賢者、実家に帰る
【職業】賢者
【性別】女
【レベル】55
【武器】不死鳥の杖 (レアドロップ)
【防具】赤い手編みのローブ
【メモ】母の作ってくれたローブがお気に入り
◆9-4魔界エリア・魔王城
~~魔王の部屋~~
魔王「ふっはっは、勇者よ、お主なかなかやるではないか」
勇者「やるからには本気で勝ちにいきたいと思っただけさ」
魔王「うむ、たしかに。初心者冒険者が集う草原エリアに高レベルモンスターを配置するその鬼畜ぶり、我も見習わねばならないな」
勇者「冒険者は何度倒そうとも教会で復活してくるんだ。いくら強い我々でも大多数の高レベル冒険者と戦闘を繰り返せば、必ずこちらがジリ貧になって負けてしまうだろう」
魔王「だからこそ初心者狩りをして、これ以上冒険者のレベルを上げさせない、というわけだな」
勇者「ふっふっふ、雑魚ならいくら相手にしてもこちらは消耗しないだろう」
魔王「うむ、実に良い考えだ。だが、我らの戦力を序盤エリアに集中させ過ぎて逆に魔界の近くが手薄になっているんだが、大丈夫なのか…?」
勇者「今現在終盤までやって来ている冒険者は数が少なく、俺より強い奴はいない。魔王城に残った魔物達で何とでもできるだろう」
魔王「ふむふむ」
勇者「それに高レベルになると、教会で復活するためにはかなり大量のコインが必要となる。敵が少数であればジリ貧になるのはむこうが先ということだ」
魔王「完璧ではないか!」
勇者「ああ。だが怖いのがただ一つ。新しく俺よりも強い勇者が誕生することだ」
魔王「そのための初心者狩りでもある、というわけだな」
勇者「この世に、勇者は俺一人だけでいい……!」
魔王「ふ、ふふ……」
勇者・魔王「はっはっはっはっはっはっはっ!!」
悪魔メイド「ねぇ、あれってどっちが魔王なの?」
サキュバス「どっちも魔王みたいなものよ」
悪魔メイド「てかさ、そんな回りくどいことしないで教会を潰しちゃえば良いんじゃないの?」
サキュバス「……あんなに盛り上がっているんだし、言わないであげましょ」
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◇7-3渓谷エリア・隠れ里
~~賢者の実家~~
父・母・弟・妹「おかえりー!!」
賢者「……ただいま!」
弟「ねぇねぇ! お姉ちゃん、旅の話聞かせてー!」
妹「きかせてー!」
父「こらこら、お姉ちゃんは今帰ったばかりなんだから少しは休ませてあげなさい」
弟「うー」妹「うー!」
母「夕御飯、もうちょっとでできるから待っててね」
賢者「うん。あ、これお土産ね」
弟「おみやげ? やったー!」妹「やったー!」
父「おお、これはずいぶんと高そうなお菓子だな」
賢者「そのとおり。かなり高かったんだからね」
弟「お菓子ぃー」妹「おっかしー!」すたこらサッサ
父「お前たち、夕飯前なんだからまだ食べちゃダメだぞー!」
弟・妹「はーい!」
父「まったく」
賢者「なんだか、帰ってきたって感じ」
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母「それにしても、どうしていきなり帰ってきたの?」
賢者「うん、最近になって魔物の出現場所が変わったって聞いたからね。うちの里は大丈夫かなーって思ったの」
母「ああ、たしか向かいの奥さんがそんなようなことを言ってた気がするわ」
父「なるほどな、最近ダンジョンの中で魔物を見ないと思ったらそういうことか」
賢者「え? 魔物、いないの?」
父「ああ。おかげで仕事は捗るし、子供たちも外で安全に遊べるようになって大助かりだよ」
弟「ぼくね、この前岩のダンジョンを探検したんだよー。すごいでしょ!」
賢者「岩のダンジョンって、ゴーレムがいっぱい出現するところじゃないの! そんな危ないところに一人で行くなんて」
弟「今はぜんぜん平気だもーん」
父「俺はてっきりお前たちが魔王を倒したから魔物がいなくなったのかと思っていたんだが」
賢者「魔王城に乗り込むってところまでは進んでいたんだけどね、勇者が突然いなくなっちゃって……」
母「あら、あの子いなくなっちゃったの!? 無事でいるといいけど……心配だわ」
父「うん、まあとにかくお前が無事に帰ってきてくれて良かったよ。お前、勇者について行ってから一度も家に帰ってこなかったしな」
賢者「だって忙しかったんだもん」
母「手紙くらい書かけるでしょ。まったく、心配ばっかりかけて親不孝な子なんだから」
賢者「はいはい、ごめんなさいね―――」
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◆9-4魔界エリア・魔王城
~~魔王の部屋~~
勇者「征服だって?」
魔王「ああ、そうだ。お前も魔王城にひきこもってばかりではつまらないだろう」
コカトリス「―――魔王さま、お呼びでしょうか」
魔王「おお来たか。勇者よ、我々の真なる目的は王国を侵略し、世界を征服することだ。その手始めとしてコカトリスと共に街を一つ征服してくるのだ」
勇者「……なるほどな」
魔王「うむ、まあ初めてで分からないことも多いだろう。まずは近場の街を」
勇者「いや、ちょうどいい場所がある」
魔王「ほう」
勇者「目的地は、渓谷エリアの隠れ里だ」
【隠れ里】
渓谷に暮らす人々は断崖を削って建物を作った。
賢者の家も崖の真ん中辺りにある。
渓谷の民は昔から風と共に生きている。
谷底には風の妖精シルフがいるとされ、その吹く息によって谷には独特な気流がつくられる。
その気流に上手く乗ることで、人々は今日も生活しているのだ。