師匠ができました。
「ふむふむ・・・なるほど・・・」
家に帰って、私は早速教えていただいた本を読みました。
元々本を読むのは好きでしたが、今回教えて頂いた本は私の読んだことの無い類のもので、
とても興味深く読み進められました。
「何かお分かりになりましたか?お嬢様」
メイドのローザが私の好きなローズティーを持ってきてくれたのを見て、私は何冊目かの本をパタンと閉じました。
「ありがとう、ローザ。ええ、とても勉強になったわ」
「図書館でお会いになった方・・・マリーナ様でしたでしょうか。そのお方のおかげですね」
「本当にね・・・。マリーナ師匠に会えたのは何よりの幸運だったわ」
私はローズティーを口に運びながら、図書館での出来事を思い返しました。
***
図書館で出会った女性、マリーナ様は、私の「弟子にして欲しい」というお願いに対し、
大変困惑した様子でした。
「で、弟子!?」
「はい。私は浅学の身ですが、玉の輿を目指したいという思いは本物のつもりです。
貴方様は大変博識なご様子。どうか私に、玉の輿についてご教授いただけないでしょうか!?」
私は女性の手を握りしめました。
物事について学ぶ時、書物から知識を得ることももちろんとても大切です。
ですが、やはりその道を行く先達の方々からの『生きた知識』に勝る学びはないと、私は思うのです。
「な、なんだか分からないけど、私だって玉の輿に乗ったという訳ではないのよ!?
乗れたらいいなと思ってるくらいで、そんな教えられるようなことなんて・・・」
「いいえ、貴方様は少なくとも私よりも知識をお持ちであることは間違いありません。
お弟子を取らない主義ならば、ほんの少し、お時間のある時にお会いしてお話をお聞かせ下さるだけでも、構いませんから・・・!」
『玉の輿』というキーワードだけで、複数の書物を選び出して見せた敏腕さ。
私の知らない、玉の輿に関するであろう単語を口になさったことから伺える知識の豊富さ。
この方はきっと、良い師となられる方に違いありません。
私は必死の思いで熱意を伝え続けました。
「どうかお願いいたします・・・!!貴方様のお邪魔はできる限りいたしませんから・・・!!」
「そ、その貴方様ってのやめてくれる・・・?
私はマリーナっていうの。
その・・・弟子なんて大層な話じゃないけど、お、おともだちとしてならお話してあげてもいいわよ・・・?」
なんて謙虚な方なのでしょう。
きっと私が気を使わないように、おともだちなどという優しいお言葉を下さったにちがいありません。
「本当ですかマリーナ師匠!!」
私は嬉しくって、師匠に向けて満面の笑みを浮かべました。
「だから師匠じゃないわよ!!!」
こうして私は玉の輿についてご教授下さる、大変博学で、謙虚な師匠を得たのでした。
拙い小説を読んでくださってありがとうございます。
マイペースに更新していきたいと思います。