表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/37

遺言


「フィーナ・・・そこにいるのかい・・・?」



「おばあさま・・・!フィーナは、フィーナはここにいます!」


ベッドの周りにはもはや親族しかいない。


医師は部屋の隅で申し訳なさそうに俯きながら立っている。

尽くす手は、もはやないのだろう。



フィーナは今にも消え入りそうな自分の祖母の手を強く握る。


「いや!いや!いかないでおばあさま!」


フィーナは泣きじゃくりながら祖母に縋り付く。

いつもは冷静な父と母も、俯いて肩を震わせていた。



「フィーナ・・・いいかい・・・最後によくお聞き」


・・・


「おばあさま・・・!!!」


祖母はフィーナの耳元で何事かを呟くと、静かに息を引き取った。


フィーナに、不可解な遺言を残して・・・。




****




突然ですが私フィーナ・テレザリアの家族構成についてお話させてください。


テレザリア家は曽祖父の代で子爵位を賜った成り上がり貴族です。



曽祖父は農家でしたが、土地を多く持った地主でした。



ある時、この国ルフト王国を大飢饉が襲いました。


人々が職も住むところも食べるものも失った時、ひいおじいさまは持っていた土地や財を全て人々に分け与えました。



祖父の持つ土地は肥沃で、天候の影響を受けづらく、飢饉にあっても育ちやすい植物が考案され、栽培されていたこともあって、多くの人々が飢えをのがれることができたのだそうです。


その功績を讃えられて、恐れ多くも爵位を賜ることになったと言われています。



身内自慢のようになってしまいましたが、それだけでは終わりません。



その次代、つまり私の祖父母の代になって状況は変わります。


何せ土地も財も全て投げ打ってます。



しかも曽祖父とは違い、私のおじいさまはこう言ってはなんですが結構な『ロクデナシ』でした。


ほんの少し残った財も、賭博につぎ込んでしまったうえ、酔って起こした事故で亡くなってしまうのです。



おばあさまは日々の食事にも事欠きながら、細々と内職などで家計を支え、周囲の方々の助けもあったことでなんとか私の父を含む3人の子供を育て上げました。



そしておばあさまはロクデナシのおじいさまを見て育った自分の子供たちを、絶対に父親のようにはすまいと、それはそれは厳しく教育しました。



「世の中ものを言うのは爵位なんかじゃない。真面目にこつこつ働いて慎ましく健全に生きることが大切なんだよ!」



生前のおばあさまの口癖です。


その言葉通り、おばあさまの3人の子供は全員見事に王宮勤め(国家公務員とも言える)の安定職を得ました。



私の父は所謂文官。今は会計係を務め、その仕事ぶりや人となりは「真面目が服を着ているような」人間と評判です。



そして同じく王城勤めでメイドとして働いている母と出会い、結婚しました。

母は王女付きなどの華々しい役職ではありませんが、誠実で真面目な仕事ぶりから周りの覚えは良いようです。



その2人の間に生まれたのが、私フィーナという訳です。




長々と語ってしまいすみません。我が家の雰囲気が、何となくお分かりいただけたでしょうか。



そんな真面目な両親と厳格な祖母の背中を見て育った私は、これまでテレザリス家の一員として恥ずかしくないよう当然『真面目』に過ごしてまいりました。



日々勉学に励み、まもなく卒業する学院ではトップとまではいかないもののそこそこの上位を維持。

質素倹約に努め、お洋服やお化粧、流行りものにはあまり興味がなく、必要最低限。



おばあさまの言いつけをしっかり守って、そう、テレザリス家として恥ずかしくないよう、真面目に、生きてきたつもりなのです。




そんな私に、何故おばあさまはあんな遺言を残したのでしょうか・・・。



初めての投稿でドキドキです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ