愛の力②
『ぼんちゃん、来て。』
レイが呼んでいる。俺は、すぐに瞬間移動した。かすみの自宅近くの公園だ。
『はーい。こんにちは、レイちゃん。何かなあ?』
『ねえ、ぼんちゃん、この前見たく、小ちゃくなって。』
『いいけど。捕まえたりしない?』
『うん。そんなことしない。』
『分かった。じゃあ、ちょっと待ってね。はああああああ、はああ!』
俺の体が、どんどん小さくなる。5cmくらいの身長で止めた。
『やったあ。やっぱり可愛いい。』
レイは、俺を手で掴み、胸のポケットに入れた。俺は、ポケットから、顔だけ出し、外を見た。レイは、鼻歌を歌いながら、スキップをしている。どうやら、目的地に着いたようだ。そこは、公園内の池であった。。持っている袋から、ガサゴソと何やら探している。出て来たのは、お椀とお箸であった。何か嫌な予感がする。俺は再び、レイに掴まれた。そして、お椀の中に入れられた。
『よし。準備できた。ぼんちゃんは、一寸法師ね。はい、このお箸を使って、池を渡ってね。レイ、この前、絵本で一寸法師を読んだの。そしたら、小ちゃなぼんちゃんを思い出したの。』
そう言うと、お箸を渡され、お椀ごと、池に放り出された。お椀は、ゆらゆらと揺れながら、水の上を浮いている。
『ぼんちゃん、漕いで、漕いで。』
俺は、お箸の櫂で水をかいだ。お椀は、少しずつ、進んでいく。ゆらゆらが気持ち悪い。船酔いだ。しばらくすると、急に水の勢いが早くなって来た。やばい予感がする。滝だ。
俺は、反対方向に進むよう、努力したが、水の勢いには勝てない。お椀ごと、滝に落ちていった。幸い、俺は泳ぎが得意だ。滝壺から脱出して、流れが緩やかな方向に向かった。すると、何かが足に触れた。振り向くと、巨大な怪獣が俺を襲って来た。ザリガニだ。小さな体で見ると、まさに怪獣だ。さて、どうする。逃げるか、戦うか。この小さな体で、戦えるか試してみるか。俺は、オーラを出した。『氣』で倒してみせる。ザリガニが近づいて来た。その大きなハサミを振りかざした瞬間、一気に氣を放出。ザリガニは、真っ二つに裁断された。ザリガニの血の匂いが他の生物を引き寄せるはずだ。俺は、元の体の大きさに戻った。
突然、池から男が飛び出したので、近くにいた親子がビックリして逃げていった。俺はレイを探した。レイは、ベンチに座り泣いていた。
『レイちゃん、戻って来たよ。』
俺は優しく声をかけた。レイは、びしょ濡れの俺の体に抱きついて来た。
『ぼんちゃんが、池で死んじゃったかと思ったの。レイのせいで、死んじゃったかと思ったの。』
レイは大泣きした。
『大丈夫だから。おじちゃんは、無敵だよ。強いんだから。』
俺は、ギュッと抱きしめた。
『レイちゃん、帰ろうか。』
俺は、かすみに電話をして、迎えに来るように言った。
かすみが慌てて、やって来た。
『どうしたの?』
俺は今日の出来事を説明した。
『ヒロ君、ごめんね。ほら、レイ、謝りなさい。』
『レイちゃんは、一寸法師に興味を持ったみたいだ。興味を持ち、そして、仮説を立てて、実験をする。レイちゃんは科学の基本を、すでに身につけてるね。レイちゃんは、すごいよ。』
『ヒロ君、優しいね。』
今度はかすみが泣き始めた。
『ママ、ごめんなさい。ぼんちゃん、ごめんなさい。』
レイも、また泣き始めた。女の子の涙は、苦手だ。なんとかしなければ、俺はバカなことを考えついた。小さくなれるのなら、大きくもなれるはずだ。俺は、試したくなった。試したくなる?ああ、俺もレイちゃんと一緒だ。思いついたことが正しいのか、正しくないのか、出来るのか、出来ないのか、、、すぐに試したくなる。なんか嬉しくなってきた。
『はああああああああ、はああ!』
体が徐々に大きくなる。レイが気がついた。その反応で、かすみも気がついた。さらに大きくなる。15mほどで止めた。身長15mの俺の完成だ。
かすみは思った。
『奈良の大仏様だわ』
俺は、2人を手のひらに乗せた。立場が逆転だ。小さい俺は、かすみやレイの手のひらに乗った。今度は逆だ。かすみとレイを軽く握り、空に向かい飛び上がった。大宮の空を散歩だ。
泣いていた2人の顔から涙は無くなっていた。10分ほど飛び、もとの公園に戻った。さすがに、この体は目立つ。すぐに元に戻した。
『かすみ、レミちゃん、俺はいつでも、君たちの味方だよ。遊びたい時、寂しい時、困った時、いつでも呼んでね。』
このところ、色々あるが、毎日が楽しくて仕方ない。3人の女神のおかげなのか、頭が冴えわたってる。いろんなことを思いつくことができる。だから、楽しいのだ。
それにしても、レイの感性の高さは際立っている。難解な数学に興味を持ったかと思えば、絵本に感動したり、他のひとよりアンテナが発達しているのかと思えてならない。さらに、素直で純粋である。守るべき宝だと思った。
俺は、かすみを見つめた。やはり美しい。会うたびに美しくなっている。俺の中の、かすみに対する愛も、大きくなっているのが分かる。そう、これでいいのだ。愛を煩悩と考えることなどない。
かすみを愛する心。愛の力が、俺を成長させ、俺をより強くする。
俺は、かすみにキスをして、自宅に戻った。




