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フェルメールの『牛乳を注ぐ女』

底本そこもと「これは……、牛乳か?」ある絵画を前に呟く。


狂郷きょうごう「ええ、これはヨハネス・フェルメールの『牛乳を注ぐ女』です」そう底本に教えた。


底本「へえ、フェルメールか。どうしてこの女は牛乳を注いでなんかいるんだ?」


狂郷「それは彼女がメイドであり、固くなってしまったパンに牛乳を注いで調理し、食材を無駄にしないためですよ」と描かれているパンを指さして答える。


底本「なるほど、この女性はメイドなのか」


狂郷「十七世紀以前、メイドは男主人を誘惑する性的な存在として描かれることが多かったのですが、後々、それは女性の美徳を称賛するものとして増えていきました。この『牛乳を注ぐ女』もその一つです」


底本「ほうほう、フェルメールもメイドを絵に描いて称賛していたというわけでござるな」うんうんと頷く。


狂郷「はい、そうですね。しかし、実はフェルメールの称賛する対象は、このメイドよりも、別の方に向いているんですよ」


底本「なんだって? だが、この絵にはメイド以外に食材などしか描かれていないぞ」


狂郷「そうなんです。フェルメールの称賛の対象は、ここには描かれていないんです」と人差し指を立てた。


底本「なにぃ! どういうことだ?」


狂郷「当時メイドというものは、主婦によって監督されるものでした。言い換えれば、メイドは主婦の分身のようなもの、ということです」


底本「ふむふむ、つまり……、どういうことでござるか?」はて? という様子で首を傾げた。


狂郷「要するにですね、フェルメールが称賛したのは、メイドがきちんと家事に勤しむように、しっかりと監督している女主人だということです!」


底本「ああ、そういうことかあ」


狂郷「食べ物を無駄にしないという美徳を、このメイドを雇っている女主人は持っていたということですね」腕を組んで感心する。


底本「まさに女性の鑑といったところだな」


狂郷「ところで底本さんは、どのような女性が好みですか?」


底本「拙者でござるか? 拙者は優しくて、大人しくて、少しロマンチストな女性が好きだなあ」と夢見るように空を仰ぎながら言った。


狂郷「たぶん、そんな女性は存在しません」


底本「やめろぉ!」

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