衝撃の一言。
私が1人で混乱してあわあわしていると、その様子を呆れたようにみていらしたマリーナ師匠がおっしゃいました。
「ま、まぁそんなに深く考えなくていいんじゃない?前にも言ったけどあんまり玉の輿玉の輿と狙いすぎるのはモブのすることだし。なるように任せてれば上手くいくものじゃないかしら」
あまりに悩む私が可哀想になったのでしょうか。
マリーナ師匠の声はとても優しく、私を励ましてくださっているようでした。
ね!と念を押して下さる師匠。
そうでした。あまりガツガツと玉の輿を狙い過ぎるのは愚の骨頂。
また私は大切なことを忘れてしまうところでした。
「師匠・・・!ありがとうございます・・・!一生ついて行きます・・・!!」
感極まって師匠の手を握りながらお礼を述べると
「だから師匠じゃないわよ!!」
いつものお答えを頂いてだいぶ心が落ち着くのを感じました。
(師匠は師匠なので呼び方を改めるつもりはありませんが。本当に師匠は奥ゆかしいです。)
「ところで師匠は最近お忙しいご様子でしたがいかがお過ごしだったのですか?」
「全く聞いてないわね・・・。ま、まぁいいわ。私もね、フィーナやエレンたちの話を聞いて色々と考えることがあってね。家業に勤しんでいたのよ」
「家業・・・というとお家の食器店の?」
私は少し考えてから思い出しました。
確かマリーナ師匠のお家は、食器やカトラリーを扱うお店です。
「ええ。貴族向けにも色々と仕入れてきてはいたのだけど、今ひとつでうちも少し行き詰まっていたの。」
師匠はふぅ・・・とため息をひとつつきました。
「でも!ね!エレンやイヴのお店が新しいサービスを初めて大成功したのを見て私も閃いたの!うちも女性向けの食器を扱ってはどうかって!」
先程までとは打って変わって、パッと明るい顔になった師匠がおっしゃいました。
「女性向け・・・ですか?」
確かに聞いたことがありません。
食器は家族で使うもの。男性向け、女性向けと区別があるわけではありませんが、誰が使っても良いようにシンプルな作りのものがほとんどです。
「そう!カトラリーにお花の模様を掘ったり、お皿に絵を施したりね。華やかで可愛らしい、今までにない食器を売り出してみたのよ!」
師匠はとってもイキイキとして話し続けました。
「あとはね、今まで小さい赤ちゃんって、大人向けのティースプーンを使っていたでしょう?これも少し不便だなぁと思ってね、子供向けの壊れにくくて食べやすい食器類も揃えてみたわ!職人さんに無理を言ってね!」
師匠の話す内容を理解するにつれ、私は目を見張る思いでした。
「す、すごいです・・・!さすがマリーナ師匠・・・!!」
そう、これは間違いなく『売れます』。これまでの流れから考えても、女性の「美しくありたい」という思いが強いことは間違いありません。
そしてその思いは自分自身を飾ることだけでなく、自分の身の回りにある物へも向くはずです。
それを先回りして思いつき、実行なさるなんて・・・!!
「ふふん。でしょう!?さすがの私もこれは来たなって思ったわ!で、実際売り出してみたらこれが大当たり!既存のものだけじゃなくて、オーダーメイドで作ってくれって言うお貴族様からの要望まで来たのよ!!」
「えぇ!?貴族からオーダーが!?」
私はとても驚きました。
前に師匠と話していた通り、貴族は自身でお抱えの職人を持っているところも多いです。
そうでなくても貴族街にはオーダーメイド専用の食器店はたくさんあります。
庶民街の、一食器店に、貴族がオーダーに来るなどと、本来はありえないことです。
「そうなのよ!そのおかげで私もお貴族様とのやり取りに強くなってね。中には『うちに来て自分の専属になってくれないか』なんていう人まで現れたのよ」
「え、ええ・・・!?そ、それって・・・」
マリーナ師匠、完全に見初められてませんか!?
職人を引き抜くならまだしも、お店のご息女に対してかける言葉とは思えません。
「うん、そういう事かなって。でも私、今は仕事が楽しいの。女には継がせられないって言っていたお父様も、最近ではお店のこと進んで教えてくれるようになったし」
そう言った師匠は、ニコッと明るく微笑むと、衝撃の言葉を口にされました。
「だからもう玉の輿はいいかなって!私は自分で稼いで生きていくわ!」




