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お久しぶりの師匠。


「それは間違いなく悪役令嬢ね!」



紅茶のカップをそっと置いて、それまで伏せていた目をかっと見開きながら、マリーナ師匠がおっしゃいました。



「やはりそう思われますか?」



私はマリーナ師匠と久々にお茶しながら、先日の出来事を聞いていただいていました。

(もちろん、王太子殿下であることや、重要な内容は伏せつつですが)


ちなみに、王太子殿下との面談は、婚約者さまの乱入でまた後日改めてということになりました。


「間違いないわよ!見た目もそう、婚約者という立場もそう、何よりライバルに対するその上から目線の態度!悪役令嬢以外の何者でもないわ!」



マリーナ師匠は興奮した様子でまくし立てました。



分かります。私も、本で読んでいた『悪役令嬢』が実際に自分の前に現れたと思うと、あの場でも興奮が止まりませんでした。



「フィーナもどんな挑発をされても乗っちゃダメよ。相手の思うつぼだからね!」



マリーナ師匠は、それから悪役令嬢と対峙した場合の乗り越え方などをご教授下さいました。

(お互いに本で得た知識だけではありますが。)



一通りの講義を終えて、乾いた喉を紅茶で潤したマリーナ師匠は、ふぅ・・・と一息つくと感慨深そうに呟きました。



「それにしても悪役令嬢・・・か。フィーナは本当に玉の輿に乗れそうなところまで来ているのねぇ」



「え??」


私はきょとんとしてしまいました。



「だってそうでしょう?身分の高そうな男性が2人。1人には悪役令嬢の婚約者付き。どうみてもシンデレラストーリーの始まりだわ」



私は言われてハッとしました。


た、確かに全く考えていませんでしたが、私、玉の輿を狙っているのでした。


1人は言わずもがなの王太子殿下。地位が高いだけでなく、見た目も、才覚も素晴らしい男性です。


そしてもう1人は、由緒ある伯爵家で皇太子殿下の覚えもよく、こちらも麗しい見た目に優しさも知性も備えたルイ様。



どちらも物語に出てきてもおかしくないような男性、まさに玉の輿にうってつけな人材でした!



なぜ気が付かなかったのでしょう…と自問自答したところで、私は思い当たりました。



「確かにお2人は玉の輿に相応しい素晴らしい男性ですが・・・私はほぼ庶民のしがない子爵令嬢ですし、ましてや婚約者もいる方にお近付きになろうなどおこがましいです」



何より・・・自分がその方々とこ、恋に落ちる?相手も自分を好いて下さる?なんてちょっと想像できません。


というか、想像しただけで頭がパンクしそうです。



「フィーナ・・・あなた何言ってるのよ」



マリーナ師匠がたいへん呆れた顔でこちらをご覧になっています。



「玉の輿に乗るのがあなたの目標なんでしょ?身分の高い男性と結ばれないと玉の輿って言えないじゃないの」




私はがーーーん!とショックを受けました。


そ、そうでした・・・。玉の輿ってそういうものでした・・・。



玉の輿とは身分のある方と出会ってなんやかんや結婚して終わりだと思っていましたが、そのなんやかんやが重要なのでした。


え、ということは、私が王太子殿下やルイ様(だけとは誰も言っていませんが)と、物語のような、あんな、れ、恋愛をしなくてはならないのですか・・・!?


誰が!?私が!?



私は新たな問題に直面して頭がぷすぷすとパンクするのを感じたのでした。


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