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ムンクの『叫び』

底本そこもと「おー、たくさん浮世絵があるでござるねえ」底本は周りの絵画を見回しながら感嘆する。


狂郷きょうごう「底本さん、これらは浮世絵ではなく、洋画というものです」それを狂郷は指摘する。



 そう、底本達は美術館へ訪れていた。



底本「浮世絵も洋画も同じようなものでござろう」


狂郷「んー、あながち間違ってはいませんが……」


津島つしま「え、それってどういうことですか?」津島は狂郷にそう尋ねる。


狂郷「西洋の絵画には、浮世絵の影響を受けたものもいくつかあるんですよ。例えば、ゴッホやゴーギャン、モネなどの作品がそうですね」


津島「印象派の画家に多いみたいですね」


底本「おーい、何してんだー? こっち来いよ!」と大声で狂郷達を呼ぶ。


狂郷「底本さん! あまり美術館で大声を出さないでください!」


津島「やれやれだなあ」



 *



底本「狂郷、これはいったい何でござるか?」底本はある絵画を指さして尋ねる。


狂郷「ああ、これはムンクの『叫び』ですね」


底本「『叫び』でござるかあ。確かにこれに描かれている人物は凄い叫びを上げているようだな」


狂郷「底本さん、実はこれ、描かれている人物が叫んでいるわけじゃないんですよ」


底本「え、それじゃあ『叫び』とはいったい?」


狂郷「この作品でいう『叫び』というのは、作者のムンク自身が夕暮れどきに体験した『自然を貫く叫び』という幻影なんです。それで、この人物は、その『叫び』から自分自身を守るために耳を塞いでいるんですね」


底本「ほう、夕暮れどきか……、『逢魔おうまが時』といった感じでござるな」


津島「底本さん、『逢魔が時』って何ですか?」


底本「お、津島君はご存知でない! 実はな、古くから夕暮れどきってのは死後の世界へ繋がる時刻と考えられているんだ。つまり妖怪や幽霊と遭遇しそうな時刻ってことだ。それで、いつぞやの時代の人々は夕暮れどきのことを『逢魔が時』と呼ぶようになったんでござる」


津島「へえー、初めて知りました」


狂郷「珍しく知的ですね、底本さん」


底本「うるさいぞ狂郷!」


狂郷「まあ、東西問わず、人の感覚は同じなものなんですね」

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