宝くじ。
「宝くじ・・・?」
皇太子殿下とルイ様が声を合わせて聞き返してきました。
お2人とも、何だかポカーンとしているようです。
「はい。馬車を賞品にして、1口いくらというくじを販売するのです。くじには番号が書いてあって、販売期間が終わったあとに、当たりの番号をサイコロか何かで決めて発表します。」
「当たりの番号のくじを持っていた者に、馬車が当たる、という訳ですか・・・」
ルイ様がううむ、と手を顎に当てて考えながらおっしゃいました。
「はい。そしてくじは何口からでも、何口まででも買うことができます。もちろん、貴族も、庶民も。
当然たくさん買えば当たる可能性は高くなりますが、こればかりは運なので、1口しか買っていない方にも当たる可能性はあります。
それにくじのお金は全て教会に寄付すると予め言っておけば、寄付をしたいと思って買ってくださる方も増えるでしょう」
「なるほど・・・それなら確かに公平と言えるな」
皇太子殿下も腕を組んで頷かれています。
「実は遠い国の伝記で似たようなアイディアを行った方の話を読んだことがあるのですが、その場合は賞品の金額のおよそ5倍以上の売上が集まったのだそうです」
それを真似しただけなんです、と私は苦笑いして言いました。
「5倍以上・・・」
ルイ様が驚かれています。
「ふむ・・・教会へ寄付をしたいという民の純粋な好意も、馬車が欲しいという下心も同時に満たしつつ、寄付金もただ売るのより増える・・・」
皇太子殿下が目をつぶりながらおっしゃいました。
「さらに当たり番号の発表を王都の広場など目につく所で行えば、不満も出ないでしょうし出店などでさらに経済が潤うかもしれませんね」
ルイ様が付け加えておっしゃいました。
すると下を向いて目をつぶり、表情の見えなかった皇太子殿下が
「くく・・・くくく・・・」
「で、殿下?」
「はーっはっはっはっは!宝くじか!面白い!馬車をくじの景品にするとは!」
突然顔を上げて大笑いし始めました。
や、やっぱり教皇様の馬車を宝くじはまずかったでしょうか!?
不安になった私はルイ様を振り返りましたが、ルイ様はにこやかに微笑まれています。
「フィーナ嬢!礼を言う!王城の有識者でも解決できなかった問題をこうも簡単に解いてしまうとはな!」
皇太子殿下は愉快そうに笑い続けています。
「ルイ!お前の言う通りだった!フィーナ嬢は稀に見る才女だ!」
皇太子殿下がおっしゃると、ルイ様は少し呆れた表情をなさいました。
「だから言ったでしょう。こんな試すような真似しなくても大丈夫だって」
試す?私試されていたのでしょうか??
私は首をこてんとひねりました。
「うむ。しかしおかげで良いアイディアと巡り会えたでは無いか」
皇太子殿下はまたははは、と笑ってから、私に向き直りました。
「フィーナ嬢、実は私はある仕事を頼める人間を探していた。その為にルイに頼んで情報を集めていたのだ」
「下町の話から、フィーナさんが適任じゃないかと進言したんだけど、殿下が人の話だけじゃ信用出来ないって言われてね」
それで今回私を呼んで、『テスト』をしたのだそうです。仕事を任せられるのかどうかを試すための。
私は「は、はぁ・・・」と少しほうけてしまいました。
「悪かった、フィーナ嬢。貴方の才を見込んで頼みたいことがある。聞いてはくれんだろうか?」
皇太子殿下は申し訳なさそうな顔で私に謝られました。
どうやら、ここからが本当の本題のようです。




