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ドラクロワの『ショパン』

底本そこもと「これって作曲家じゃないか?」と底本はある絵画の前に立つ。


狂郷きょうごう「これは、ウジェーヌ・ドラクロワの〈ショパン〉ですね」と狂郷も底本に並ぶ。「ショパンはポーランドの前期ロマン派音楽を代表する作曲家で、ピアノの詩人と呼ばれたりしていました」


底本「ロマン派かー。拙者もロマンチックな男でござるよ」と狂郷の方を向いて言う。


狂郷「底本さんはあまりにも楽天的すぎるのでロマンも何も感じられません」


底本「酷いな!」そう言うと底本はもう一度絵を眺める。「しかし随分と堂々と描かれた肖像画でござるなあ。制作者はよっぽどショパンの絵を描きたかったんだろうな」


狂郷「いいえ、底本さん。ドラクロワはもともとショパンの肖像画を描こうとしていたわけではないんですよ」と人差し指を立てて指摘する。


底本「え、そうなの? だけどこの絵はかなりドアップで描かれているけど……」


狂郷「この絵は引き離された一枚の絵の一部なんですよ。ちょっとこっちに来てください」と狂郷は別の絵画の前に移動する。「これを見てください」


底本「これは一体誰だ? なんだかさっき見たショパンの絵と雰囲気が似ているような気がするが」


狂郷「これは同じドラクロワの〈サンド〉という作品です。当時彼女はショパンと恋人同士になっていました」


底本「ああ同じ画家が描いていたのか。どうりで雰囲気が似ていると思った」と底本は腕を組んで頷く。


狂郷「それだけではありませんよ、底本さん。先程ショパンの絵は引き離された一枚の絵の一部と言いましたよね。実はこのサンドの絵はショパンの絵と一緒に描かれていたんです」


底本「はっ! 確かに背景の色が全く同じでござる」


狂郷「気付きましたね。そうです、もともとショパンの肖像画は、肖像画ではなく、ショパンと彼の演奏を聴き入るサンドの姿を描いたものだったんです」


底本「なるほど、そうなのか」底本は納得したように二枚の絵を交互に見る。「しかしどうして二つの絵は引き離されたんだ?」


狂郷「そんなの簡単ですよ。ショパンとサンドは別れてしまったんですよ」


底本「そんな! ショパンは別れたら同じ絵の中に入ることさえ拒まれてしまうだなんて! かわいそうに……」と底本はしょんぼりする。


狂郷「拒まれたかどうかはよく分かりませんが……ハハハ。底本さんのそういうところは少しロマン派っぽいですよね」狂郷は愛想笑いした。

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