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趣味探しでVRMMO始めました  作者: たぬきちのしっぽ
第一章:VRMMO始めてみました
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025

 冒険者ギルドの図書室は一般的な高校の図書室と同じくらいの広さだった。

 貸し出し用の受付もあるが、そこには貼紙がしてあって、『貸し出し書棚以外の棚の本は貸し出しできません』と書いてある。

 書いてある文字が日本語なのは、メンタルコネクターの言語設定を日本語にしてあるからだろう。

 美代が調べたところによると、プレリュードの専用言語もあるらしい。

 そういうものを読みたい場合は、サブジョブの共通スキルとして存在する《大陸言語》を習得すると読めるようにとのこと。

 ただし、言語を自力解読してスキル無しでも読むことができるようになった人もいるというのだから、すごい人たちもいるものだ、とその話を知ったときに美代は感心した。


「図書室では静かに、ていうのはゲームでも同じなのね」


 声を潜めながら美代が図書室内をぐるりと見回す。

 本がいっぱいに詰まった書棚が整然と並んでいる様子は、厳かという言葉がよく似合う。

 臭いもある程度は再現しているこのゲームらしく、紙とインクの香りがほのかにしていた。


「さすがに現実と違って、大量生産品ではないんだね。どれも手書きの本みたい」


 昔の本と同じく、どの本も一点物なのかもしれない。本の装丁もそれぞれ違うようだ。


「こんにちは。何かお探しですか?」


 きょろきょろと室内を眺めていた美代が何かを探しているように見えたらしく、司書の女性が声をかけてきた。


「あ、すみません。えーとですね、モンスターの情報について調べたいのですが、どこの書棚になりますか?」

「ああ、モンスターの情報ですね。でしたら、こちらです。案内しますよ」


 優しそうな笑みを浮かべて司書の女性が美代を案内する。

 室内はそう広くはないが、本の量は多いので探すとなると結構大変そうだった。


(この司書さんもAIか。すごいなぁ)


 後ろからついていきながら、美代は司書にも首輪がついているのに気が付いた。

 表情から仕草まで、やはり首輪がないとすぐには気付かないレベルだ。


「こちらですよ。ビギンタリア周辺に生息しているモンスターについて書かれた本は、この棚の上から二段目になりますね」


 司書は美代を案内をすると、お辞儀をしてすぐに受付の方に戻って行った。

 もしかしたら、まだ仕事が残っているのかもしれない。

 再び一人になった美代は、司書に教えてもらった棚から目的のものを探し始めた。


「えーと、『ビギンタリア平原の生き物たち』『モンスターの特徴と不思議/初級編』『ビギンタリアの湿地に潜む影』……、いろんなのがあるんだなぁ。あ、これかな? 『ビギンタリア森林のモンスター』かぁ」


 美代は見つけた本を手に取る。すると、メッセージウィンドウが開いて、『この本は貸し出しできません。図書室内で読んで下さい』と表示された。


「あー、こういうのは貸し出し禁止なんだ。モンスター情報っていうと、やっぱり貴重な情報だからなのかな?」


 とりあえず貸し出しできないならば、それは仕方ないということで、美代は図書室内の入り口近くにあった共有スペースまで移動する。

 そこでならば座って本を読むことができそうだ。


「えっと、なになに……」


 置いてあった椅子に腰をかけて、本を開く。目次には聞いたことがないモンスターの名前も載っていたが、ひとまず目的の相手を探す。


(フォレストドッグ、フォレストドッグ……と、あった)


 目次に書かれていたフォレストドッグのページを開くと、そこには図も載っていて、美代が出会ったモノによく似た絵が描かれていた。


(フォレストドッグ。ビギンタリア森林に生息するモンスターで、体躯は大型犬ほどもある。うん、たしかに大きかったものね。

 最初の体色は茶色だが、森の中ではそれを変化させることが出来る。後ろの色と同化し、擬態することができ、相対している敵対者からは一瞬消えたようにも見える。なるほどね。消えたように見えたのはこれかぁ。対処法とかあるのかな?)


 その後も美代はじっくりと本を読み進めた。

 この本によると、フォレストドッグは森林でも上位の強さを誇るモンスターらしい。

 素早い動きと強力な攻撃に加えて、トリッキーな能力で新人(ルーキー)冒険者の最初の壁扱いされることもあると書かれていた。


「たしかに。私も負けたし……」


 美代も実感の籠もった呟きを漏らして、うんうんと首を縦に振る。まだそれほど時間は経っていないため、思い出すと余計に悔しい。


「対処方は、《看破》のスキルを取得するか、罠にかけて消えることができないようにするか、もしくは塗料などの何かしら目印になるようなものを当てるかすると良い、ね。

 《看破》のスキルはまだ取得可能の一覧に出てきてなかったし、罠もフォレストドッグ狙いで行くわけではないから突発的な戦闘には向いてない。

 となると、やっぱり目印かな。塗料ってたしか雑貨屋に売ってるよね」


 ペイントボムなるものが大通りに面した店の一軒で売っていたような、と美代はうろ覚えの記憶を掘り出した。


「何に使うんだろうって思ってたけど、こういうときに使えるんだね」


 よく分からないアイテムなどがあったら、お店の人に聞いてみるのもいいかもしれないと美代は今後のことを考える。

 それから彼女は、フォレストドッグの項目を読んで、ついでだからと他にも森林に生息するモンスターを調べた。

 フォレストドッグが強いということは分かったが、他にもおかしな能力を持ったモンスターがいるかもしれない。


(やっぱり事前知識って大事だなぁ……。こういうところで手を抜いて失敗するところは、ゲームでも現実でも変わらないものね)


 美代は自嘲気味な笑みを浮かべて、自分を戒める。さすがに同じような失敗は何度もしたくはない。

 一通り読み終えた美代は、本を書棚に戻してから図書室を後にした。

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