新装開店。
それから数日後。
エレンさんはお店の簡単な改装を終え、新装開店しました。
様子を見に行かれたマリーナ師匠曰く、初日からちらほらとお客さんが来てくださって、なかなかの賑わいだったとか。
「2人の変身した姿を見て来てくれる方が多かったの!」
とエレンさんはおっしゃいました。(気を使ってくださったのだと思いますが。)
そしてこれまで、お店のお掃除などの裏方で働いていたというエレンさんのお母様も、ご一緒にお店に立ち、奥様方のお相手をなさっているそうです。
これもまたなかなか好評のようで、お話好きの奥様方が集まるきっかけになっているのだとか。
もちろんエレンさんの素晴らしい手腕目当てでいらっしゃる方も多いようです。
若い方々は、デートの前に髪型やメイクをセットして欲しいと、事前に予約をとっていらっしゃるのだそうです。
美しくなりたい。
エレンさんがおっしゃったように、その思いを心に抱えつつも、なかなか向き合うことが出来なかった女性たちに、エレンさんのお店は大きな助力を与えているようでした。
もちろん、男性の来店も拒まず、来て下さった方にはきっちりと対応しているそうですが、
そちらはお父様のお怪我が治り次第、バトンタッチして上手くやっていくとのことです。
「提案してくれたフィーナさんのおかげ。本当にありがとう!」
とエレンさんはわざわざお礼を伝えに来て下さいました。
(そしてその際に私が貴族だということを知って、とても驚かれていました。そういえば特にお伝えしていませんでしたか。)
敬語で謝罪なさるエレンさんに、どうか今まで通りで、とお伝えすると、
エレンさんは何故だか感極まったようになり、
「貴族様でありながら平民にも分け隔てないなんて・・・なんて素晴らしい方なのでしょう・・・!フィーナさんのおかげで、マリーナちゃんとも仲直り出来たし、貴方は幸運の女神だわ!!」
と目をうるませながらおっしゃいました。
「い、いえ、私は何も・・・。全てエレンさんがこれまでコツコツ努力して身につけられた技術のおかげですよ」
私は本心からそうお伝えしましたが、エレンさんは
「フィーナさんは本当になんてお心が広いのかしら・・・!!」
と全く聞いていません。さすがの私もちょっと困惑してしまいました。
ともあれ、エレンさんに美しくするすべを教えていただいた私は、自宅でもヘアアレンジやお化粧を再現すべく、教えていただいた技をひたすら練習して身につけることができました。
「これで美しさに1歩、近づいた気がします・・・!!」
しかしこの時私は知りませんでした。
『美しさ』にはまだまだ多くの壁が立ちはだかっていることを・・・。