子どもたちに勉強を。
それから数週間、私は頻繁に孤児院に通って、『先生』になっていました。
小さな子には絵本で文字に親しむことから始め、
読めるようになったら、より小さな子に読んであげられるように練習する。
文字がだいたい読めるようになったら、丸や三角で鉛筆の動かし方を練習し、徐々に文字をひとつずつ学んでいく。
ビー玉で数の数え方を遊びながら覚え、
お買い物ごっこでお金の扱い方を覚える。
私は自分なりに文字の読み書きや、計算のやり方を楽しみながら身につけられるような仕組みを考えてみました。
そしてそれを早く身につけられそうな、少し年上の子ども達に指導し、
身につけられた子から他の子どもたちにも教えてもらいました。
またそろばんなど仕事をしていくのに必要な知識については、エレンさんやイヴさん、そしてマリーナ師匠がお仕事の隙間を縫って指導に来てくださいました。
そして最も大切なこととして、
全ての勉強を始める前に、シスター・セシリアから子どもたちへこれらの勉強がどんな意味を持つか、自分の将来にどう関わってくるかを話して頂きました。
これまで学ぶことに飢えていたかのように、子どもたちは我先にと頑張って勉強しているようです。
孤児院を学校に、という言葉のとおり、私は普通の学校のように時間割を作成し、勉強だけでなく遊びや運動、休息もきちんと取れるようにしました。
私が来られなくなっても、仕組みとして残るよう意識したつもりです。
「たった数週間でこんなに身につくなんて・・・」
シスター・セシリアは、子どもたちの手習い帳を見ながらおっしゃいました。
「普通の学校と違って、24時間ともにいる子どもたちが教えあっているのですから効果も高いのかもしれません」
私も手習い帳を見て、驚きました。
数週間前には1文字も書けなかった子どもたちが、中には文章をかける子まで出てきていました。
「ですが、シスターの、子どもたちに学んで欲しいという気持ちが伝わったのが一番の理由だと思いますよ」
私はふふ、と笑って言いました。
「フィーナさん・・・。」
シスターは少し涙ぐんでいます。
「本当にありがとう。あなたが来てくれたお陰で、この孤児院の未来が開けたような気がするよ。」
シスターはそういってから、少し俯いて何かを考えているようでした。
「どうかされましたか?」
「いや・・・ねぇ、フィーナさん。他の孤児院のシスターたちに、このノウハウを教えてやってもいいかねぇ?うちだけじゃなくて、孤児院はどこも同じ悩みを抱えているんだ」
私はにっこりと微笑みながら答えました。
「勿論です!勉強の機会は誰にでも平等に与えられるべきですから」
まだまだこれから忙しくなる。私はそう思って、気を引き締めるのでした。




