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嘘か誠か②

 かすみが、おままごとを観察している。すると突然、別の部屋に移動し、何やらゴソゴソ探しものを始めたようだ。

『レイ、これ見て〜。』

手にしていたのは、色とりどりのベビー服だ。

『ああ、赤ちゃんの服だ。』

レイの目が輝いた。

『そうよ。レイが赤ちゃんの時に着ていた服なの。捨てずに取っておいたのよ。』

なんかヤバそうな感じだ。そうっと逃げようと静かにた時、レイちゃんに捕まった。そして、俺にペピー服を当てがってきた。それを見ていたかすみが何か考えている。

『ねえ、ヒロ君。頼みがあるんだけどなあ〜。あっ、でもいいや。』

かすみに頼まれると、何でも引き受けたくなる。その瞳に吸い寄せられると、俺の心は虜になったしまう。

『なになに?頼みって何?』

『うん。いくらヒロ君でも出来ないから、やっぱやめとく。』

そう言われると、むしろ気になる。

『俺に出来ないことなんて、ないよ。かすみの為なら何でも出来るさ。』

『ヒロ君、レイのおままごとに付き合ってくれて、本当にありがとう。ヒロ君、かわいいよ。』

褒められちゃった。気分がいい。

『でもね。なんか、ちょっと違うんだなあ。ヒロ君、小さくなったけど、体のバランスは大人のままでしょう。変な感じなの。ベビーって、もっと手足が短いのよね。あっ、いいのよ。このままで、十分かわいいから。』

待てよ。体のバランスを変える。もっと言えば、姿、形を変えるということか。彩先生の得意である変装の技だ。この技を身につけ、応用させれば、色々な形の分身仏を生み出すことも可能かもしれない。

『出来るかどうか分からないけど、やってみるよ。』

俺は、静かに瞑想に入った。


 俺は強くイメージをした。変身後の形を思い描いた。そして、気を貯めていく。もっと、もっと、貯めていく。今だ!貯めた気を一気にエネルギーに変えた。

『はああああああああ、はああ!』

俺の体が伸びたり縮んだりを繰り返し、思い描いたイメージに近づいていった。

『はあ、はあ、はあ、、、かすみ、こんなんで、いいかな、、、』

初めての変身だ。だが、上手く出来たような気がする。かすみが、じっと見ている。

『全体的に、もうちょっとだけ、うーん3cmくらい小さくなれる?』

『それなら簡単さ。はあああ!』

俺は、体をほんのちょっと小さくした。

『これでどうだい。』

かすみが、にこりと笑った。

『うん。完璧よ。赤ちゃんの体型に変身できたね。ヒロ君。これなら、このベビー服が着られるよ。きっと似合うわ。』

かすみがベビー服を当てがった。

そして、また、ジッと見つめてきた。

『ヒロ君。おひげ、胸毛、こればっかりは無理よね〜。』

もう、体がフラフラしている。思考能力も低下している。もう、どうでもよくなってきた。頭髪以外、脱毛出来るか、チャレンジだ。

『うううわああああああ、うわ!』

もうダメだ。体力を消耗し、俺はそのまま眠ってしまった。


 どれだけ眠ったのだろうか。長い、長い夢を見た。神になったり、戦いをしたり、テストも受けた。分身したり、赤ちゃんにも変身した。目を開けると、かすみとレイが見ている。二人とも笑顔だ。

『ママ、赤ちゃん、起きたよ。』

赤ちゃん?どこに赤ちゃんがいるのだ。

『ヒロ君、おっきしたの〜。』

かすみの両手が俺の脇に滑り込んだ。

『よしよし、こっち、おいで。』

な、な、何なんだ。俺はかすみに抱かれている。暖かい。でも、どうもおかしい。

『レイ、弟が出来て良かったね〜。』

『うん。レイ、赤ちゃん、可愛くて楽しい。』

今度は、レイが俺を抱いている。俺は体を動かそうとしたが、思うように動けない。

『ママ、赤ちゃんが、バタバタしてるよ。』

俺が赤ちゃん?自分の体を見て、確認した。赤ちゃんだ。混乱してきた。俺は無敵で、世界最強。神として君臨しているはずだ。それは、夢だったのか。いやいや、そんなはずはない。今が夢の中なのか。分からない、分からない。かすみに聞いてみよう。

『だあ、だ、ばあ、だ、、、』

あれっ、言葉が出ない。俺は赤ちゃんなのか。

『ママ、赤ちゃんが何か言ってるよ。』

『ヒロ君、どうしたの?お腹すいたのかな?』

かすみが優しい。また、抱っこされた。何だ、この幸福感は。癒される。無敵とか、神とか、どうでもよくなってくる。

『だあ、だあ、ばああ、、、』

大好き!と言ったけど、伝わらないかなあ。

『レイ、ヒロ君を見てて。ミルクを作ってくるから。』

ミルク?俺、牛乳、苦手なんだけど。ビールか、あるいはプリンがいいんだけどなあ。確かに、お腹が空いてきた。


 かすみが戻ってきた。手に何か持っている。ほ、ほ、哺乳瓶だ。ミルクって、まさか、、、。

『はーい、おまたせ、ヒロ君。いっぱい飲もうね〜。』

俺は抵抗した。哺乳瓶を咥えるなど、さすがにプライドが許さない。口に力を入れて開けるのを拒んだ。

俺はかすみの膝の上に抱かれた。

『ヒロ君、はい、あーん。』

魔法の言葉だ。思わず口を開けてしまった。哺乳瓶の乳首が口に押し込まれてきた。

『お利口さんね。いっぱい、飲んだね。』

また、不思議な感覚に陥っている。ずっとこのままでいたい。俺は、夢中で吸った。

『あっ、赤ちゃん、ミルクを吸ってる。カワイイ。』

レイが覗き込んでいる。

『本当、ヒロ君かわいいね。ヒロ君、私があなたのママよ。』

ママ?。かすみが俺のママ。やはり、これは夢だ。俺のかすみに対する、甘えたいという願望が夢に現れたのだ。そうと分かれば、甘えたい放題だ。思いっきり、この状況を楽しんじゃおう。哺乳瓶のミルクを飲み終え、口が自由になった。

『ママ。』

あれっ、話せた。

『あっ、赤ちゃんがしゃべった。』

レイが興奮している。

『そうよ。ママよ。』

かすみがニコニコしている。口の周りをガーゼで拭かれた。今、気がついたが、俺、よだれかけをしている。ピンクのベビー服を着ている。白い手袋と、白い靴下を履いている。完全に赤ちゃんの格好だ。

恥ずかしい。急に、恥ずかしくなってきた。


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