表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/53

第15話:パーティーの結成(1)

 クルクスの店内で、ハイドはグラスを傾けていた。


「それで? 顔合わせはうまくいったの?」


 レティクルの問いは、ガブリエルをアレイに紹介したことだ。

 ダンジョン探索をする際に、どうやって強くなるか、という点に関して、方法はそう多くはない。


 単純な鍛錬。

 これは分かりやすい。

 自分を鍛えれば、それだけ強くなる。

 ダンジョン探索の経験値を積む、ということでも、問題はない。


 Lメカを手に入れる。

 ダンジョンから回収可能な、Lメカは使うことができるなら、それだけで手札が増える。

 もっとも、Lメカは種類が多岐にわたるため、戦闘に使えるLメカが手に入るかは、運しだいではある。

 そもそも、Lメカ自体が、かなり希少ではあるが。


 Mテクをアップデートする。

 Mテクは、キャッシュを支払うことで購入可能な、お手軽な戦闘法である。

 ツールや、アーツを揃えるだけでも、十分に戦力は向上する。

 もちろん、高価なものなら、性能も上がる。

 また、ツールやアーツは、カスタマイズしやすい、という面もあるため、カスタマイズによって性能を上げることもできる。

 そのカスタマイズを専門としているショップもあるため、自分に使いやすいようにカスタマイズできれば、それでも戦力は跳ね上がる。

 強いカスタマイズ品などは、プレミア価格などがついたりもする。

 有名な探索者などは、専用のアーツやツールを持っていることも多く、それを通じて二つ名を付けられることもある。


 他に、薬品を使用した化学的な肉体強化。

 あるいは、サイボーグ化。

 種族固有のやり方もある。


 アレイは、分類するなら、サイボーグ化になる。

 ただし、アレイは、自身の体には何の改造も施していない。

 自分で作り上げた戦車をマニュアル操作で動かしている。

 通常、戦車のように内部に乗り込んで操作するタイプは、搭乗者もサイボーグ化して、操縦系と直結し、ダイレクトに操作するのが一般的だ。

 アレイは、そうはしない。

 そして、そんなアレイだからこそ、ガブリエルを任せることもできる。


「アレイがいてよかったと思う日がくるとはなあ・・・・・・」

「しみじみと相当なことを言うわね?」


 レティクルは、苦笑している。

 ハイドの言うことも相当ではあるからだ。


「いやだってなあ。・・・・・・覚えてるだろ? アレイが入ってきた当初の騒動」

「あんまりにも無茶なことをやらかそうとしていたわよね」


 なんとか手に入る素材を用いて、パワーアーマーを作っていたが、質はそれほどのものでもなく、どう考えても命の無駄になりかねなかった。

 そこをハイドが手助けし、クルクス派でいくらかの素材を融通して、なんとか実戦レベルにまで仕上げたのだ。

 ちなみに、アレイが作っていたパワーアーマーも、サイボーグ化して直結操縦にしていれば、十分に戦力として通用するものであったことは述べておく。

 ただ、アレイが信条として、サイボーグ化を嫌っているために、戦闘で使えるレベルではなかっただけだ。


「技術を持ってるだけに、見捨てるには惜しかったからな」

「まあ、彼女のおかげで、クルクス派やレディアントが、機械系で充実したのは事実だけれど」


 レティクルは、肩をすくめた。


「技術は、まじすごいからなー、あいつ。・・・・・・俺も、まさか今更に最新技術でもない既存技術の組み合わせに、感心させられるとは思いもしなかった」

「で、それをガブリエルちゃんに?」

「ああ」


 ガブリエルは、フェザー系だ。

 フェザー系種族は、サイボーグ化と相性が悪い。

 もともと身体が華奢で軽量なフェザー系種族は、サイボーグ化した場合に、その身体にかかる負荷が他種族よりも重い。


「うまくいった?」

「相性は悪くなさそうだ。しばらくは俺もついていくが、できれば二人でダンジョン探索できるようになってくれるとな」


 そう思いながら、ハイドは、今日の探索を思い出した。



 + * +



「では行こうか!」


 アレイが、戦車に乗り込んで元気よく宣言する。

 アレイの戦車は、初期のころと形状を変えていた。

 戦車上部のポッドとなっている部分の装甲が展開し、一人用の戦車に、他のものが乗り込める補助席が出ている。

 そこにガブリエルは収まっていた。


「うーん。まあ、今回はいいか!」


 アレイとしては、搭乗者が外気に身をさらすことになるこの状態は、あまり好ましいものではないだろう。

 単純に、外部からの攻撃から身を護るものがないし、戦車の主砲や副砲が近いところにもあるので、排莢や反動が搭乗者にダメージになるかもしれない。

 今回は、お試し、ということで、こういう状態だ。


「うん。次は、ガブちゃん用に、アーマーを用意してあげる!」

「えっと、ありがとうございます」

「うんうん!」


 アレイは、なんだかんだ、嬉しそうにガブリエルに話しかけている。

 それに対するガブリエルの反応は、多少戸惑いと遠慮はあるものの、悪いものではない。


「よし。じゃあ、ガブリエル。デバイスを出して」


 ハイドには、そんな二人に、一つ教えておくことがあった。

 特に、ガブリエルにだ。


「基本的に、ダンジョン探索はチームで動く。で、デバイスには、それ用にパーティー結成メニューがある」


 デバイスを操作させて、アレイとパーティーを組ませる。


「パーティーには、メリットがある」


 デバイスでのアーツスロットの追加設定だ。

 共有設定である。


「スロットで共有設定を入れれば、パーティー内でアーツを共有、つまり、他のもののデバイスにセットされているアーツでも使用が可能だ」

「それを使えば、ガブちゃんでも、ボクの戦車の戦車砲が撃てるようにできるよ」


 もう一つ。


「パーティー設定をしておくと、パーティーメンバーへのアーツの誤射、すなわり、フレンドリーファイアを防ぐことができる。クリミナルの、プレイヤーへの攻撃禁止と、大体にたような仕組みだな」


 さらに言うと、一部アーツには、発動対象がアーツ使用者のみになっているものがある。

 回復系のアーツなんかはその類だ。

 これらのアーツを他者に施すには、その相手とパーティーを組んでいる必要がある。

 つまり、この世界では、別パーティーへの回復や補助はできない。


「できたか?」

「はい。大丈夫です!」

「こっちでも確認したぞー」


 ガブリエルとアレイの答えを聞いて、ハイドも頷いた。


「よし。じゃあ、適当に流すか」

「うん。ボクも、ガブちゃんがどういう風に戦うのかとか知りたいな!」

「・・・・・・あの、今更ですが、アレイさんは、わたしとパーティー組んでもいいんですか?」

「うん? 別にいいよー。ボクは戦車で戦えれば、何でもおけー」


 アレイの返事は軽い。

 だが実際、そういうところはある。

 アレイは、自分で作った戦車の性能向上には興味があるが、ダンジョンの攻略そのものには、それほど興味を抱いていない。

 ダンジョンから取得できるLメカには興味があるようだが、それも戦車の性能向上に役立つと思えばこそだ。


「アレイ。ガブリエルは脆いから、そこだけは注意しろよ? マジで」

「うん。フェザー系、だっけ? ボクらテギス系と違って、体格がもろいっていうのは知ってる。大丈夫だよー」


 ふふふ、とアレイは嬉しそうに笑っている。


「何より、ド初心者! 多少適性はあるとはいえ、鍛える方向性は選び放題!! いやあ、楽しみだなー!!!


 アレイは大分興奮しているようだ。

 研究者気質のあるアレイからすると、自由に研究成果を試せる被検体、と見ることもできるからだろう。

 一般社会だったら、眉を顰める価値観も、ここは牢獄惑星だ。

 そう言うことに忌避感を持つものは少ない。


「ほんと、やり過ぎるなよ?」

「大丈夫大丈夫!」



 + * +



「・・・・・・早まったか?」


 あの笑顔を思い出すと、やはりちょっと心配になってくる。


「大丈夫よ。というか、あなたもちゃんと見ておきなさいよ?」

「それはそうだが」


 レティクルに言われて、ハイドは唸る。


「それに、大丈夫なんでしょう?」

「何回か戦った。途中で、いくつかアーツも貸したけどな。・・・・・・で、今アレイは、工房にこもって、ガブリエル用の装備を作ってる」


 割とテンション高めだったから、どうなるかかなり心配ではある。


「アレイからしてみると、アレイには合わないから使えないと思ってアーマー作れるって、めっちゃ張り切ってた」

「ふうん・・・・・・?」


 ふむ、とレティクルは考えて、


「ねえ、一つ提案なのだけれど」

「うん?」

「ガブリエル。パーティーを組ませるのは、アレイ一人だけだと不安でしょ?」

「うむ。・・・・・・性格的にな」

「だから・・・・・・」


 レティクルがハイドに耳打ちする。


「・・・・・・ああ、なるほど。そうするか」

「いい案でしょう?」

「だな。・・・・・・明日にでも、話を通しに行ってみるか」


 どうせ、アレイは、数日出てこないだろうし。

 その間に、準備を進めておくとしよう、とハイドは決めるのだった。



 + * +



「人がいいでしょう? あの人」


 レティクルは、ガブリエルに食事を出しながら、笑う。

 話題の相手は、ハイドのことだ。


「面倒見がいいですよね」


 アレイと初めて組んで戦闘をしたときも、さりげなく二人をガードする動きをしていた。

 後方などの死角を押さえた上で、動きやすいように補助を入れてくれていた。

 それでいて、戦闘中でもガブリエルには立ち回りのアドバイスが飛んできた。


「とても、ありがたいと思います」

「ふふ。ならいいの」


 レティクルは笑う。


「・・・・・・今日の成果はどうだった?」

「いくつか、Qコアが。アレイさんと山分けで、ちょっとお金になりました。それで、少しだけ恩赦をもらって・・・」


 ガブリエルが話す今日のことを、レティkルウは微笑ましい顔で聞いていた。

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


別作品も連載中です。

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ