孤児院への道にて。
またまたしばらく経って。
孤児院での『学校』はだいぶ軌道に乗ってきました。
とは言え、ルールや指導の見直しは常に必要で、私は今日も孤児院に向かって歩きながら、
問題点や改善点を考えていました。
「うーん・・・子どもたちが飽きずに新しいことを学んでいくには・・・」
ブツブツと言いながら歩いていると・・・
「フィーナさん!!」
どこからか、声をかけられました。
その声に顔を上げ、キョロキョロと辺りを見回すと、私の近くに止まった馬車の窓から、
以前学校であったルイ・オーウェン様が顔を覗かせていました。
「ルイ様!こんにちは」
私が挨拶すると、ルイ様は馬車から降りて近づいてきました。
「こんなところで何をしているの?見たところ護衛も従者もいないようだけど・・・」
今度はルイ様が当たりをキョロキョロと見ています。
「孤児院へお手伝いに行くところです。近くですし、普段から護衛はつけていませんので」
「え、従者も?ていうか馬車はどこに?」
「?ですから、近くなので」
「え?」
「?」
「まさか歩きってこと?」
「そうですが?」
「えぇー・・・」
なぜだかルイ様は少し呆れているようです。
心外です。この距離を歩けないとでも思われているのでしょうか。
「私、足腰には自信がありますよ?」
私が付け加えると、
ルイ様は少し驚いたように目をぱちぱちさせてから、プッと噴き出しました。
「いや、そういうことじゃ・・・あははは、フィーナさんって面白いね」
私は余計に????と首を傾げました。面白いことを言ったつもりはありませんが・・・。
「僕もちょうど孤児院に向かうところなんだ。せっかくだから、ご一緒してもいいかな?」
ルイ様はそういうと、控えていた御者に馬車を返すよう指示を出しました。
どうやら一緒に歩いて向かわれるようです。
「構いませんが・・・」
ルイ様こそ、護衛がいなくて大丈夫なのでしょうか。
ほぼ庶民的な私と違って、由緒ある貴族の方ですが・・・。
そんな心配が顔に出ていたのか、ルイ様は
「大丈夫。いざとなったら僕とフィーナさんくらいは守れると思うよ」
とおっしゃいました。
私たちは2人で歩いて孤児院に向かいました。
「視察・・・ですか?」
「ああ。とある方のご命令でね。今度は孤児院で新たな試みが行われているようだということで、調べてくるよう言われたんだ」
ルイ様は歩きながら教えて下さいました。
新しい試みと言うと、学校のことでしょうか?
「なんでも、今向かっている孤児院から始まって、今では王都全体にその試みが広がっているらしいんだよね」
「まぁ、そうなのですか?」
私は驚きました。王都全体とは、なかなかの規模です。
さすがに学校のことではなさそうだ、と思いながらお話を伺いました。
「でもフィーナさんにたまたま会えて良かったよ。急に知らない人が行っても子どもたちが警戒してしまうだろうし、それに馬車で仰々しく行ったら余計に怖がらせてしまったかもしれない」
そう言ったルイ様は、
「貴族のご令嬢が、歩いて孤児院に行くなんて思いもしなかったけどね。」
と続けながらまたくすっと笑いました。
「我が家は貴族とは名ばかりの庶民みたいなものですから。それに私には幸いにも沢山歩ける立派な足が2本もついてますので」
私が言うと、ルイ様は今度はあははは!と声を出しておわらいになりました。
「学院ではとても真面目で近寄り難いように思ってたけど、親しみやすい方だったんだね。」
涙まで浮かべながらお腹を抱えて笑うルイ様に、
今度は私が目をぱちぱちさせて驚く番でした。




