【番外編】図書館での出来事~司書視点~
番外編です。
読まなくても内容に差し障りはありませんので、飛ばしていただいても大丈夫です。
私の名前はエルン・ヴェスター。
ルフト王国の国立図書館で主任司書として働いています。
実は我が家は代々騎士の家系で、私の2人の兄も王城で騎士として勤めています。
私も幼い頃から騎士になるべく修行を積んではきましたが、どうにも向いておらず、
体も弱かったため家族全員早々に諦めて今に至ります。
まぁ三男なんて家もあまり気にしていませんし。
それでも司書(国家資格)に受かったのだから、多少は認めて欲しいものですが。
さて、そんな少し肩身の狭い思いをしている私ですが、
この司書という仕事には大変やりがいを感じております。
大好きな本に囲まれていることはもちろん、
ここでは子どもも大人も、
男性も女性も、
時には貴族も平民も、
みんな平等に、その時読みたい本を求めてやってきます。
そして私はそんな方々の気分にあった本を探すお手伝いをさせていただけるのですから。
自分語りが過ぎてしまいましたが、
そんな風にこの仕事に誇りを感じている私に、
先日ショッキングな出来事が起こったのです。
私たち司書の間で、密かに人気のご令嬢がいます。
貸出カードによれば、お名前はフィーナ・テレザリス様。
お名前から察するに、あの謹厳実直で有名なテレザリス家のご令嬢でしょう。
ライラック色の髪を編み込んできちんとまとめられ、
ライトピンクの瞳は控えめなお化粧でも映えて見える、
とても可愛らしいご令嬢です。
かなり頻繁に図書館をご利用下さり、
いつも隅で静かに調べ物をされています。
決して目立つ見た目ではないのに、
読書をするその方の姿は、
何故だか目を引きつけるものがあるのです。
私たち司書にもよくお声がけ下さるものですから、
いらっしゃった時にはだれがカウンターに立つか
実は静かな争奪戦が起こっているのです。
その日も争奪戦を勝ち上がった私は、
内心の喜びを隠しながら、何食わぬ顔で
カウンターに立ちました。
そしてその方はおっしゃったのです。
「玉の輿についてのほんはありませんか」
と・・・!!!!
ガタガタン!!!
私だけでなく、何人かの職員が持っていたものを落としたり、
椅子から転げ落ちそうになったりしていました。
「くそっ結局世の中金なのか・・・!?」
「金持ちに生まれてさえいれば・・・っ!!」
同僚たちが禍々しいオーラを放つ中、
私は考えていました。
テレザリス家といえば、先々代の頃に貧困に喘ぐ民を助けたことで
経済的に厳しい時期があったと私の祖父から聞いたことがあります。
現在はそういったことはないと思っていましたが・・・
もしやあの方がその身を差し出さなければならないほど、
内情では金銭的に苦しい思いをしているのでしょうか。
それで自ら玉の輿などについてお調べになっているのでは・・・
私はグッと拳を握りました。
なんと健気なことでしょうか。
私は騎士にもなれなかったただの司書。
なんとかしたくても金銭的にあの方をお助けすることは難しいでしょう。
ですが私は司書・・・!!
あの方の幸せを、本の力で後押ししてみせます・・・!!!
私は決意を込めて、本を探し始めるのでした。
気まぐれに書いた番外編がとても難産でした・・・
ちなみに、彼は完全なるモブです。特に深い意味はありません。