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消火器は火を凍らせる

底本そこもと「悪はついえたり」



 底本は強盗家族を縄で縛り上げ、片足で踏みつけた。


 悪党に拉致されていた狂郷きょうごうは、底本と猫のキミ、そしてトラックのおっさんの活躍によって、無事救出されたのであった。



狂郷「底本さん……」


底本「馬鹿野郎!」



 底本は歩み寄ってきた狂郷の頬をぶん殴る。



底本「この大馬鹿者が! 拙者を暴力的ヒッチハイクに利用した上に、金の亡者達に捕らえられやがって! 一生の別れかと思ったでござるよ!」


狂郷「す、すみません……」


おっさん「一生一緒にいたいってか。はっはっは!」



 笑っているのはおっさんだけだった。



狂郷「ところで底本さん、どうして私の位置がわかったんですか?」


底本「ああ、それなら簡単なことでござるよ。狂郷、双頭ノ蛇を軽く振ってみろ」



 狂郷は言われた通り腰に据えていた刀を縦に振ってみた。



狂郷「ん、柄の部分からカラカラって音がしますね」


底本「実はお前の双頭ノ蛇の中にGPS追跡装置を忍び込ませていたんでござるよ」


狂郷「ええっ! 怖い怖い怖い! 何のために!」


底本「お前が拙者に隠れて旨いもんでも食いに行っていないか確かめるためでござるよ」


狂郷「いやいや必要ないでしょう!」



狂郷「ところで、この一家はどうしましょう? 警察呼びますか?」


底本「その必要はないでござるよ」


狂郷「どうしてです?」


おっさん「俺の出番のようだな」



 突然トラックのおっさんが強盗家族の前に歩み出た。



底本「狂郷、このおっさんは穴を追い求めているのでござる」


狂郷「穴?」


底本「そう、穴だ。実は拙者も掘られかけたんでござるよ」


狂郷「掘られ――ってまさか」



 狂郷は顔を青ざめた。



底本「そういうことでござる」



底本「ところで、ここはどこでござるか?」


狂郷「たぶん、ここに来る途中に見た景色によると、勾当台公園から数分歩いたところだと思います」


底本「それじゃあ平賀ひらが殿が囚われているところのすぐ近くというわけでござるな」


狂郷「ええ、ちなみに、仙台の街中で爆発があったというのは勾当台公園駅のことらしいですよ」


底本「なるほど、それじゃあ駅の方へ行くでござるか」


狂郷「え? けれどすごい騒ぎですよ?」


底本「馬鹿もんが、大抵こんな風に行く当てがなくなれば騒ぎのある方で何かがあると相場が決まっているんでござるよ!」


狂郷「そんな無茶苦茶な!」



 *一方、平賀達は――*



 コンビニの駐車場にいた。



弥七やしち「あぁ、俺のフェラーリが……」



 弥七の所有する赤いフェラーリは、暴走したトラックに当て逃げされ、大きなへこみが出来てしまっていた。



芸次げいじ「別にいいだろ、走ることはできるんだし」


弥七「お前は何もわかっていねぇな! 車っていうのは見てくれが一番重要なんだよ! くっそー! あのトラックの運転手絶対許さねぇ! 体中全ての毛をちりちりにしてやる!」



 弥七は両手から燃え盛る炎を出した。



芸次「お、おい! こんなところでやめろ!」


平賀「それにしても、あのトラックの助手席に座っていた男、誰かに似ていたなぁ」


芸次「世の中には似ているやつが三人いるんだよ! そのうちの一人だっただけだろ! あちぃっ!」



 炎の魔人と化した弥七に芸次は手を焼いていた。



平賀「ううむ、本当にそうだろうか……」


芸次「消防車あぁぁっ!」



 *数分後*



芸次「ふう、やっと落ち着いた……」



 弥七はコンビニに備え付けられていた消火器によって鎮火された。



弥七「……」


平賀「いや、待つんじゃ」


弥七「……」


平賀「こいつ、凍っておるぞ……!」



 弥七は氷の中で眠っていた。



芸次「おかしいやつを亡くした」


平賀「いやいや、おかしいじゃろ! いや、芸次君がおかしいっていう意味じゃなくて、どうして消火器で凍るんじゃ!」


芸次「よくあることだろう」


平賀「ねーよ! 消火器というのはリン酸アンモニウムや硝酸アンモニウムなどを主成分にした粉末を火元に噴射することで酸素の濃度を低くして鎮火させるものであって、冷却するものではなんじゃよ!」


芸次「うわぁ、自分の知識をひけらかしてマウント取ろうとしているよ」


消火器「まったく、あきれるねぇ。このくらいよくあるじゃないか」



 突然芸次の持っていた消火器がしゃべりだした。



平賀「うわっ、しゃべった!」


芸次「これもよくあること――」


平賀「だからねぇって!」


消火器「くっくっく、いやぁラッキーだったぜ。初めに炎の邪神を取り込んだ男を始末できて。あいつとは相性がひどく悪いからなぁ」


芸次「こいつ、邪神か!」



 芸次は消火器から手を離した。


 消火器は下に落ちず、逆に宙を舞った。



平賀「おい、炎の邪神とはいったい何じゃ!」


芸次「解放された悪魔・邪神の一つだ! 弥七がうまいことやって取り込んだ!」


平賀「だから自在に炎を操れたんじゃな!」


芸次「そうだ! そして、この消火器は弥七を凍らせやがった! つまりこいつは――」


平賀「氷の邪神か!」


消火器「その通り! お前が俺らを解放してくれた芸次という男か? くっくっく、感謝するぜぇ。凍りやがれ!」

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