新たなるイルミナティ
政府の監獄、真夜中にて……。
平賀「ねえねえ、芸次君はどうして投獄されてしまったんじゃ?」と平賀は芸次に問いかける。
芸次「……」しかし芸次は寝ていた。
平賀「ねえねえ」
芸次「……」まだ寝ている。
平賀「ねーえー!」
芸次「やかましい! 夜ぐらい静かに寝かせろ!」芸次はキレた。
平賀「いやあ、だってさあ……、芸次君が投獄された理由が気になるんだもん。それで夜も眠れないからさあ」
芸次「知るか……」そう言って寝る姿勢に戻ろうとする。
平賀「なあ、少しだけでもいいから教えてくれないか? 教えてくれたらもううるさくしないからさあ」
芸次「本当か?」芸次は平賀の交渉に食いついてきた。
平賀「ああ本当じゃ。約束する」
芸次「分かった。少しだけでもいいんだな?」体を平賀の方に向ける。
平賀「そうじゃ……」
芸次「……これは三年前の話だが――」
*
俺はこの牢獄へ入れられる前までは、政府の秘密結社「イルミナティ」の一員だった。
俺の任務は封印された悪魔・邪神が復活しないようにそれらを監視することだった。
しかしある日、俺が任務を遂行している最中に、突然悪魔・邪神が解放させられた。
悪魔・邪神が封印の内側からそれを破ったということはありえない。だから何者かが封印を解いて復活させたということになるのだが……。
その疑いの目は俺に向けられた。なぜならその場にいた監視員は俺以外全員死亡してしまったからだ。
おまけに俺は悪魔・邪神が復活する際に受けた強大な波動によって、蜘蛛を操る能力も得てしまった。
どうやらその能力が俺が実行犯という疑いを強めてしまったらしい。
*
芸次「そして俺はこの狭い牢獄に入れられてしまったというわけだ」
平賀「待て、『イルミナティ』じゃと? 確か今の時代『イルミナティ』は解散していると聞いたが……。それに、『イルミナティ』は政府の秘密結社ではないはずじゃ……!」
芸次「その通り。俺の所属していた『イルミナティ』は一般人の知る『イルミナティ』とは別だ。まあ、悪魔崇拝者というのは同じだがな」
平賀「じゃが、なぜ悪魔・邪神を封印していたんじゃ? 悪魔崇拝者なら監視ではなく、復活させようとするもんじゃないのか?」
芸次「そこが誤解されやすいところだ。実際、俺の所属する『イルミナティ』は、悪魔崇拝者であり、それと同時に神を崇拝している」
平賀「?」
芸次「じじい、キリスト教において最も不吉な数字が何か知っているか?」
平賀「確か……『6』じゃよな」
芸次「そう、『2』でも『3』でも割り切れる不完全な数字、それが悪魔の数字の『6』だ。だが、それに『1』を加えればどうなる?」
平賀「『6』に『1』を足すと……?」平賀の頭はおかしくなってきた。
芸次「そう、どんな数字にも割り切れられない『7』だ。これは神の数字でもある」
平賀「ほう……」意識が朦朧としてくる。
芸次「つまりな、俺らの本当の役目ってのは、悪魔・邪神を封印して、完全体――神になるまで監視することだったんだ」
平賀「なるほど……」うとうと。
芸次「……これで満足か?」
平賀「Zz……」平賀は寝てしまった。
芸次「……ちっ」芸次も寝ることにした。