師匠のお宅訪問。
昨日伺った話によると、マリーナ師匠のお家は図書館からほど近いところで、食器やカトラリーを扱うお店を営んでいるそうです。
私は辿り着いた結論について意見をいただくため、早速お邪魔することにしました。
カランカラン・・・
「こんにちは、失礼いたします」
「いらっしゃいませ」
心地よいドアベルの音とともに、
お髭を生やした柔和な雰囲気の男性が迎えて下さいました。
「すみません。マリーナししょ・・・いえ、マリーナ様はいらっしゃいますでしょうか?」
「おや、マリーナにご用事ですか?
もしや・・・マリーナのお友達で!?」
男性は何故か身を乗り出していらっしゃいます。
「はい。ありがたいことに昨日お友達にしていただきました、フィーナ・テレザリスと申します」
私は失礼に当たらないよう、丁寧にお辞儀をいたしました。
「そうですか!あのマリーナに!ついにお友達が!!
いやあ!それはそれは!」
男性は私の手を取ってぶんぶん振り回しています。
「父親の私が言うのもなんですがね、あの子はとても見た目が良いでしょう?
我が家はあの子の母親が早くに亡くなっているのもあって、私もついつい、甘やかして来てしまいましてね。
それであのような高飛車な娘になってしまったもので、お友達ができずに本人も悩んでいたのですよ!
悩んでいる様子もまた健気でしたがね!
いやーあなたのような立派なお友達ができて良かった!!!」
「は、はぁ・・・」
さすがの私も困惑していると、ズダダダダダと音がして、
「何言ってるのよお父様ぁぁぁぁ!」
スパーン!
マリーナ様がお父様の頭を叩きました。
「なに勝手にベラベラと人のお、お、おともだち捕まえて喋ってるのよ!!!だれが悩んでたですって!?」
マリーナ様はお怒りからか、お顔を真っ赤にしていらっしゃいます。
「だってお前、この間も近所の娘にキツいことを言って泣かせてしまったとか言って落ち込んでいたじゃないか。
小さい頃には遠足で誰もペアになってくれなくて泣いたこともあったし、この間なんて図書館で『友達の作り方』なんて本も・・・」
「ああああああなんで知ってるのよ!!!ってそうじゃなくてそれはたまたま借りてしまっただけでわざとじゃなくて・・・!」
初め呆気に取られていた私ですが、マリーナ師匠とお父様の大変仲睦まじいご様子に、
笑みが浮かぶのを感じながら、成り行きを見守ることにしたのでした。
・・・
少し経って。
私達は同席したがるお父様をなんとか宥めて、近くのカフェへとやってきました。
(マリーナ様曰く、お父様のおっしゃったことは全て忘れるようにとのことでした)
気を取り直して、お茶をいただきながら、私は昨日辿り着いた結論について、マリーナ師匠にお伝えすることにしました。
「・・・という訳で、お教えいただいた本を読んで、まずは自分の見た目を磨こうと思い至ったのです」
「なるほど!そうね・・・!それは一理・・・いえ二理くらいあるわ!!」
マリーナ師匠はうんうんと大きく頷いていらっしゃいます。
師匠にご賛同いただけて、私はほっと胸をなで下ろしました。
どうやら間違ってはいなかったようです。
「どうやって出会うかばかり考えてしまっていたけれど、自分の準備が整っていなければ出会っても無意味だものね」
「はい。私もそう思います。ですがお恥ずかしながら、これまで見た目にもあまり頓着しては来なかったので、どのようにすれば良いか分からず・・・。また図書館に行くべきでしょうか」
私は目下の悩みについて打ち明けてみました。
「いいえ、見た目を磨くのならいい方法があるわ」
マリーナ師匠はニヤリと笑っておっしゃいました。
「美容のプロの所へ行きましょう!」