表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/37

お洋服

リィン、リィン・・・


優しいドアベルの音が響きます。



「いらっしゃいませ~」



カウンターから、おっとりとした優しげな女性の声が聞こえました。

瑠璃色の髪に、水色のワンピースを軽やかに着こなした女性です。



「こんにちは。あの、私たち、美しくなるための方法を勉強しているところでして。お洋服選びについてご助言いただきたく伺ったのですが・・・」



私はズバリ、要件をお伝えしました。

後で師匠が「は、はっきり言うわね・・・」とちょっと引いているようです。



「あらぁ~、それは素晴らしいことですねぇ~。ではこちらへどうぞ~」



私の話に特に動揺した様子もない女性は、私たちを店内奥のカーテンがひいてあるスペースへ案内して下さいました。



「美しくなるために、自分に合った洋服を身につけるのは必須ですよ~。」



言うなり女性は、私たち2人の身体をしげしげと舐めまわすように見つめ始めました。



「ふんふん・・・こちらはライラック色のウェーブがかかった髪にローズピンクの瞳。骨格はウェーブ型でバストは・・・」


女性は何事かをブツブツ言いながらいつの間にか取り出したメモを走らせています。

あら、なんだか既視感が・・・。



「こちらは・・・ストロベリーブロンドのボブカット。サファイアブルーの瞳に、骨格はストレートかな。バストとウエストは・・・」




「なななななんですの!?いきなり!!」



マリーナ師匠は顔を真っ赤にして叫びました。

突然の事で混乱しているようです。



「あら~失礼しました。その方に似合う洋服をご提案するためには、体型の確認が必要なもので・・・」



つい我を忘れて、と、女性はおっとりと謝罪して下さいました。



「でもこれでいくつかおすすめさせていただけそうですよ~。お持ちしますので着てみてください~」



なるほど、このカーテンはここで試着するためのものなのですね。

よく考えられています。


「まずそちらのお姉さん~。ブラウスをかっちりと着すぎですね~。1番上までボタンを止めて、紺の膝丈のスカートなんて、まるで事務員です~」



「じ、事務員・・・!!」


私はガーーーーン!と本日二度目のショックを受けました。


「そちらのお嬢さんはゴテゴテ飾りすぎですね~。フリルの上にリボンにバラは飾りすぎです~。色味もそれぞれが主張し過ぎではっきり言ってダサいですね~」



「だ、ダサい・・・!!!」


マリーナ師匠も傍目から見ても分かるほどガーーーーン!とショックを受けていらっしゃいます。



「お2人ともヘアスタイルやメイクはお似合いなのに服と釣り合いが取れていないんですよね~。まずはこれを着てみて下さい~」



私たちそれぞれに服を渡し、店員さんはシャッとカーテンを閉めました。



「ダサい・・・ダサい・・・」


隣の試着室からブツブツとマリーナ師匠の声が聞こえてきます。



私は渡された服を手に取って見つめました。


「やはりお洋服というのも、私が思っていた以上に奥が深いのですね・・・」



私は意を決して、来ていたブラウスを脱ぎ始めるのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ