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侵依  作者: 哀溜
1/2

日常

「ねぇ、君!可愛いね!俺らと遊ばない?」

「え、ちょ...!」


葉桜が散る道路沿いの道。

出会いと別れを繰り返す、なんてありきたりな言葉が似合う光景。

そんな中、またもやありきたりに響くナンパの声。

女の子の方は高校生くらいだろうか、迷惑そうに断っているが中々諦めてくれない。

少し後ずさった瞬間、後ろから声がかかる。


「やほ、れい。どういう状況?」

「あ、悠紀ゆき...ちょっと、この人たちが...」

「あれ、お友達?可愛いじゃん、君も遊ぼうよ!」

「あー.....なるほど?」


現状を察した悠紀は微妙そうな顔をする。

玲を後ろに下げ、前に出ながらにっこりと笑いかけた。


「すみません、私たち行かなきゃいけないので。あと、タイプじゃないです」


ぴし、と固まった男たちに背を向け、2人は走り出した。

風が吹き花弁が舞った、とある春のこと。






「玲、大丈夫だった?」

「うん、大丈夫。ごめんね、悠紀」

「いいよいいよ、私が遅れたのも悪かったし」


カラオケに入店し、部屋のソファに座って話す。

その言葉通り、悠紀は約束の時間より5分ほど遅れていた。

しかし逃げるために走ったのもあって、予定していた時間から然程遅れることもなくカラオケにつくことができた。


「ま、気をつけてよね。玲、可愛いんだから」

「そ、んなことないし...悠紀のほうが顔整ってるでしょ」

「またまたぁ、お世辞がうまいなぁ。ほら、歌お?」


実際、2人とも顔は整っているほうだ。

玲は少し茶色がかった瞳に小さい唇。

人形のよう、と言ったのは誰だったか。

それとは逆に、悠紀はイケメンと言いたくなるような顔。

漆黒の瞳に光は映らず、それがまた危うさを見せていた。

勿論、本人たちに自覚はない。

謙遜しあって終わりがないので、詳しく話すこともなかった。

じゃんけんによって決まった順番に従い、玲が入れた曲は「シャルル」。

この2人は所謂オタクで、基本的にカラオケで歌うのはボカロだった。


「.................♪」


柔らかいその声は穏やかで、どこか悲しさも含まれていた。

玲の歌声だけが部屋いっぱいに響き渡る。

悠紀の指先は微かに動いており、表情からしても暇、という感じではなく、聴き入ってる、というほうが正しいように感じた。


「.....♪」


軽く微笑みながら歌い切る。

得点は89点。中々の高得点だ。

悠紀もぱちぱちと手を叩いた。


「やっぱ上手いね。流石」

「悠紀のほうが上手いけどね...お世辞でもなんでもなく」


悠紀が入れた曲は「夜明けと蛍」。

足でリズムを取りながら歌い出す。

安定した歌声を響かせ、画面いっぱいに出た得点は92点。


「うまー...綺麗だね、悠紀」

「はは、照れるじゃん」


和やかに進むカラオケ。

3時間あっという間に歌い終わり、少し日が傾いた外に出る。


「うー...疲れたぁ。明日声出るかな...」

「原キーで歌うからでしょ?普段声低めなのに、どっから出てるの...」

「高音のほうが出やすいからねー」


話し合いながらカフェに入る。

玲はアイスカフェオレ、悠紀はバニラフラペチーノ。

飲み物だけ注文して、席に座る。


「フラペチーノって...寒くない?」

「大丈夫でしょ...ぅわ頭キーンってした!」

「あはは、言ったじゃんもうー」


けらけら笑いながら飲み干す。

ただ緩やかに時間が流れていく、それが心地よかった。




すっかり日が落ち、ネオンライトが目に突き刺さる街。


「玲、今日どうする?」

「ん...どしよ」

「家くる?どうせ1人だし」

「...ごめんね、迷惑だよね」

「全然。寧ろ嬉しいし」

「...そ、か。じゃ、甘えようかな」

「おっけ、じゃ、帰ろ?」


手を繋いで街を歩く。

俯いた玲の顔は見えない。

ただただ無言で、人混みをかき分ける。

まるで、何かから逃げるかのように。



初めまして、哀溜かなたと申します。

不定期&低クオの投稿になると思いますが、よろしくお願いいたします。

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