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嘘か誠か④

 部屋の東西南北の壁に、小さなマークが貼られているのを確認した。俺が、ここに来た時には無かった。俺の意識のない間に、誰かが貼ったのだ。五芒星を逆さにしたマーク。ルシファあるいは、サタンと呼ばれている悪魔のマークだ。この部屋がルシファに侵されている。俺の動きを封じ込めようとしているのだ。何のために。狙いはかすみと、レイだ。「偉大な善は、悪を引き寄せる」と聞いたことがある。悠長なことを言ってる場合ではない。一刻を争う。急がねば。

 部屋の明かりが、おかしい。点いたり消えたりしている。部屋に誰かが現れた。

『おやおや、かわいい坊やがいるがに。何も出来ずに歯がゆいか。わしの名は、ギロン。ルシファ様の僕だがに。この女と娘をもらっていくやに。』

俺は、手足をバタバタさせることしか出来ない。

『赤ちゃんが怒ってるのや。まさに、じたばただな。大丈夫、こんないい女、すぐには殺さない。たっぷり楽しませてもらうだし。』

そういうと、ギロンは、かすみの顔を汚い、長い舌で舐め始めた。

俺の怒りは頂点に達した。

『バブバビ、ババババババババ、、、、、、バブー!』

俺の体から黄金のオーラが発せられた。みるみる大きくなる。大きくなるオーラに合わせるが如く、体が大きくなっていく。

『ババデバブ。おっと間違えた。待たせたな。神の復活だ。』

『何が神だ。そのかっこで笑わせるな。一歩でも動けば、この女を殺すだし。』

確かに、体は元の大きさに戻った。着ているのは大きくなったベビー服だ。俺は息を4回吹いた。4枚の悪魔の紋章が剥がれ落ちた。

『バブバブバブバブ、、、バブー』

ギロンは俺のオーラで跡形も無く、焼かれた。

『かすみ、怖い目に合わせてしまったね。待たせて、ごめん。レイちゃん、おままごと楽しかったよ。また、やろうね。』

俺は、かすみとレイを抱きしめた。


『ねえ〜、かすみぃ〜。お風呂は?』

『どうぞ、湧いているから、入っていいわよ。』

『そうじゃなくって、さっき、「汗かいてからお風呂に入れてあげるね」って、言ってたじゃん。』

『ああ、それはヒロ君が赤ちゃんだったからよ。もう、一人で入れるでしょ。』

『えー、ヤダヤダ。』

俺は手足をバタバタさせた。

『しょうがない子ね。でも、この大きさでは入れられないわ。赤ちゃんの大きさに戻ったら、いいわよ。』

俺は、赤ちゃんなる恥ずかしさと、かすみと一緒にお風呂に入る喜びを天秤にかけた。

『バブバブバブバ、、、、バア。』

俺は再び赤ちゃんの姿になった。

『かすみ、お風呂に入れて。』

『ダメよ。かすみじゃないでしょ。「ママ」って言わないとダメだわ。』

まじかあ。仕方ない。お風呂から戻れば、姿を戻せばいい。

『ママ、お風呂に入れて〜』

俺は顔を真っ赤にした。

『はい、ばっちり録画しました。』

ああ、彩先生がいつの間に。

『ヒロちゃん、お似合いね。ずっと、このままでもいいんじゃないかしら。』

そう言うと、床から拾った悪魔のシールを俺の背中に貼り付けた。

そんなあ。

『さあ、お風呂に入ろうね。あら、ヒロちゃん、お漏らししてまちゅね。いけない子でちゅねぇ。』

彩先生が、俺のお尻を叩いた。一応、赤ちゃんなんだけど、まったく手加減してくれない。まさに、鬼だ。

バシッ‼️

『鬼って、誰のこと?』

そう言うと、おれを抱きかかえ、お風呂に連れて行ってくれた。お風呂には、裸のかすみが待っている。幸せな時間の始まりだ。

『ママ。』

俺は思わず口にしてしまった。

『ヒロ君、私のヒロ君。』

かすみが頭を柔らかい手で撫でてくれた。かすみは、気がついた。ヒロの額に『梵』という文字が浮かび上がっていたのを。


 お風呂は、幸せだった。赤ちゃんの姿だと、堂々とおっぱいをいじったり、吸ったりできる。かすみも嫌がることはなかった。お風呂から上がった俺は、バスタオルの上に寝かされた。

『レイがやるぅ。』

まじか。レイがお世話をしてくれてる。オムツをし、ベビー服を着せ、手袋と靴下と帽子まで付けてくれた。おまけに、おしゃぶりまで口に入れられた。こんなに丁寧にお世話してくれては、元に戻るのが悪く感じてしまう。そうだ!背中にシールが貼られてるの忘れていた。ヤバいぞ。戻れないじゃないか。

『彩さん、ヒロ君の背中に貼ってあった五芒星のシールはお風呂で剥がれてしまったわ。ヒロ君、気がついてないみたい。』

『放っておきましょう。あのままの姿の方が、可愛いし、楽しいから。それに、ヒロ君には、このシールなど、もう役に立たないわよ。本人は、気づいていないようですが、盧遮那仏の能力が目覚めつつあるのよ。』

『そういえは、前にレイが言っていた「梵」の文字が額に浮き上がっているのをお風呂で見たわ。』

『やはりそうなのね。わたくしの予想よりも早く目覚めてるのかも。それは、良いことでもあり、悪いことでもあるかも。』

『悪いこと?』

『そう。わたくしたちの敵、ルシファがわたくしたちに気づいてしまったということ。その危険を回避するため、盧遮那仏が目覚めているのかもしれないわ。』

『ルシファは、やはり危険なの。』

『もともとは、神でしたが、追放され、堕天使となり悪魔に成り下がったものです。魔界の王です。彼の狙いはレイちゃんです。救世主が生まれる前に、対処しようと考えるのは自然なこと。何としても守らなければならないわ。』

『バブバブ。バブビブバブ』

このおしゃぶりは、強力だ。口の力だけでは外せない。手が短くて、口に届かない。

『あら、ヒロ君、レイお姉ちゃんに遊んでもらって楽しそうね〜。』

彩先生がやってきた。

『バブバブバブ、バアブバ』

『あらあら、赤ちゃんの言葉喋って、ヒロ君たら可愛いわあ。おしゃぶり似合ってるね。わたくしのプレゼント、気に入ってもらえて嬉しいわ。』

そうか、このおしゃぶりは、彩先生が持ってきたのか。納得だあ。抵抗しても、無駄だ。



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