観音堂の黒白の猫
天気の良い夕方頃、底本は狂郷と一緒に、例の観音堂に来ていた。
底本「狂郷、またこんなところに来て、いったい何をするのでござるか?」
狂郷「時空転送装置を回収しに来たんですよ。まだここに来てからそれに一切手をつけていませんでしたからね」
底本「え、ずっとここに放置していたのか……?」
狂郷「はい」。苦笑する。
底本達はずっと観音堂に時空転送装置を放置していた。
狂郷「とりあえず時空転送装置を小型化しましょうか」。狂郷はとあるスイッチを押して、時空転送装置を小型化する。
底本「ちょっと待つでござる。小型化できるの?」
狂郷「はい、できますけど……」
底本「小型化できるなら最初からそうして回収しておけよ!」
狂郷「いやあ、すっかり忘れていましたんですよ」。てへぺろ。
底本「まったく、狂郷はそういうところがあるからなあ」
そう会話しながら、底本達は帰ろうとする。すると……。
??「みゃー」
底本「むっ! この声は!」。底本は立ち止まる。
狂郷「どうしたんですか、底本さん」
底本「拙者の勘が正しければ、これは良い予感がする!」
狂郷「何を言っているんですか」。ゲラゲラ。
??「みゃぁ」。ノソノソ草陰から出てくる。
底本「やはり! 猫ちゃんだ!」
狂郷「食いつきすぎでしょ」。ゲラゲラ。
そこにいたのは、底本の大好きな猫だった。
狂郷「全体的に黒色の毛ですけれど、口周りからお腹の部分が白色ですね。それに、白い靴下を履いているような色の分かれ方です」
底本「それに加えて、毛並みもいいし、頭もものすごく小さい! なんて可愛いんだあ!」。裏声。
黒白「みゃあ」
狂郷「底本さんは猫が大好きですからねえ」。ゲラゲラ。
底本「狂郷、猫は至高な存在なのでござるよ。猫より可愛いものなんて存在しないからな。いいか、猫こそが正義だ!」
狂郷「はいはい、分かりましたよ」。ゲラゲラ。
黒白「みゃー」。底本に擦り寄る。
底本「にゃー! なんて可愛いんだ!」
狂郷「よかったですね、懐かれていますよ、底本さん」。ゲラゲラ。
底本「狂郷、今日から拙者はここを本拠地にするでござるよ」
狂郷「えぇっ! 駄目ですよ、底本さん。ちゃんとした家に帰りましょう」。ゲラゲラ。
底本「やだやだ! 拙者は猫と結婚するんだ!」。底本は暴れる。
狂郷「何とんでもないことを言っているんですか! 子どもみたいに駄々こねないで、今日は帰りますよ」。ゲラゲラ。
底本「んー……。また来るでござるか?」。ショボーン。
狂郷「まあ、近いのですぐ来れますよ」
底本「まことでござるか! やった!」。底本は大きく飛び跳ねて喜びを表現する。
狂郷「はいはい、それじゃあ今日のところは帰りましょうね」。ゲラゲラ。
底本「猫ちゃん! 明日もまた来るでござるよ! それじゃにゃ!」。底本は猫に向かって手を振る。
黒白「みゃー!」
狂郷「まさか毎日来るつもりなんですか? まあ、別にどうだっていいんですけれどね」。ゲラゲラ。