教科書に載っている未来、そして過去
底本「む、これはいったい?」。底本は部屋のテーブルの上に、謎の紙が置かれているのを見つける。
津島「ああ、それですか? それは、テストの問題用紙です」
底本「テスト?」
狂郷「日本語で、『試験』のことを言うんですよ、底本さん」
底本「試験、ということは、津島君は昇格試験のようなものを受けているのか?」
津島「いえ、僕が受けているのは学校の定期試験です。生徒の成績を決める大事な試験なんですよ」
底本「がっこう? とはいかに?」
狂郷「何も知らないんですね、底本さん。学校とは、江戸時代でいう、寺子屋のことですよ」。ゲラゲラ。
底本「拙者はここに来たばかりなのだから、何も知らないに決まっているだろう。しかし学校かあ。いったい、どんなことを勉強するのだ?」
津島「大まかに挙げると、国語・数学・英語・科学・歴史・その他もろもろ……」
底本「歴史! ということは江戸時代のことも勉強するのでござるか?」
狂郷「江戸時代は大切な時期でもありますから、そりゃ勉強しますよ。あ、もしかしたら底本さんのことも教科書に載っているかもしれませんね。貧乏侍として」。ゲラゲラ。
底本「そんなことはないだろう! それこそ、きっと昇格して、立派な武士となっているはずだ! 津島君、教科書を貸してみろ」
津島は底本に歴史の教科書を手渡す。
底本「どれどれ、どのようなことが書いてあるかな」。教科書をペラペラめくる。
《底本貧三、平賀源内の実験により、サイボーグ化される》
底本「ええ! 嘘だろ?」
狂郷「最悪な未来を見てしまいましたね。いや、過去かな?」。ゲラゲラ。
底本「最悪過ぎだろ! 狂ったみたいに笑いやがって。そうだ、狂郷のも見てやる! きっと拙者と同じように、悲惨な結果が待っているはずだ!」。ペラペラー。
《狂郷笑吉、頭脳明晰を生かして、大金持ちになる》
底本「はあ? なんでこんなにも拙者と狂郷の扱いが違うんだよ! もっと拙者を優遇してくれてもいいだろう!」
狂郷「底本さん、過去に訴えても何も変わりませんよ」。ゲラゲラ。
底本「拙者にとっては未来だ! あーもう、歴史なんて嫌だ!」
狂郷「まるで黒歴史ですね」。ゲラゲラ。
底本「やかましいわ! 上手いこと言えだなんて一言も言ってねえよ!」
津島「未来なんか知るものではないですね。だからと言って、過去を振り返るのも嫌なものです」