学院にて。
イヴさんのお店に伺ってから少し経って。
私は久しぶりに王立学校であるヴァージル学院へ足を運んでいます。
もう卒業に必要な単位は取り終わっているので、今学期は授業がありません。
ですが今日は手続きが必要な書類があり、久しぶりにやってきました。
「ええと・・・あとはこの書類を事務室に届けて終わりです」
私はいくつかの書類を手に廊下を歩いています。
・・・なんだか、久しぶりに来たからなのか、とても視線を感じる気がします。
ジロジロとまではいかないものの、チラチラと視線を向けてくる方が多いような・・・
そんなふうに考えながらろうかを歩いていると、
ドンッ!
「きゃあ!」
「うわ!」
私は角から来た方に気が付かず、ぶつかって転んでしまいました。
「あいたたた・・・」
「ごめんね!大丈夫?」
慌てた様子で手を差し出して下さった方にお礼を言いながら手を取りました。
「ありがとうございます・・・。申し訳ありません、よそ見をしていました」
ふっと相手のお顔を見ると、確かこの方は・・・
「こちらこそ本当にごめん。僕も考え事をしていて、注意不足だった。」
「とんでもありません。ルイ・オーウェン様」
「僕の事知っているの?」
ルイ様は驚いたお顔で私を見ました。
「生徒会室で何度かお見かけ致しましたので。申し遅れました、私、フィーナ・テレザリスと申します」
私は姿勢を正してカーテシーをしました。
ルイ・オーウェン様は伯爵家のご令息です。
また大変成績優秀な方で、いつも学年です1.2を争う順位を取っていらっしゃいます。
その優秀さから生徒会への入会を請われ、副会長をお務めになっていました。
「フィーナ・テレザリスって・・・ええ!?あのフィーナさん!?」
ルイ様は先程よりも激しく驚かれています。
何故でしょう・・・。
ちなみに私は、生徒会に時々事務仕事をお手伝いしに行っておりました。
ですが部屋の隅で真面目に作業をこなすのみでしたので、ルイ様とは挨拶程度しか交わしたことはありません。
「驚いた・・・なんだかだいぶ雰囲気が変わったね?」
前はもっとこう・・・かっちりしていたような・・・
と呟きながら、ルイ様はまじまじと私の姿を見ています。
なるほど、そういえば私はここ数日でだいぶ見た目を変えることに成功したのでした。
もしかしたら周りの方も、以前の私との変化に驚いてこちらを見ていたのかもしれません。
「はい。少し気分転換に」
「へぇー、とても似合ってるよ。女性は服やお化粧で別人のように変わってしまうのだね」
はい、と拾ってくださった書類を渡して下さいました。
「もしかして・・・平民街で話題になっているお店に行ったのかな?」
「話題、ですか?」
私は首をひねりました。
「うん、実はここ最近平民街が賑わっているという話を耳にしてね。どんなものか調査してくるよう頼まれてるんだ。」
ルイ様はおっしゃいました。
「何か面白いアイディアを考えたお店があるとかでね。それにあやかろうと似たような店舗が出たり協力を申し出る店舗が出たりと平民街全体が活気づいているそうなんだ」
「そうなのですか・・・それは知りませんでした」
私はエレンさんのお店とイヴさんのお店くらいしか行っていませんでしたので、そのような事になっていたとは知りませんでした。
「そっか・・・そのお店に行ったのなら話を聞きたいと思ったんだけどね。仕方ないから自分で調査してみるよ」
ぶつかって本当にごめんね、と言いながら、ルイ様は歩き去っていきました。
よく分かりませんが、平民街が賑わうのはとても良いことです。
私は事務室へ向かうのでした。
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