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ぼんちゃん②

 昨日のレイの笑み、そして、彩の目、、、何か企てている。用心しないといけない。どんなに強い相手が来ても、俺は倒せることができる。拳銃だろうが、武術だろうが、核爆弾でさえ平気だ。なのに、身内の女神には、太刀打ち出来ない。 三人とも強い。絶対にまた仕掛けてくるはずだ。精神力を鍛えなければ。

 レイの考えた作戦に、彩は乗った。

『何て面白いことを考える子なんでしょう。素晴らしい発想力だわ。』

彩は、目を輝かせていた。

その日、彩とレイ、そしてかすみの3人は、綿密な打ち合わせをした。

『もっとも大切なのは時間だから。』

彩は、念を押した。


 日曜日のちょうどお昼の時間を迎える頃であった。今日は女神たちがいない休日である。休日と言ったが、今の俺は毎日が休日みたいなものだ。時計の針がちょうど12時を指した瞬間、俺を呼んでいる声が聞こえた。

『ぼんちゃん、来て。』

『ヒロ君、来なさい。』

『ヒロ君、来て。』

同時に三人からテレパシーが送られて来た。心を研ぎ澄ます。何かトラブルに巻き込まれたのか。俺は物凄く動揺した。念が強くなってくる。すぐに行かねばならない。ところが、三人が呼んでる場所がバラバラである。レイは、日進の公園。かすみは表参道。彩は箱根にいる。俺はどうすればいいのか。分からない。いずれにせよ急がねば。俺は瞬時に瞑想に入った。


 レイの思いついたイタズラは、こうだ。3人同時に呼んだら、誰のところに、やって来るのか。それを確かめてみたいと思ったのだ。つまりは、3人のうち誰を1番に考えているかを確かめるという、かなり残酷なゲームである。これに乗った彩は、こう思った。選ばれた人は喜べばいい。残りの2人は、ヒロを問い詰めて、お仕置きしちゃう。これは、面白いと思った。3人は正午ぴったりに、ヒロをテレパシーで呼び出し、何秒でやって来るのかを競うことにしたのだ。


 俺は瞑想から目を覚ました。勘違いをした。3人の中から1人を選ぶこと自体が間違いと気づいた。3人全てのところに行けばいいのだ。

『はあああああああ、はぁー!』

ヒロはかつてないほどの気合いを入れた。

『はあああああああ、梵!』


 半日後、3人は大宮のファミレスに集まった。

『みんな、どうだった?ヒロ君は来た?』

彩は尋ねた。

『うん。来たよ。レイのところには20秒後に来て、それから1時間くらい遊んでもらったよ。』

それを聞いていたかすみの顔が青くなった。

『レイ、それ本当?』

『本当だよ。レイ、嘘はつかないもん。』

『彩さん、私のところにも、20秒後に来て、その後、食事をしたの。これって、どういうこと?人違いではないわ。あれは、絶対にヒロ君でした。』

彩の顔色も変わっていくのが分かった。

『わたくしも、みなさんと同じ。ヒロ君は、20秒後に来て、温泉に入っていったわ。』

3人とも、会話ができない状態になってしまった。ヒロを試すつもりが、試される結果となったのだ。

レイが話し始めた。

『ぼんちゃん、呼んじゃえば。』

確かに、本人に確かめるのが、一番早い。その言葉を聞いて、彩が何かを考えたようである。

『かすみさん、レイちゃん、いつものヒロ君と違ってるようなところは、なかった?』

『なんかね、いつもより真面目だった。ぼんちゃん、いつもはもっとふざけるのに、なんか真面目だった。』

『そう言われると、確かに、いつもより真面目だったかも。普段は、エッチなことばかり考えてるのに、今日はそんな感じはしなかったわ。』

レイとかすみの話を聞いて、彩は確信した。

『かすみさん、ヒロ君は目覚めてしまったかも。』

『目覚めたって?何を。』

『ホントにぼんちゃんになったかも。』

『よく分からない。彩さん、どういうこと?』

かすみは、戸惑っている。レイは、ぼんやりしていた。

『かすみさん、盧遮那仏の話は、当然、覚えてるわよね。つまり、宇宙神の話。一人で、宇宙全体を監視して、見守るなんて無理な話。だけど、盧遮那仏は、それが出来るの。自分の分身を遣わすことが出来ると言われてるの。これを「分身仏」と言うの。自分の毛穴から、分身を出すと言われてるわ。つまり、ヒロ君は、3人の中から1人を選ぶことを拒否し、自分を分身することで、3人全員を助けることを実行に移したのよ。これが出来るのは盧遮那仏だけなの。分身は、本体の命令に忠実に行動するはず。だから、余計なおふざけや、エッチなことは行わなかったのよ。でも、初めての術だと思うので、相当なエネルギーを消費してると思うは。今、呼び出すのは、ちょっと可哀想ね。』

『ヒロ君が分身の術を使ったのね。1人も見捨てないとは、ちょっと見直したは。私たち、ヒロ君に感謝しないといけないね。そして、少しイタズラの度が過ぎたことを反省しないとね。』

かうみは本当にそう思った。そして、さらに、ヒロに惹かれていることに気がついた。


『えー、でも、、、レイ、もう呼んじゃったあ。』

『えっ。』

かすみと彩が同時に反応した。

『レイ、本当に呼んだの。』

『うん。呼んじゃった。ママと彩ねえちゃんが困った顔をしてたから。』

『ヒロ君、大丈夫かしら。』

彩は心配した。

ファミレスのドアが開いた。そして、大男がやってきた。

『レイちゃん、呼んだかな。』

ヒロがやって来た。疲れた様子はなさそうだ。空いている席についた。

『お姉さーん、プリンとコーヒーを追加しまーす。』

大きな声で、注文をするヒロ。このヒロは、本物、それとも分身なのか。判断がつかない。

目をキョロキョロするゆかすみ。観察をしているのだ。それを見ていた彩が、一言、話した。

『あっ、かすみさん、パンツ見えてるよ。』

その言葉を聞いた瞬間、ヒロは首を曲げて、かすみの下半身に視線を向けた。物凄い強い視線だ。

『嘘よ、ヒロ君。』

彩は、ゲラゲラと笑った。

間違いない。こんな単純な嘘にひっかかり、しかも、鼻の下を伸ばすのは、本物のヒロ君である。かすみは、嬉しいような、恥ずかしいような、変な気持ちになっていた。

『なんだあ。彩先生、嘘はダメですよ。しかし、残念。お宝のチャンスを逃したあ。』

ああ、どこが盧遮那仏なのか。ただのすけべなオヤジだ。

『ヒロ君。いったい、その脳みそは、何考えてるの。エッチなんだから。』

『ぼんちゃんって、エッチなの。』

レイがポツリと話した。

『それは違うよ。ママが美しいから、見とれてただけだよ。』

『良かったあ。ぼんちゃんがエッチなら、レイ、嫌いになってたかも。』

えっ。レイに嫌われたくはない。普段の行いを慎まなければいけないと、ヒロは思った。



『ヒロ君、ごめんなさい。3人でヒロ君を騙して、イタズラしちゃった。3人とも反省してたところだったの。』

かすみが頭を下げた。

『かすみ、謝らないでいいから。君たち3人のおかげで、俺はまた強くなった。礼を言うよ。ありがとう。』

『ヒロ君、疲れてないの。分身したんでしょ。大丈夫なの?』

彩が尋ねた。

『全然、平気だよ。俺、彩先生のおかげで精神力が上がってるみたいなので、へっちゃら。でも、お腹は空いたかな。』

いつものヒロ君だ。かすみも彩も安心した。結局、レイのアイデアがヒロをまた一つ大きくすることとなった。レイが、ヒロを盧遮那仏に近づけたわけだ。やはり、レイが教育係なのだ。

『やっぱり、プリンは美味しい。これを食べると、ますます元気が出てくるよ。』

そう笑って話すヒロ。だか、かすみは見逃さなかった。明るく振る舞っているが、額から汗が出ている。よく見ると、シャツの上から、背中にも汗が出ているのが分かった。ヒロ君、無理してる。

『今日は、疲れたね。そろそろ帰りましょう。』

かすみが、席を立った。彩はすぐに察した。かすみがヒロの体調に気を使っているのが分かったのだ。

『えー、レイ、もっとぼんちゃんとお話ししたい。』

レイがわがままを言いだした。

『おじさんも、レイちゃんと遊びたいなあ。』

ああ、全くおバカさんだ。彩は嘆いていた。かすみさんの優しさに気づかないとは。仕方ない、また試して見るか。

『あっ、かすみさん、気をつけて。また、パンツ見えてるよ。』

ヒロの顔が変わった。そして、かすみをガン見している。

引っかかった。同じ手に二回も引っかかるとは、盧遮那仏には程遠い。

『レイ、帰る。』

レイは軽蔑の視線をヒロに向けた。そして、3人は、お店を出て行った。

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