誘拐③
30分ほどのお昼寝で目が覚めた。
『ママ、抱っこちて。』
『目、覚めたのね。どうしたの?甘えたいの?』
俺はかすみの胸に抱きついた。そして、耳元で囁いた。
『かすみ、こんな風になってしまったけど、ごめんね。寂しくないか。』
『ヒロ君、優しいのね。大丈夫よ。いつも愛を感じているから。さあ、一緒に遊ぼうか、ちひろちゃん。』
かすみは、大人のプールに連れて行ってくれた。俺の両手を持ち、水の中を引っ張ってくれた。バタ足の練習のような感じ。かすみの目を見つめ、泳ぐ。幸せの時間を過ごした。
サマーベッドに戻ると、彩先生がイケメンにナンパされていた。
『わたくしと遊びたいの。いいわよ。でも、危険な遊びになるわよ。命をかける勇気ある?』
イケメン君は、顔を引きつりながら、去って行った。
かすみとレイちゃんは、アイスを買いに、俺は、彩先生のオッパイを観ていた。
『ちひろちゃん、何、見てるの?オッパイ欲しいの?』
『彩姉ちゃん、喉渇いたの。』
『わたくしは、お乳でないから、そこの自動販売機で、お茶を買ってきてあげる。お利口さんで待ってられる。』
『うん。大丈夫。』
彩先生が背を向けて歩いていくと、ここぞチャンスとばかりに、『佐田」と思われる男が近づいてきた。
俺を乱暴に抱きかかえ、走っていく。20代後半の男だ。一目でルシファの手下ではないと、分かる。ちょうどいい、誘拐された時の予行練習だ。プールの出口で黒塗りのベンツが待っていた。
『アニキ、赤ん坊、拐ってきたやした。』
『お前は、ここで女を見張れ。後で女を連れてくる手はずを連絡する。いいな。』
『分かりやした、アニキ。』
馬鹿なアニキと、馬鹿なチンピラ。コントかよ。
俺は彩先生に、テレパシーで、さっきのチンピラの仲間に誘拐されたことを伝えた。
車には、アニキと呼ばれるリーダー格の男と、二人の手下。さらにドライバーがいた。男臭い車内で、俺は気持ち悪い。不愉快なのでとりあえず眠った。
到着したのは、新宿歌舞伎町だ。なんだ、俺の庭ではないか。雑居ビルの5階が事務所になっており、そこに連れていかれた。中には十数名のヤクザがいた。一番大きな椅子に座っているのが組長と思われる。側に、愛人らしき派手な女を侍らせている。俺は手下に抱かられていたが、わざとお漏らしをした。
『あっ、こいつ漏らしやがった。殺すかあ。』
ざまあ見ろ。男は、俺を女に渡した。
『あらあ、可愛い。なにこの子、超〜可愛い。健くん、ベビー服とオムツ、それから哺乳瓶と粉ミルクを急いて買ってきて。』
女は、そばにいた若い男に命令した。
『えー、姉さん、何で俺が買いに行かなきゃ行けないんすか。』
男は、ふてくされている。組長が一喝した。
『健、さっさと行ってこい。それと、太一、お前ションベン臭い。着替えてこい。それと、ほれ、クリーニング代だ。』
若い二人は、金を受け取ると、そそくさと出て行った。
『それにしても、可愛いな。ゆかり、しばらく面倒見てやれ。で、坂田、なぜ子供を連れてきた?』
坂田とは、アニキと呼ばれていたチンピラだ。坂田は、組長に朝からの経緯を説明した。
『やるからには上手くやれ。それと夕方、会長一行がくる。くれぐれも失礼のないように。いいな。』
ふーん。なるほど、小さな暴力団の組長ということか。
『パ、パ、』
『おい、聞いたか。今、わしのことをパパと呼んだぞ。お前は、可愛いなあ。おい、お前ら、この赤ん坊、大切にしろよ。』
所詮はヤクザだ。人としては最低のクズ集団である。だが、この組長は、歳をとっているせいか優しそうだ。だが、ちょっとおだてると、つけあがるタイプだ。俺の『パパ』の一言で、すでにメロメロになっている。
東京沢田組 新宿支部 佐々木組』
これが、この組の正式名称のようだ。夕方には総本家の会長が来るらしい。俺は、そのことを彩先生に伝えた。俺は、姉さんに、お風呂に入れてもらい。着替えさせてもらった。ミルクも飲ませてもらい。姉さんの腕の中で、大人しくバブバブしている。
『ねえ、サー君、わたしこの子欲しい。』
『わしも同じ気持ちじゃ。わしらの子供として育てるのも名案だ。』
ヤクザの組長が佐々木だな。俺は、組長に向かって手を伸ばした。組長は俺を抱いて、嬉しそうな顔をしている。
『お前、わしの事が好きか。お前は美人じゃのう。』
俺、完全に女の武器を利用して、組長を虜にしている。とりあえず、このアホたれ組長と、姉さんは、優しいから許してあげよう。




