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ミケランジェロの『最後の審判』

底本そこもと「何だこれ! 全裸の人がたくさんいるんだけど!」と底本はある祭壇画を見て大声を上げる。


狂郷きょうごう「どうしたんですか大声なんか出して……ああ、これはミケランジェロの『最後の審判』ですね」と狂郷は言った。「あと底本さん、絵画に描かれるもので全裸のものはそう少なくないですよ」


底本「なんだと! けしからんだろう!」


狂郷「いやいや、昔の世界ではむしろ神聖なイメージですよ」


底本「えぇ? 嘘でしょ?」


狂郷「本当ですよ。全裸というのは何の混じり気のない状態ですから、神の象徴として崇められていたこともありました」


底本「なるほどそういう考え方もあるのか。じゃあ拙者も脱げば神聖か」


狂郷「それは犯罪です」


底本「ところで、最後の審判とはいったい何なんだ?」


狂郷「そうですね。最後の審判というのは、死後に受ける神による裁きです。神の許しを得た者は天国へと昇り、神に背いた者は地獄へ落とされます」


底本「ああ、こっちでいう閻魔様の裁きか」


狂郷「そういうことです。ちなみに、この絵ではどちらが善人でどちらが悪人か分けられて描かれています」狂郷は絵画を指さして言った。「中央にいるキリストから見て右側を見てください。こちらには善人が描かれていて、天国へ昇る様子が描かれています。一方で左手に描かれているのは悪人で、地獄へ落ちる様子が描かれています」


底本「ほうほう、これは興味深いな」と底本は感心する。「しかしこのキリストは下帯を付けているな。さっきの狂郷の話を聞けば、キリストこそ全裸であるべきだと思うのだが、どうしてだ?」


狂郷「良いところに気が付きましたね、底本さん。実はこの下帯はミケランジェロの死後に彼の弟子によって描き加えられたものなんですよ」


底本「描き加えられた? いったい何のために?」


狂郷「これもまた宗教改革が関わってくるのですが、この絵が描かれた後、カトリック教会内でトリエント公会議というプロテスタント勢力に対抗するための改革が起こりました」


底本「偶像崇拝を禁じるプロテスタントか」


狂郷「そうです。そこで宗教美術に重みを置くカトリックは、美術は高尚でなければならないとし、全裸は俗なものとして控えられるようになりました」


底本「それで『最後の審判』のキリストは下帯をしているということだな」


狂郷「その通りです。ミケランジェロは全裸の絵として『最後の審判』を描きました。しかしその弟子は、全裸に反発し、師の死後に下帯を付け加えた、というわけです」


底本「宗教というのは、実に複雑なものだなあ」

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