殿下の課題。
ガタン・・・ガタン・・・
テレザリス家を出発した馬車は、緩やかに揺れながらどこかへ向かっていきます。
「さて、フィーナ嬢。先日は邪魔が入ってすまなかった。改めて、依頼をさせてもらいたい」
まだ少し状況が呑み込めずほうけていた私を見据えて、トレヴァー皇太子殿下がおっしゃいました。
「はい。お伺い致します」
私はグッと気を引き締め直し、姿勢を正しました。
「俺は知っているかと思うが一応王位継承権第1位の皇太子だ」
はい、当然存じておりますとも。
と言いかけた口を閉ざして、私はこくんと頷きました。
「しかし先日、父上・・・国王から、即位したくば1つ課題をこなせと言われたのだ」
「課題・・・ですか?」
皇太子である限り、一定のお年になれば即位するものだと思っていた私は、首を傾げました。
「ああ。それが、『城下町で起きている問題を解決し、町を発展させよ』というものだったのだ」
殿下は腕を組み、困ったような表情でおっしゃいました。
「まぁ・・・」
城下町の問題、ですか。なんだか難しそうです。小さな問題なら、日頃色々なところで当然起きてはいるでしょうが、街を発展させるとなると余程の問題があるのではないでしょうか。
私もパッとは思いつきません。
私が怪訝な顔をしているのを見て、
「うむ。俺も、この町で治安が悪いという話も、生活が困窮しているものが多いという話も聞いた事がない。一体何が問題なのか見当もつかず、まずは情報を集めることにしたのだ。」
実際に変装してこっそり城下に降りたりもしてな!
と殿下はニカッと笑いました。
殿下の素敵な笑顔に一瞬ドキッとしかけましたが、一国の王になろうというお方がなんと恐ろしいことを・・・とちょっと引いてしまいました。
こころなしか、殿下の隣に座るルイ様の表情も引きつっているように思います。
みなさま、いつもお疲れ様です。
「そこでこの学友であったルイにも協力を仰いでな。共に情報を集めるうちに、あることに気がついたのだ」
「あること・・・ですか?」
「うむ。それは、以前よりも店の数が少なくなったということだ。貴族街はまださほどでも無いが、平民街は閉まっている店が多くなっていた」
私は殿下の話を聞いてハッとしました。
確かに、この数年でお店を畳んだという話はよく聞きました。
扉がしまったままのお店もちらほら見受けられます。
私が気がついたことを感じてか、ルイ様が話始めました。
「フィーナ嬢も知っているかと思いますが、この町の職人は世襲制が多いです。余程大きな店でもない限り、弟子を何人もとるようなことはありません」
殿下がうむ、と頷いて続けます。
「そしてその状態で店主に万一何かあった場合・・・」
「お店が続けられなくなるという訳ですね」
私がいうと、殿下もルイ様も頷きました。
技術を外に出さず守るための世襲制・・・それがむしろ仇となりこの町の発展の妨げとなっていた。
思いがけない話に繋がり、私はぎゅっと胸を抑えました。




