっとこれから実を結ぶわ!」
と優しく励ますつもりが、
「いつまでも悩んでいても仕方ないんじゃありませんの?貴方の努力の結果が結局現状なんですもの」
とか言ってしまって、泣かれてしまいました。
うう・・・言葉って難しい・・・。
これじゃあ物語のお姫様どころか、悪役令嬢になってしまうわ・・・。
だからと言って庶民と結婚して一生庶民で終えるなんて絶対イヤ。
なんとかして、絶対に玉の輿に乗ってやるんだから!!!
・・・そんな思いから、私は図書館で聞こえてきた『玉の輿』というワードに、つい軽率に食いついてしまった。
まさか自分を『師匠』と呼ぶ初めてのお友達ができるなんて、この時は全く思いもしなかったのだった・・・。