勇者、行方不明になる
◇1-3草原エリア・スライムのたまり場
戦士「賢者どの、そっちへ行ったぞ!」
賢者「はい、目標とらえました! ―――ファイアボールッ!」
スライム「ぷえっ」
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賢者「ふぅー…。今のでちょうど30体目、なんとか目標の数を仕留めることができましたね」
戦士「うむ。ご苦労だった。今回はなかなか骨が折れたな」
賢者「そうですね。もう回復薬が一個しか残っていませんよ」
戦士「ふっ…帰り道も気は抜けそうにないな」
賢者「私のMPがまだ少し残っているので、もしものときは回復魔法を使いましょう」
戦士「助かる。が、それにしても」
賢者「はい」
戦士「1-3エリアのスライムがこんなにも凶暴化しているとはな」
賢者「気性だけでなく力もかなり強くなっていますね。以前とは比べ物になりません」
戦士「魔王城から最も遠いこのエリアですらこんなありさまだ。まったく、一体どうなっているんだ」
賢者「他の皆さん、大丈夫でしょうか……」
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◇3-1砂漠エリア・オアシス近くの街
狩人「またせたな」
僧侶「いいえ。それよりも、なにか情報は得られましたか」
狩人「こっちはサッパリだ。酒場やギルドの連中に聞いてまわってみたが誰も見ていないってさ」
僧侶「こちらも同じです」
狩人「かぁ~。結局この街も無駄足になっちまったか」
僧侶「ハズレと分かっただけマシと考えましょう。このまま続けていればきっといずれ出会えるはずです」
狩人「だといいけどよぉー…」
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◇6-4雪原エリア・黒い雪の降る街
格闘家「ここにも居らず、ですな」
魔法使い「はぁ」
格闘家「まさか魔王討伐直前にこのような事態に陥るとは…」
魔法使い「勇者が消えてからもう二ヶ月かー…」
格闘家「近頃はどこのエリアでも魔物の凶暴化が起きているようです。もうあまり勇者の捜索に時間を掛けていられませんよ」
魔法使い「だよねー…。この街でもけっこう被害が出ているみたいだし」
格闘家「この状態が続けば最悪、勇者がいない状態で魔王に挑まざるを得ないやも知れませんね」
魔法使い「でも対魔王用の装備は全部あいつが装備しているのよ!?」
格闘家「はい…。せめて勇者の亡骸だけでも見つかれば…」
魔法使い「もう! あとちょっとでエンディングだったのにー!」
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◆9-4魔界エリア・魔王城
魔王「……まさか、こんなことになるとはな」
四天王「まったくです」「マジで驚きましたよ」「正直羨ましいです」「せっかく登場時の口上考えていたのに!」
中ボス「さぁ皆様、準備が出来ましたのでこちらへ」
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ざわ ざわ ざわ
ガーゴイル「皆様、たいへん長らくお待たせいたしました! 只今より新郎新婦のご入場です! 盛大な拍手でお迎えください!」
わー! わー! わー!
強いスライム「よっ! めでたいねぇ」
強いゴブリン「羨ましいぞぉ、コノヤロー!」
ゴーレム「イイネ、イイネ」
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魔王「……言いたいことは色々あるが、まあ良しとしよう。これまでのことはお互い全て水に流す! これからは同志だ、勇者よ」
勇者「ああ! よろしくな、魔王」
パチパチパチ! わー! わー!
魔王「そして今回最大の功労者にして、見事勇者を堕とし妻となったサキュバスに、拍手を!」
パチパチパチ! いいぞー! かわいー!
サキュバス「えへへ、これからも末永く愛してね、勇者っ」