玉の輿について調べましょう。
ローザにアドバイスをもらった私は、早速
『玉の輿』について調べに行くことにしました。
「調べものと言えば図書館ですね!」
質素倹約がモットーの我が家にとって、本は買うものではなく借りるもの。
ルフト王国には大きな図書館が2つあります。
1つは王城図書館。その名の通り王城の敷地内にあり、立ち入るには許可が必要です。
私は入ったことがありませんが、王国内で最も蔵書数が多く、貴重な古書なども沢山あるのだとか。
そしてもう1つがこの国立図書館。
蔵書数は劣るものの、市井にあるだけあって庶民的な大衆書の品揃えも多く、一般書から専門書まで幅広く備えている大きな図書館です。
私はいつもの通り(徒歩で)図書館に入ると、顔見知りの司書さんに話しかけました。
「すみません。玉の輿についての本はありますか?」
ガタガタン!
何人かの職員さんが物を落とされました。
「た、たまのこしですか!?!?」
あら、静かな図書館で大きな声はいけませんよ。
いつも落ち着いていらっしゃる司書さんが、珍しく狼狽えています。
やはり玉の輿にはなにか深い謎があるのでしょうか。
玉の輿、恐るべしです。
司書さんは「・・・調べてまいります」と言って奥に行ってしまわれました。
それにしても・・・
玉の輿。
お金持ちの男性をつかまえて結婚する。
・・・それだけなら政略結婚でも何とかなりそうな気がします。
私の友人にも、悲しいことですがご実家の資金繰りが上手くいかず、
資金援助のためかなり年の離れた方の第3夫人として嫁いだ方がいました。
幸いにも旦那様が良い方で、孫のように可愛がられていると伺いましたが。
政略結婚で済むなら、私ではなくお父様に遺言を残されれば良かったのではないでしょうか。
・・・いえ、あの聡明なおばあさまが、私にだけ、残された遺言。
そんな簡単な話ではないはず・・・
「ねぇ」
そんなことを考えていると、突然声をかけられました。
「はい、なんでしょう」
声のした方に振り向くと、
ストロベリーブロンドの髪がとても綺麗な、可愛らしい女性がいらっしゃいました。
「あなた、玉の輿をねらってらっしゃるの?」
女性の言葉に、私は少し目を見張りました。
先程の司書さんとのやり取りが聞こえてしまっていたのでしょうか。
「はい、なんとか達成出来たらと思っているのですが、なにぶん不勉強なもので。まずは玉の輿とはなんたるかを学ぼうと思っているところなのです」
「そ、そう・・・よく分からないけど真面目ね・・・」
先程まで、少し居丈高に見えた女性が、なんだか呆れているようにおっしゃいました。
「いいわ、私のおすすめの本を教えてあげる。ついてきなさい」
女性はくるりと身を翻すと、一般図書の方へ進んで行かれました。
「私のおすすめはこの辺りね。」
女性は大変親切なことに、いくつかの本を私に教えて下さいました。
「これを読んで、私もいつか絶対に玉の輿に乗ってやるって気持ちになったの」
「まぁ、そんな貴重な本をお教えくださるなんて・・・ありがとうございます」
私は感激しながら本を受け取ります。
そして女性はおっしゃいました。
「あとね、玉の輿をねらってる、なんて口には出さない方がいいわよ。ねらって玉の輿に乗ろうとするような人は『悪役令嬢』か『モブ』扱いで相手にされないから」
あくやくれいじょう?
もぶ??
早速知らない単語が出てきました。
やはり、私は玉の輿について無知。
不勉強にもほどがあります。
しかしこれは千載一遇のチャンスなのでは・・・!
「私を弟子にしていただけませんか!?」
私は女性の手を取ってお願いするのでした。