玉の輿ってなんでしょう。
「ねぇ、ローザ」
「はい、お嬢様」
私は幼い頃から仕えてくれている我が家唯一のメイドであるローザを呼びました。
ローザは私を産んですぐ仕事に復帰した忙しい母に代わって、祖母と共に私を育ててくれた言わば第2第3の母です。
ちなみに執事があと1人います。使用人は以上です。倹約家家族ですので。
「たまのこし、ってどうやったらなれるのかしら?」
「はい???」
***
玉の輿。一般に、女性が身分やお金のある男性と結婚することで、裕福な立場を得ること。
・・・
「いいかい・・・おまえは見た目も悪くないんだし玉の輿を狙いなさい・・・目指せビックドリーム・・・!!」
親指をグッと立てて、いいお顔であちらへ旅立って行ったおばあさまが思い出されます。
真面目、誠実、堅実がモットーの我が家において、最も縁遠いと言っても過言ではない言葉のはずです。
というかおばあさまあんなキャラだったでしょうか。
私は混乱しました。
今際の際の妄言と、忘れてしまうこともできたのでしょうが、
敬愛するおばあさまが最期に残して下さった言葉です。
きっと何か意味があるに違いありません。
少し真剣に考えてみることにしたのです。
しかし自分ではどうにもピンと来ないため、とりあえず信頼するメイドのローザに聞いてみたという訳です。
***
「実は、おばあさまの遺言なの」
「はい????」
ローザが同じことしか繰り返さない人形のようになってしまいました。
無理もありませんが。
私は、遺言の内容について詳しく伝えました。
「・・・という訳なの。内容が内容だけに、お父様やお母様もショックを受けてしまわれるのではと思うと、安易にご相談できなくて」
「そうですね・・・特に旦那様は卒倒されるかもしれません」
ローザはうんうんと頷いています。
「申し訳ありませんお嬢様、私も不勉強なもので玉の輿については詳しくありません」
ローザは本当に申し訳なさそうな表情をしています。
「ですからまずは書物などで情報を集めてみるのはいかがでしょう?」
「それはいい考えだわ!!」
私はパチンと手を叩きました。
・・・余談だが、
テレザリス家のものはメイドまでも真面目であった。
また厳しい経済状況の中で、3人の子供を立派に育てあげ、結果的にテレザリス家の復興を果たした祖母は、
もはや敬愛を通り越して畏怖の対象ですらあった。
そんな祖母の遺言と言われてしまっては、一メイドが突っ込む訳にはいかない。
というより思いつきもしない。
それだけ、フィーナの祖母の権威は一族の中で強固なものだったのだ。
こうしてフィーナは、まずは真面目に、玉の輿について調べてみることにしたのである




