誰もが美しくなれるお店に
「なんかこの流れ見たことあるわ・・・。フィーナ、どういうことなの?」
呆気に取られてポカーンとしている店員さんの代わりに、マリーナ師匠がおっしゃいました。
「はい!もっともっと多くの方にお洋服を楽しんでいただくために、お洋服を販売ではなく貸し出すんです!しかも店員さんの事前のコーディネート付きで!」
私は思いついたことを聞いていただくことにしました。
「いくつか決まり事は作る必要があると思いますが、貸し出しなら販売より安く済ませられると思うんです。あとは、イベント事の当日だけ貸し出すなど1日だけの貸し出しなら、もっと気軽に使っていただけるかもしれません」
「なるほど、確かにそれなら買うより安く気軽に試せそうね!」
マリーナ師匠も頷いています。
「もし汚してしまったら買取り、もしくは罰金など決めれば、皆さん気をつけて着て下さるとも思うんです。あとは気に入った洋服は個別に買取ができたり、逆に気に入らないものは期間内なら交換出来るとすれば、色々な服が試せるかもしれません」
「着古していない服が着られるなんて、それだけで贅沢なことだものね・・・!それはみんな喜ぶと思うわ!」
私とマリーナ師匠が話していると、
「・・・写真屋さんと協力して、貸し出した衣装で写真だけとる、なんてのもいいかもしれません・・・」
ボソッと、店員さんがおっしゃいました。
「それいいわね!」
「それも素敵です!」
私とマリーナ師匠が声を揃えて言うと、店員さんはパッと顔を上げました。
「それ、すごいアイディアです!!人の着た服なんて売れない、とお貴族様ベースで考えてしまっていたけど、そっちの方がこの街でも受け入れられそう!!」
おっとりした口調から一転して、店員さんは興奮した様子でおっしゃいました。
「ありがとうございます!えっと、私、イヴと言います!お嬢様方、もっと詳しく伺ってもよろしいでしょうか!?」
今度は逆にガシッと私の手を掴んできたイヴさんに、私はニコッと微笑んで大きく頷き返すのでした。
お話を伺うに、イヴさんのお家は元々貴族街でブティックを営んでいたのだそうです。
貴族はオートクチュールが当たり前ですが、既成の可愛らしい服を安く平民の方々にも着てほしいと、独立してこのお店を開いたのだそうです。
しかし現実は先程のお話の通り理想と異なってしまい、お洋服がほとんど売れず困っていたのだとか。
私たちは、改めて自己紹介をしつつ、お店の方向性について話を進めました。
「あ、そうだわ!」
マリーナ師匠がパチンと手を打ちました。
「ねぇ、エレンのお店で意見を貰ったらいいんじゃない?あそこは女性も集まるし」
「さすが師匠!いいアイディアです!!」
エレンさんのお店なら、美しくなりたいと思う女性が沢山集まっています。
いい意見を出して下さるに違いありません。
「本当に・・・ありがとうございます・・・!!」
涙を浮かべながらお礼をおっしゃるイヴさんを連れて、私たちはエレンさんのお店に向かうのでした。