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『真珠の耳飾りの少女』

底本そこもと「おや、この絵の感じ、どこかで見たような……」


狂郷きょうごう「これはヨハネス・フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』ですね」


底本「フェルメール? あ、『牛乳を注ぐ女』と同じ画家だ!」


狂郷「その通りです。フェルメールの作品は良いものが多いですものね」


底本「確かに印象的なものが多いでござるな」と底本は感心する。「この()()()はどのような作品なのだろうか?」


狂郷「底本さん、その件ですが」狂郷は言葉を切った。「この絵は一般に肖像画ではないんです」


底本「ええっ!」底本は一驚する。「これって肖像画じゃないの?」


狂郷「ええ、この絵は俗に『トローニー』と呼ばれています」


底本「トローニー? とは一体」


狂郷「トローニーとは想像だけで描いたものや、モデルを自由に描いたもののことをいうんですよ」


底本「なるほどな」底本は頷く。「しかし、肖像画でも実物より印象良く誇張することがあるだろう? あれもトローニーの内に入るのか?」


狂郷「それらはトローニーではありませんよ」狂郷は首を振って否定した。「底本さんの言っているのは、依頼を受けて描かれたものです。もし肖像画が本人とは別のもののようでしたら、それは依頼人が地位や名声を押し出すために注文したということです」


底本「ほうほう、そういうことか」底本は腕を組み納得した様子を見せた。


狂郷「この作品は謎の多い作品なんですよね」狂郷はささやいた。「誰からの注文なのか、モデルはいたのかどうか、そこが未だに判明していないんです」


底本「練習用に描いた、っていう可能性は?」


狂郷「その説は実に濃厚です」しかし、と狂郷は続けた。「この少女が身につけている青いターバンなんですが、これはラピスラズリという宝石から作られたとても高価な絵の具で描かれているんです」


底本「そんな大層なものでフェルメールとやらは描いていたのか!」


狂郷「また、彼女は微かに口元をほころばせています」狂郷は絵をまっすぐ見た。「そこからこの絵は『オランダのモナ・リザ』とも呼ばれています」


底本「なるほど、確かに共通しているような部分はあるな」


狂郷「美術というのは、素晴らしいものです」

参考:著・木村泰司「名画は嘘をつく」

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